ハワイ島でトレッキングと言うと、冷え固まった溶岩の上を歩くイメージがあります。黒く固まった溶岩の上を歩いて、「ドロドロの溶岩を見る!」「火口を覗きながらのトレッキング!」そんな「ハワイ島ならでは!」のトレッキングも楽しいのですが、もう少し気軽にトレッキングをしたいな。そんな時は、森の中を歩くハイキング・コースへ行ってみます。森を歩くトレイルはたくさんありますが、ボルケーノ国立公園近くのキプカ・プアウル・トレイルは、ハワイの森らしい雰囲気が楽しめる場所です。
ボルケーノ国立公園でハイキングを楽しまれた方も、すぐ近くにあるキプカ・プアウル・トレイルまでは、なかなか足を伸ばされないようです。マウナ・ロアに登る道、マウナ・ロア・ロードの途中に、このトレイルはあります。さて、マウナ・ロア・ロードの入口近くには、溶岩樹があります。溶岩樹とは、溶岩に囲まれ、燃えてしまった木の跡です。この溶岩樹を見ても分かるように、この辺りはかつて、溶岩が流れた場所。大きな木は少なく、藪が続いています。その中で、大木が鬱蒼とした森を作っているのが、キプカ・プアウルです。「キプカ」というのは、この森のように、周辺を溶岩で囲まれても、燃え残った場所のことを言います。ハワイ島には、そこここに「キプカ」があり、特別な場所として考えられています。「キプカ」は、周辺を溶岩で囲まれているため、外来種の進入を阻み、ハワイ固有種が多く見られる場所としても知られています。
実は、私はキプカ・プアウル・トレイルを2回歩いています。2km足らずのこのトレイルは、それほど起伏もなく、歩きやすいので、ちょっと森を散歩するのに、なかなかいい場所だからです。駐車場に車を停めて、キプカ・プアウルを見ると、この場所だけ森が残っている、ということが改めて分かります。この森をぐるりと取り囲むように、トレイルが作られているのですが、来た道を引き返えさなくてもいい周回路というのは、気軽なハイキングにとてもいい感じ。左回りにトレイルを進むと、緩やかな登り坂になります。日差しは大きな木々に遮られ、空気もひんやりしています。
「この辺りに、コアの木へ行く立て札があったのだけど・・・」初めて、このトレイルを歩いた時、トレイルから少し外れた場所で、コアの巨木を見ました。人間が入れそうなくらいの大きな洞が根元に空いている、とても大きなコアの木でした。しかし、2回目に歩いた時には、どうしてもコアの木への道をみつけることができません。帰国してから、近藤さんに教えて頂いたのですが、あのコアの巨木は、既に倒れてしまったのだそうです。溶岩が流れてきた時も、この「キプカ」とともに生き残ったコアだったのでしょうか、倒れてしまったのは、とても残念です。
コアの巨木は倒れてしまいましたが、コアの木はまだまだたくさんトレイルで見ることができます。コアと言えば、捻じ曲がった幹に特徴がありますが、細長い葉も独特な形。トレイルには、たくさんのコアの葉が落ちていました。道を塞ぐほど大きく育った羊歯や、人の背丈ほどもあるティなど、ハワイ独特の植物が多く見られます。標高が高いせいか、鬱蒼とした森なのに、蚊もいません。森の中は、涼しく快適です。オヒアの大木も数多く見ることができ、植物観察をしながらゆっくり歩いていると、トレッキングというより、森林浴を兼ねたお散歩、という感じがします。
さて、キプカ・プアウルの別名は、バード・パーク。初めて、このトレイルを訪れた時、すぐにたくさんの鳥たちを見ることができるものと、期待していました。しかし、鳥の声は聞こえるけれど、なかなか姿を見ることはできませんでした。それもそのはず、私が「見たい」と思っていたハワイミツスイの多くは、木の高い場所にいることが多いのです。トレイルを歩いていると、はるか高い木の上にいる小さな鳥の影を見上げるばかりですが、鳴き声はよく聞こえます。よく見ると、アパパネの赤い影が、頭上を飛び交っています。すぐ近くまで来る小鳥は、メジロが多いよう。メジロは、ハワイでトレッキングをしていると、かなりよく見かける鳥。日本から移民した人々といっしょに、メジロはハワイに渡ってきたそうです。
藪の中には、カラフルな鳥が動き回っています。「あ、ソウシチョウ!」ソウシチョウは中国から来た鳥です。今では、ハワイで見ることの出来る鳥の多くは、外来種が多いのです。ソウシチョウは、日本にもいるのですが、なかなか見ることがないので、ちょっと夢中で観察してしまいました。このトレイルで一番よく見かけるのは、キジの仲間のミヤマハッカン。トコトコとトレイルを歩いている姿を見かけますが、人間を見ると、ゆっくり藪の中に消えていきます。じっくり散策してみると、バード・パークという名前の通り、たくさんの鳥を見ることができました。
キプカ・プアウル・トレイルは、ゆっくり歩いても一時間ほどのお散歩コース。気持ちのいい、ハワイの森を歩いて見ませんか。
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