ハワイでハイキングをしながら、植物を見るのは楽しいものです。何度か見かけるうちに、自然に植物の名前やどこに咲いているかなどの特徴も分かってきます。名前が分かると、植物に親しみがわいてきます。それは、知らない人の名前を知り、挨拶をするようになる事と似ています。ハワイで山にハイキングをするのは大変、という方でも、海岸を散歩しながら、植物を見つけることができます。足元の植物に挨拶をするように、海岸を散歩するのも、ハワイののんびりとした過ごし方の一つかもしれません。今回は、ハワイ島の海岸で見かける植物を紹介します。
荒涼としたグリーンサンド・ビーチへの道にも、イリマが咲いていました |
|
イリマ
ハワイの島々には、それぞれの島ごとにレイの花が決まっていて、イリマはオアフ島のレイの花になっています。またイリマのレイはロイヤル・レイとも呼ばれ、ハワイの王族に愛されていました。イリマは、海岸沿いでよく見かける植物で、黄色いかわいい花を咲かせます。地面に広がって生えるものと、人の背丈ほどの潅木になるものがありますが、私がよくみかけるのは、地面に広がって生えるイリマです。このイリマは平らに広がることからイリマ・パパとも呼ばれます。パパはハワイ語で「平らな」という意味です。イリマはハイビスカスと同じアオイ科の花で、花の寿命が短い上に、一つの花が3cmほどという小さな花なので、イリマのレイを作るのは大変です。一連のイリマのレイを作るにも、700もの花を摘まなくてはならないそうです。
海の近くで見かけることの多いイリマですが、ハワイ島でもやはり海岸でよく見かけます。前回、お話したラパカヒ州立公園でも、イリマが可憐な花を咲かせていました。ハワイ島の南端にあるグリーンサンド・ビーチへハイキングをしたときには、イリマの花が黄色い絨毯のように広がっており、単調なトレイルの鮮やかなアクセントになっていました。
ノニ
近年、健康飲料としてノニ・ジュースは人気なようです。ハワイ島のプナ地区にはノニ農園もあります。でもノニ・ジュースを飲んだことのある方は、お分かりかと思いますが、かなり飲み辛いものです(そのためか、最近はサプリメントもあるようです)。「こんな味のノニっていったいどんな植物だ」と思ったら、ちょっと海岸で探してみてください。ノニは海の近くでよく見る植物です。あまりにあちこちで見かけるので、どこにあったか思い出せないほどです。でも、熟したノニを踏んでしまったら、しばらくノニを忘れられません。それほどに、ノニは臭いのです。
ノニは腰の高さほどの低木から、数メートルの高さのものまで見かけます。その実は、大人の拳より一回り小さめで、熟するに従って緑から薄い黄色になります。この黄色く、ぶよぶよになった頃が、今まさに踏み頃・・・ではなく、ジュースにするのによい頃のようです。ノニは昔からハワイアンの間では万病に利く薬として、用いられてきました。内科的な薬としてだけではなく、怪我などにもノニを薬として使ったようです。また、ノニはしばらく海水に浸かっていても、発芽できる強い生命力を持っています。ハワイの海岸を歩くときは、ノニが落ちていないか探してみてください、そして誤って踏まないよう気をつけてください。
ナウパカ
ノニと同じく、どこで見たか思い出せないくらい、ハワイの海岸にある植物と言えば、ナウパカでしょう。ナウパカは、和名をクサトベラといい、日本でも沖縄などで見ることができます。ハワイでは、浜辺に自生しているほか、ホテルなどで植栽として使われていることも多いので、探せばすぐに見つけられると思います。海に育つナウパカだけでなく、山に育つナウパカもありますが、山に生えるナウパカは、なかなか見つけ難く、また数も少ないようです。
ナウパカは、半分にちぎられたような花を付けるためか、たくさんの悲恋の伝説があります。例えば・・・火の女神ペレは、ある若者を見初めましたが、どうしても振り向かせることができませんでした。愛は憎しみに変り、ペレは若者を山へ溶岩で追い立てました。しかし、若者を気の毒に思った他の神様が、彼を山に咲くナウパカに変えました。若者を見失ったペレは、今度は若者の恋人を海に追い立てました。彼女も神様によって、海に咲くナウパカに変りました。山と海に分かれて咲くことになったナウパカの花は、引き裂かれたように半分の形をしています。ペレのお膝元、ハワイ島キラウエアの南にあるプナルウ・ブラック・サンド・ビーチには、あたかも伝説で変えられたかのような、ナウパカの群生を見ることができます。黒い砂の上に咲く白いナウパカは、なんだか健気に見えました。
|