この原稿がアロハカワラ版に掲載される頃には、2010年のメリー・モナーク・フェスティバルは終了し、今年のミス・アロハ・フラも決定していることでしょう。毎年、イースター・サンデーから始まるメリー・モナーク・フェスティバルは、ハワイ島ヒロで開催され、最後の3日間に行われるフラ・コンペティションが有名です。今年も、日本からたくさんの方が観戦に行かれたことでしょう。フェスティバルの名前にもなっている「メリー・モナーク(陽気な王様)」とは、ハワイの王様、カラカウア王の愛称。カラカウア王は、キリスト教の布教とともに禁止されていた、フラやサーフィンを復活させたことでも知られています。今回は、ハワイ島にまつわるハワイアン・ソングの舞台を巡ってみたいと思います。
KA ULUWEHI O KE KAI (作詞 Edith Kanaka‘ole)
メリー・モナーク・フェスティバルのフラ・コンペティションが行われるのは、ヒロ市街にあるエディス・カナカオレ・スタジアムです。スタジアム名に冠されたエディス・カナカオレは、ハワイ島で生まれ、ハワイ文化の復興と継承に貢献した有名なクム・フラ(フラの師)。そのエディス・カナカオレが作った「Ka Uluwehi O Ke Kai」は、アップテンポな明るい曲調で、舞台などでもよく演奏される曲です。この曲は、たくさん海草を集めて、みんなで食べましょう、という内容の詞ですが、メリー・モナークが開催される、ヒロの海を歌ったものかもしれませんね。ヒロは弓なりに曲がった湾に面した街です。ヒロの海岸には、釣り人がたくさんいます。休日の夕方など、ビーチパークに集まって、BBQやパーティを開いている地元の人たちも、よく見かけます。歌のようにお魚(歌では海草ですが)を釣って、みんなで食べているのかも。
さて、ハワイで海草を食べたことがありますか? 海草を使ったハワイの料理というと、まず思い浮かぶのがポキ(ポケとも言います)です。ポキは、魚やタコをマリネした料理、ハワイでは、魚屋さんやスーパー・マーケットのデリでも売られています。ポキを食べ歩くのも、ハワイでの楽しみなのですが、お店によってだいぶ味が違うな、と思っていました。作り方にもよるのでしょうが、材料の海草が違ったのかもしれません。歌の中でも、3種類もの海草が登場します。海草の食べ比べ、といったところでしょうか。ところで、ハワイアン・ソングの中には隠れたストーリーを持つものがあります。「Ka Uluwehi O Ke Kai」も、深読みするとなかなかセクシーな内容です。
KAULANA KAWAIHAE (作詞 Kailihune Alama Naai)
「Kaulana Kawaihae」は、カヴァイハエの沖にあった小さな島を歌っています。その島では、王族のためにイリマを栽培していたそうです。ハワイの王族のロイヤル・カラーは、赤と黄色。鮮やかな黄色いイリマの花は、まさに王様のためのレイを作るのにぴったりです。ところが、その小さな島は、津波によって岩礁の中に沈んでしまったそうです。その時、海に散ったイリマの花が、まるで大きなレイのようだったという美しい伝説も残っています。 そういうわけで、今はイリマの咲く美しい島は、カヴァイハエにはありません。しかし歌にもあるように、カヴァイハエからは今も、マウナ・ケアの雄大な姿と、青く美しい海を見ることができます。
現在のカヴァイハエは、ハワイ島の北西にある港町です。以前にもご紹介しましたが、カヴァイハエ港はマカリイ号の寄港地になっています。かつてポリネシアの人々が羅針盤も持たずに海を渡ったように、双胴カヌーを建造して航海するプロジェクトがあります。日本にも寄航したカヌー、ホクレア号のことをご存知の方も多いでしょう。ハワイ島で建造されたカヌーが、マカリイ号です。黄色いイリマの花が咲く島の代わりに、黄色い船体のマカリイ号が、ハワイの新しい伝説を作っているのですね。
POLIAHU (作詞 Frank Kawaikapuokalani Hewett)
ポリアフは、雪の女神。ハワイで雪の女神というのは、不思議かもしれませんが、ポリアフが住むのは、スキーもできるほどの雪が降る、ハワイ島のマウナ・ケアです。ハワイ島の女神というと、火の女神ペレが有名ですね。火の女神と雪の女神という、対照的な2人は、その性格も正反対です。ペレが激しい気性であるのに対し、ポリアフは冷静。カウアイの王子と別れたときも、ペレのように怒り狂ったりはしなかったようです。でもこの歌では、冷静なポリアフに秘められた激しい恋心が歌われています。
晩秋、ヒロに滞在したときのことです。秋の終わりのハワイは、お天気が崩れがち。夜半から降りだした雨は、次第に強くなっていきます。その雨も、朝にはあがり、青空になりました。朝早く、ココナッツ・アイランドの辺りを散歩していると、近くを歩いていた男性が「見て!」と声をかけてくれました。「昨日の嵐で、マウナ・ケアに初雪が降ったよ!」 そこには、昨日までとはうってかわって、真っ白になったマウナ・ケアの姿が。ポリアフは、たった一晩で、マウナ・ケアを雪山に変えてしまったのでした。
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