ハワイのベスト・ドライブルートは? と、尋ねられたら、迷わずこの名前をあげてしまうのが、ハマクア・コースト。美しい海岸線といくつもの峡谷、密林の中に見え隠れする多くの滝、サトウキビ畑を抜ける涼やかな風、思い出すと溜息が出てしまうほど、ハマクア・コーストは魅力のあるドライブ・ルートだと思います。ヒロから北へ伸びる海岸線がハマクア・コーストです。この海岸線に沿って、ハイウェイ(19号線)が通っています。ワイメアから東へ車を走らせ、緑の木々が囲む切通しを抜けると、次第に海の雰囲気が漂ってきました。いよいよハマクア・コーストをドライブです!
ワイピオ渓谷へと向かう240号線と、ヒロ〜コナ間の幹線道路・19号線の交差点に、ホノカアの町はあります。19号線沿いには、揚げたてのマラサダ(ポルトガル風の揚げパン)で有名なテックス・ドライブインがあり、ついつい「ちょっと一息ね」と、寄り道をしてしまいます。もう少し寄り道をして、ホノカアのメイン・ストリートまで行ってみましょう。ホノカアを含めてハマクア・コーストは、サトウキビ・プランテーションで栄えた土地です。プランテーションで働いていた日系人も多く、その名残が道沿いの町々に今でも見られます。ホノカアのアンティーク・ショップでは漢字の書かれた看板や、着物なども売っていました。ホノカアのメイン・ストリートは、ちょっとお洒落なギフト・ショップや、地元の人々が憩う小さなレストランもあります。のんびりした空気に誘われて、レストランの一軒で昼食にしました。ふと気がつくと、隣のテーブルの足元には、小さな籠の中で赤ちゃんがすやすや眠っていました。
ホノカアから20分ほどで、ラウパホエホエを通ります。ラウパホエホエは、気をつけないと通り過ぎてしまうくらい、小さな集落ですが、ハワイ島の東海岸を走っていた列車についての博物館があります。ハマクア・コーストは、かつて鉄道が敷かれ、サトウキビの輸送などに活躍していたそう。多くの峡谷が連なるハマクア・コーストの鉄道建設は困難を極めたようで、建設した鉄道会社は破産、その後の1946年の大津波によって鉄道は破壊され、ハイウェーによる輸送に切り替えられたそうです。19号線から、道を反れてラウパホエホエ半島に下りてみました。小さな公園になっている岬から、ハマクア・コーストの切り立った崖を見渡すことができます。幾つもの滝が白い筋になって、崖を飾っています。鉄道を破壊した大津波は、この半島にあった小学校も飲み込んでしまったそうです。
ハマクア・コーストは、海岸線の鮮やかな青い海の景色も美しいのですが、密林の緑も大変美しい道です。緑あふれるハワイ島の横顔を見るよう。密林にアクセントを付けるように、アフリカン・チューリップが赤い花を咲かせています。もう一つのアクセントは、たくさんの滝。19号線から一瞬見えるウマウマ滝を、ワールド・ボタニカル・ガーデンへ見に行きました。ガーデンの中の展望台から、階段状のウマウマ滝を、じっくり見ることができます。このガーデンの他、ハマクア・コーストは、オノメアにハワイトロピカル・ボタニカル・ガーデンもあり、熱帯植物が好きな私は寄り道ばかりしています。
またまた横道に反れて、コレコレ・ビーチ・パークに下りてみました。渓谷に掛かる橋は、なにげなく車で通りすぎてしまいますが、このビーチ・パークから大きな鉄橋を見上げると、19号線の元となった鉄道を敷いた会社が破産してしまったのもよく分かります。コレコレ・ビーチ・パークに流れる川は、上流にあるアカカの滝から流れてきたものです。19号線から西部劇のセットのようなホノムの町へと寄り道。ここから5分ほどで、有名なアカカの滝に到着です。アカカの滝の展望台は、短いハイキング・コースの中にあり、熱帯雨林の中を散歩しながら、滝見物ができます。雄大なアカカの滝の眺めも素晴らしいのですが、私はアカカの滝へ到る、サトウキビ畑を通る道が好きです。ちょっと車を停めて、遠くに見える海と、風に揺れるサトウキビを見ながら、ぼんやりするのもハマクア・コーストをドライブする楽しみの一つです。
ヒロ近くのオノメアの街は、かつて日系移民が多く住み、やはり津波によって大きな打撃を受けた所です。ここで、19号線を離れて、海沿いのシーニック・ルートへ。緩く蛇行する細い道は、海を見渡す草原や、ワンレーン・ブリッジを通り、木々が作る緑のトンネルを抜けて行きます。カー・ステレオを切って、窓も開けて、景色を楽しみながら、ゆっくりとドライブ。おいしいスムージーを飲める店があるのも、シーニック・ルートを選んでしまう理由の一つです。もうすぐヒロだけど、やっぱり「ちょっと一息」してしまいました。
シーニック・ルートから19号線に合流すると、ヒロはもうすぐです。正面に、ヒロ湾が見えてきました。ハマクア・コーストをドライブしている間にも、寄り道したい場所をたくさん見つけてしまいました。ああ、またハマクア・コーストをドライブしないと。 |