先月の中ごろ、テレビニュースを見ていて、ハワイ島の火山活動が活発化していることを知りました。急いで、ハワイ火山観測所の情報などを見てみると、今まで活発に活動してきたプウ・オオ火口からではなく、やや西側から噴火があったよう。2ヶ月ほど前に、噴火があったらしい場所の近くを歩いたばかりだったので、ちょっとびっくりしました。一時は、ボルケーノ国立公園内でも、有毒ガスの影響などで閉鎖された場所がありましたが、現在はほぼ閉鎖は解除されているようです。しかし、ナパウ・トレイルなど噴火口に近い場所は(この原稿を書いている時点では)依然、入ることができません。夏休みにハワイ島へ行って、ボルケーノを観光しようと考えていらっしゃる方は、今後もハワイ火山観測所などの、現地の情報に注意された方がいいと思います。
やっぱりハワイ島は火山の島なのだな、と改めて感じたニュースでしたが、ボルケーノ国立公園のキラウエア・カルデラの周辺を見る限りでは、活発な火山というより、雄大で静かな印象を強く受けます。溶岩をドロドロ流しているプウ・オオ火口は、この辺りから15kmほども東(ヒロ側)にあるのです。朝早くに見るハレマウマウ火口は、すっかり静かで、穏やかにさえ見えます。ここにはシラオネッタイチョウが住んでいて、注意していると、優雅に火口の縁を飛んでいる姿を見ることができます。晴れた日には、マウナ・ロアも見えますが、やはり活火山とは思えない、静かな山影です。逆に、日が暮れる寸前のハレマウマウ火口は、ちょっと不気味です。夕方遅く、溶岩を見るためにチェーン・オブ・クレーター・ロードを下りようとして、道を誤ってハレマウマウ火口の方へ来てしまったことがあります。既に人影が全くなくなったハレマウマウ火口から、うっすら蒸気が昇っている様子は、なんだか怖かったです。ハレマウマウ火口の方をあまり見ないようにしながら、ひたすら車を走らせました。
さて、ボルケーノ国立公園へ行かれる方は、まずは公園内のビジターセンターで、情報を仕入れるといいと思います。火山は日に日に姿を変えるので、このビジターセンターが、どこよりも最新の情報を持っているからです。今なら、閉鎖されている場所の最新情報も分かるので、大変便利です。ナパウ・トレイルを歩いた時は、ここで許可証を発行してもらいました。許可証の要らないトレイルでも、レンジャーやボランティアのみなさんに、ハイキングの相談にのってもらうことができます。また、ビジター・センターでは、無料のガイドツアーも開催されています。ビジター・センターの前にある掲示板に、ガイドツアーのスケジュールが発表されますので、指定の場所で待っていれば参加することができます。実は私もこのガイドツアーに参加したことがあります。
ガイドツアーの様子。カヒリ・ジンジャーについて説明 |
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私が参加したのは、ボルケーノ・ハウスの周囲を廻るガイドツアー。トレッキングというより、お散歩くらいのツアーなので、参加した人々も赤ちゃん連れのファミリーやビーチサンダル履きの人など、気軽な感じです。なんと水着で来た参加者もいましたが、ビジターセンターのスタッフに「それでは寒いですよ」と言われて、バスタオルを身体に巻きつけていました。ボルケーノ周辺は、いつも涼しいので、長袖・長ズボンくらいの服装がちょうどいいかな。この日のボルケーノは曇り空。長袖のTシャツでは寒いくらいです。
ガイドツアーでは、ただトレイルを歩くだけではなく、植物や動物についての説明を聞く事ができます。「この植物は、ハワイに元からある植物ではありません」と、ガイドさんが指し示したのはカヒリ・ジンジャーです。一見、昔からのハワイのように見えるボルケーノ周辺にも、多くの外来植物が入り込んでいます。外来植物は、繁殖力が強く、ハワイ固有植物を脅かす存在です。カヒリ・ジンジャーは、黄色の美しい花を咲かせ、香りもいいため、観賞用として持ち込まれたものが、繁殖したと言われています。ボルケーノの周辺にも、カヒリ・ジンジャーの群生がいくつも見られます。なかには、根が切り取られ駆除の跡が見えるものもありますが、根からも種からも繁殖するこの植物を完全に駆除することは、かなり難しそうです。この時期、カヒリ・ジンジャーはまだ花を咲かせていないため、ガイドさんは花の写真を示しながら説明してくれました。ツアーの終盤は、小雨が降って寒くなってきました。ボルケーノ・ハウス周辺のトレイルには、スチームが噴出しているところがあります。ツアーの参加者は、スチームに手をかざして、しばし暖をとっています。「あったかくて離れたくなくなっちゃうわね」と笑い合いました。短い間でしたが、みんな楽しそうです。最後はガイドさんに大きな拍手を贈って、解散となりました。
ボルケーノのガイドツアーは、私が参加したようなお散歩コースから、ややハードなハイキングまで何種類かあり、出発時間も数回あります。今なら、最新の溶岩情報も聞けるかもしれませんね。
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