ハワイ諸島には日本人が運営するガイド会社やガイドがいます。なかには優秀な方もいらっしゃって、お会いするたびにいろいろ教えられます。そのなかでも自然分野に関してもっとも総合的な知識を持っていると言えるのは、ハワイ島ヒロ在住のネイチャーガイドである長谷川久美子さんです。
長谷川さんは、ハワイ島でネイチャーガイドをされている日本人女性ですが、彼女のすばらしいところは、既存の知識に満足することなく、つねに学ぶ姿勢を欠かさないことです。お会いするたびに新しい知識を取得し、それをお客さんに還元しているのです。彼女が来日したおり、ハワイの自然に取りつかれたきっかけなどをお伺いしました。
近藤純夫(以下、「近」):このたびは打合せや講演活動で忙しいなか、アロハカワラ版のためにお時間を割いてくださってありがとうございます。本格的なネイチャーツアー・ガイドとして知られる長谷川さんからいろいろな体験や考え方をお聞きできるのを楽しみにしていました。
長谷川久美子(以下、「長」):こちらこそよろしくお願いいたします。
近:いまではハワイの自然の生き字引とも言われる長谷川さんですが、ハワイに住むまではどちらにいらっしゃったんですか?
長:高校卒業後にハワイへ渡り、ホノルルにあるカレッジで1年半勉強しました。1983年のことです。その後日本に戻りましたが、翌年にはハワイに戻りました。そこで縁があって結婚し、ニューハンプシャー州に移りました。そこで長女が生まれたのですが、その2年後には再びヒロに戻りました。
近:ずっとハワイではなかったのですね。ヒロに戻られてからは?
長:最初は生活のために7年ほど事務職についていました。その後、1999年に再就職した会社がハイキングツアーをやっていて、仕事を通じて自然に触れるうちに、自然の魅力に目覚めていきました。
近:どんなところが魅力だったのですか?
長:歩いているといろいろなものが目に入ってきますよね。花や鳥を見て、これはいったいなんだろうと、気になって仕方がなかったんです。そのたびに、家で調べるのですが、自分に知識がつくことにワクワクとした感じがあることに気づきました。出会いのひとつひとつに感動や喜びがあったんです。そのうち、この仕事は自分に向いているんじゃないかなと思いはじめました。
近:何度も同じ場所をガイドしていると飽きることはありませんか?
長:それはありませんね。最初の頃の感動はいまも続いています。同じ場所に見えても必ず違うものがある。時間帯が異なったり、天候や季節、風、その年の状況などが異なりますし、何年も経ってから初めて気づくこともあります。いつも新鮮な感動があるので、決して飽きることはありません。
近:ハイキングを主催する会社には長くいらしたのですか?
長:この会社で仕事をしていた3年間に、もし自分が会社を立ち上げるのならこんなことがしたいと思っていたりしました。だから2001年にニューヨークテロがあってお客さんが激減したとき、会社を辞めて自立することにしたんです。わずかなコネはありましたが、資金はほとんどなかったのでとても大変でした。でも夢を捨てずにがんばりました。
近:頑張り続けることができたのは、自然への飽くなき好奇心があったからですか?
長:そうですね。私は、「量よりも質」を大事にしたい。お金というのは後からついてくるもの、という考えなんです。何しろ仕事は趣味の延長で、趣味も仕事。(笑)自分の個性を活かすことができないのなら、やっても仕方がないとさえ思っています。仕事に妥協はしたくないし、筋は通したい。それでダメなら他の仕事をすると思います。
近:ちょっと脱線しますが、もし他の仕事を自由に選べと言われたら何をしていると思いますか?
長:他の仕事ですか? そうですね。もし今の仕事をやっていなければ国立公園で働くとか、自然保護活動に従事するとか、何かの研究に没頭するというのに憧れます。それから、旅をしていろいろなものを見てみたいとも思います。
近:興味の対象がぼくも似ているので、その他にやってみたいということも似ているな。(笑)ところで、ガイドを続けていて、課題のようなものは感じますか?
長:エコツアーっていったいなんだろ? ネイチャーツアーってなんだろうって、ずっと考えています。自分がいまやっていることがベストだと思うから、たとえネイチャーツアーであっても、相容れないところがあるなら、やりたくないな、とかね。(笑)
近:良い意味で頑固なのかな?
長:私は、根はのんびり屋なんですが、何かに夢中になると他が見えなくなることがあるので、そんな風に見えるのかな?(笑)
近:それは揺らぎのない気持ち、信念のようなものがあるせいかもしれませんね。
長:これまで夢中でやってきました。やりがいのある仕事だと思っているし、やればやるほどその効果が見えてくる。それに、関係する人とのつながりは財産となって自分に残りますし、お客さんとの出会いも貴重です。信念を持ってやっていると、目に見えないつながりがあるというのか、そのようなことに興味を抱くお客さんがいらしてくれるんです。
近:自然に対する愛情が途方もないですね。(笑)
長:ときどき「お母さんは木と話をしている。少しおかしい」と子どもたちにからかわれるんですよ。(笑)
近:自然のどんなところに、とくに興味を惹かれますか?
長:壮大な自然景観も好きですが、人間って大宇宙のなかではものすごくちっぽけですよね。だからそれほど目立たないものにも目を向けたいという気持ちが強いかな? 小さな花を観察するときにルーペを使うことがあるんですが、レンズに映るミクロの世界に予想もしない美しい世界が広がっているのを発見することがあります。こんなときの喜びは格別です。
近:ニイハウ島とカウアイ島に広大な地所を持つロビンソンさんは、絶滅の危機に瀕している植物を、だれも知らない場所で育てています。でも、彼が死んでしまうとそれらはどうなるのか心配にもなります。自然の魅力や大切さはどのように受け継がれていくべきだと思いますか?
長:わたしがどれほど一所懸命やっても、私の知識や命は限られていますよね。でも、私の使命を受け継ぐ人はいると信じています。まったく同じ道ではないけれど、わたしのツアーから何かを感じて、自分なりの道を歩み始める人は必ずいると思います。
近:今後、日本のエコツアー分野はさらに拡大すると予測されていますが、長谷川さんには新しい試みのようなものはあるのですか?
長:そうですね。少しメタモルフォーゼしないと(変わらないと)、と思っています。信念は通すけれど、少しだけ変身ということろかな?(笑)
近:具体的にはどんな構想を描いているのでしょう?
長:これからのキーワードのひとつとしてロハスを取り入れていこうと思っています。たとえばわたしのツアーの最中にヨガを体験していただいたり、マクロビオティックの料理を提供するという体験をしていただくというものです。私のツアーとコラボレーションすることで、さまざまな視点からハワイを知ってもらえると期待しています。
近:その計画はいつ頃から?
長:2013年からスタートさせる予定です。
近:自然に対する愛情と覚悟のようなものをお聞かせくださってありがとうございました。ハワイ島の魅力が読者のみなさんにも伝わったと思います。最後にアロハカワラ版の読者に、ハワイ島を代表してメッセージをいただけますか?
長:ダイナミックな自然のなかで生きるハワイ島の動植物たちのすばらしさをぜひ体験してください。いつかハワイ島でお会いしましょう!
インタビューを終えて、改めて思ったのは、彼女のバイタリティーです。風邪ひとつひくことなく、いつも全力投球。決して他人の批判はせず、自分の世界をより深く広くすることに集中する人だということ。長谷川さんはいまも宝島に迷い込んだ探検家のように、目を輝かせながら島の自然と交わっています。そんな彼女のツアーは参加者にとってもかけがえのないものになると思えました。
長谷川久美子さんが代表を務める「Hawaii nature Explorers」のメインサイトへの訪問と、お問い合せは、下記のURLからどうぞ。
> http://www.hawaii4u2c.com/top.html
> http://www.hawaii4u2c.com/inquiry/index.html
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