ハワイ島の東、ヒロとボルケーノの間に位置するのがプナ地区です。ハワイ島を何度も訪れている方でも、あまり行ったことがない場所かもしれません。ハワイ島を一周するハイウェイから外れている上、あまり有名な観光ポイントもなく、大型の観光バスも見かけたこともありません。平日の朝、ヒロからボルケーノへ向かっていると、プナ地区からたくさんの車がやってくるのを見かけます。プナ地区はヒロのベッドタウンでもあるようです。
プナは、今も昔もハワイ島の火山と密接に結びついた場所です。古くはペレの伝説に語られるように、また1990年に流れ出た溶岩によって消失したカラパナのように、常に火山活動に左右されている地域でもあります。現在でもペレの伝説が生きている場所の一つで、例えば、人気のない道でヒッチハイクをしているおばあさんがいたら、車に乗せてあげなくてはいけないのだそう。何故なら、そのおばあさんは、姿を変えたペレかもしれないからです。
さて、プナ地区の入口、ケアアウの町から130号線へ曲がり、プナへのドライブが始まります。ケアアウからの道は、よく整備されたハイウェイ。でも、とりたてて景色がいい場所というわけでもありません。ハイウェイを外れてパホアに入ると、急に景色は変わり、ひなびた街並みが見えてきます。道沿いに並ぶ家々は、ちょっと西部劇に出てきそうな感じ。初めて、このパホアのメイン・ストリートを通ったとき、「ハワイのどこかの町に、似ているぞ」と、思ったものです。ハワイの小さな町は、島が違っても同じような印象を受ける場所があります。私は「マウイ島のパイアに似ている」と思ったのですが、この2つの町の共通点は「ヒッピー・タウンである(あった)」ということ。パホアを歩いていると、ラブ&ピースな雰囲気がします。
この先をドライブするには、パホアで食べ物や飲み物を補給しておいた方がいいでしょう。以前「シェイブアイスが食べたい、スムージーでもいい」と、喉を乾かしながらドライブした思い出があるのですが、この先は、ほとんど商店のようなものを見つけることができません。パホアを過ぎると、二股に分かれています。海岸線を底辺に、三角形を描くようにプナ地区のハイウェイがのびていますが、まずは東へ向かう、132号線へ。132号線に入ると、道幅がやや細くなり、周囲は鬱蒼とした森に変わります。木々が作る緑のトンネルを抜けるような、この道をドライブするのは、とても気持ちいい。ハワイ島の中でも、好きなドライブ・ルートの一つです。132号線沿いには、溶岩樹公園があるので、ドライブの休憩を兼ねて、散歩をするのもいいかもしれません。溶岩樹公園を過ぎると、周囲は一面のパパイヤ畑に変わります。プナ地区はパパイヤの栽培で有名。パパイヤは果物ではなく野菜なので、「パパイヤの木」と呼ぶのは間違っているのでしょうが、野菜と呼ぶにはあまりに巨大なパパイヤが、林を作っている景色は圧巻です。
海に落ちる溶岩が、水蒸気の雲をあげていることもあります |
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132号線から137号線へと曲がると、対向車とは、スピードを落としてすれ違わないといけないほど、道は更に狭くなってきます。木々が道を取り囲み、緑のトンネルの雰囲気は、ますます高まってきます。木の下を潜り抜けるように、ゆっくりドライブ。137号線は海岸線沿いの道ですが、海抜があまり高くないためか、なかなか海を見ることができません。オヒアが、防風林のように並んでいるのも、ちょっとめずらしい風景です。温泉で有名な、アハラヌイ・ビーチパークにちょっと寄り道。ヤシの林を抜けると、プールのような場所にでます。このプールの中から温泉がわいているのですが、防波堤を超えて海水がプールに入り込んでいるので、淡水のプールというわけではありません。ライフ・ガードもいて、なかなか雰囲気のいい場所ですが、駐車場が狭いため、時には満車になってしまうことと、車上荒らしの噂を聞くのが難点でしょうか。137号線をどんどん南下して行くと、やっと車上からも海が見えてきました。道を囲む木々も、マングローブやハラの木をよく見かけるようになってきました。溶岩の流れが活発な時は、海に流れ込む溶岩があげる、大きな水蒸気の雲を正面に見ることができます。
137号線は、カラパナを飲み込んだ溶岩によって、寸断されています。130号線に戻って帰る途中で、そのカラパナから移築された教会へ寄ってみました。外見は白い小さな教会ですが、内部は極彩色のペインテッド・チャーチ。祭壇の向こう側の壁が、だまし絵になっていて、実際よりも広い感じがします。モロカイでハンセン氏病の患者を助けた、ダミアン神父が描かれたステンドグラスもあります。プナ地区は、のんびりとドライブするのがいい場所。そして、人気のない場所で、ヒッチハイクをしているおばあさんをみかけたら、声をかけた方がいいかもしれないですね。
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