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あけましておめでとうございます。お正月をハワイで過ごされた方も多いのではないでしょうか。さて、日本の寒い冬は、暖かなハワイが舞台の本を読んで過ごすのは如何でしょう。さて、本を読むと、その舞台となった土地へ行きたくなり、本の舞台になった土地へ行くと、もう一度その本が読みたくなるものですね。ハワイが舞台の本を読んで、次のハワイ旅行の計画を立てるのもいいものです。
ホノカア・ボーイ (吉田玲雄 著)
「ホノカア・ボーイ」の舞台は、もちろんホノカアです。ハワイ島の北東、ワイピオへ向かう道の入口にあるホノカアは、メイン・ストリートに何軒かの店が並ぶだけの小さな町。物語の舞台となるホノカア・ピープルズ・シアターも、このメイン・ストリート沿いにあります。20世紀初めに建てられたパステルカラーの建物が並ぶ、ひなびたメイン・ストリートは、端から端まで歩いても5分ほど。著者の吉田玲雄氏のお父さんが、このメイン・ストリートで写真家のニック加藤氏に会うくだりがありますが、実は私もこの道を歩いていて、偶然ニック氏を見かけ、握手してもらったことがあります。ホノカアは、サトウキビ農業が最盛期だった19世紀末から20世紀初頭くらいまでの間に、たくさんの日系人が移民してきた場所です。本にも多くの日系の人々が登場しますが、そもそもホノカア・ピープルズ・シアターも日系のタニモト氏が建てたものでした。「ホノカア・ボーイ」は、吉田氏の体験の基に書かれた本なので、実在する場所がたくさん登場します。例えば、吉田氏がよく朝ごはんを食べに行ったシンプリー・ナチュラルや、揃いのTシャツでボウリングをしたヒロ・レーンなどなど。本に登場する場所には、もうなくなってしまった場所もありますが、ホノカアの町は「ホノカア・ボーイ」で感じる雰囲気そのままに、在り続けるような気がします。
ワイルド・ミートとブリー・バーガー (ロイス・アン・ヤマナカ 著)
「ワイルド・ミートとブリー・バーガー」は、1970年代のハワイ島ヒロに住む、日系3世のローティーンの女の子、ラヴィが主人公の小説です。ストーリーはフィクションですが、著者のロイス・アン・ヤマナカもハワイ島育ちの日系3世、当時のハワイ島の様子が生き生きと書かれています。日本の流行が日系の女の子の間でも流行っていたことや、主人公のお父さんが育ったプランテーションの話など、誰かからハワイの昔話を聞いているような気分になります。当時とはだいぶ変わっているのでしょうが、物語の舞台になっているヒロは、今も昔のままではないかと思わせる町です。ハロウィン・コンテストが開催されるヒロ・ショッピング・センターは現在もあり、コンテストに商品を提供するランキー・ペストリーは今も地元で人気のパン屋さんです。ラヴィがコンチキ号の映画をみたパレス・シアターは、今でもヒロで憩いの映画館として活躍しています。動物園はヒロ湾沿いのオネカハカ・ビーチからパナエヴァに移動してしまいましたが、のんびりした雰囲気は当時も同じだったでしょう。ヒロはどこかなつかしい気持ちになる町ですが、「ワイルド・ミートとブリー・バーガー」も、なぜかなつかしく、そして切なくなる物語です。ヒロの市街地には、プランテーション・ハウスと呼ばれる高床の家がたくさんあります。その多くは平屋で、ティやジンジャーが家の周囲に植えられています。ラヴィの住む家もこんな感じかなと、ヒロを散歩しながら思うのでした。
楽園考古学 (篠遠喜彦・荒俣宏 著)
昨年はハワイからホクレア号が来航したことで、様々なイベントがありました。そのイベントの一つで講演されたビショップ博物館の篠遠喜彦博士に、幸運にも私は握手してもらうことができました。篠遠博士は「南洋のインディ・ジョーンズ」との異名を持つ太平洋考古学の第一人者。「楽園考古学」は、その篠遠博士に荒俣氏がインタビューする形式で、大変分かりやすく書かれたポリネシア考古学の本です。さて博士に「先生が発掘されたのはサウス・ポイントのどの辺りでしょう」と伺うと、「みんなが釣りをしているところがあるでしょ、あの右のほうだよ」と教えて頂きました。博士が初めてポリネシアで発掘を行ったのが、ハワイ島の最南端、サウス・ポイントなのです。博士はここでたくさんの釣り針を発掘したのを始めに、ハワイのルーツを辿っていかれました。博士が初めて発掘を行ったのは1954年、本の中でも「何もなく淋しいところでホームシックにかかった」と仰っていますが、現在のサウス・ポイントも何もないところです。博士が釣り針を発掘されたように、今でも絶好の釣り場なので多くの人が釣りをしていますが、何週間もこの場所にいるのは、なかなか大変なことです。一番近隣の町、ナアレフには博士が行かれたナアレフ・シアターが今も残っていますが、もう映画の上映はしていません。サウス・ポイントはポリネシアから渡って来た人々が、初めに見る土地です。ポリネシア人が渡ってきた海を眺め、古代ハワイを想像してみるのでした。
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