トレイルのチェック・ステーションと、トレイルに出てきた牛 |
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ハワイ島で「トレッキングをしよう!」と思うと、どうしても島の東側に向かいがちになります。ハワイ島のボルケーノ周辺には、お散歩感覚で気軽に歩くことができるトレイルから、パーミット(入山許可証)が必要な本格派トレイルまで、たくさんのトレイルがあるからです。それに比べると、ハワイ島の西側、コナやワイコロア周辺はトレイルが少なめ。でも、ちょっと足を伸ばすと、こんなトレイルもあります。
今回ご紹介するトレイルは、ハワイ島にたくさんある噴石丘の一つ「プウ・ワアワア」を登るものです。噴石丘とは火山が噴火した際にできた小山のこと、ハワイ語では「プウ」と呼ばれています。以前「サドル・ロードを走ろう!」でもご紹介しましたが、ハワイ島ではマウナ・ケアやマウナ・ロアの周囲、特にサドル・ロードの周辺で、噴石丘をたくさん見かけます。プウ・ワアワアがあるのも、サドル・ロードの西側入り口から190号線を南に20キロほど行った所。190号線沿いには、たくさん噴石丘がありますが、どれが目指すプウ・ワアワアかな?
かつては牧場だったプウ・ワアワアとその周辺ですが、現在は州によって管理されているようです。トレイルもボランティアによって整備され、大変歩きやすくなっています。無人のチェック・ステーションには、トレイルの地図も用意されていました。でも、チェック・ステーションにあった名簿を見ると、一日一組ほどしか署名されていません。このトレイルを訪れる人は少ないようです。私がハイキングをしたときも、隣接する牧場の人に会っただけで、ハイカーには会いませんでした。周囲には商店などもないので、水や食べ物は事前に用意してから来るほうがいいと思います。
トレイルの入り口からは、ずっと緩い坂道です。道に沿ってオヒアなどの林が続いていますが、ちょっと単調。でも時折、牛や羊などが林の中から出てくるので、びっくりします。驚いているのは、牛や羊も同じようで、慌てて林の中に引き返して行きました。しばらく歩いていると、猛禽類の声が聞こえました。声の主をたどると、大きなオヒアの梢にイオが! イオは、ハワイ島にしかいない固有種の鷹です。イオもこちらに気づいたようで、首を傾けて私を見ています。イオやプエオ(ハワイ固有種のフクロウ)は、牧場の周辺でよくみかけるのですが、こんなにじっくりイオを見たのは初めてでした。
イオに後ろ髪をひかれながらも、ハイキングを続けます。だらだら坂道を2kmほど登ってきましたが、やっとプウ・ワアワアのすぐ近くまでやってきました。遠くからは「簡単に登れそう」と思えたプウ・ワアワアですが、近くから見るとかなり大きい山に見えます。トレイルは、山に沿ってぐるりと半周するように続きますが、次第に道の傾斜がきつくなってきました。振り返ると、ワイコロアの海が見えます。ボグ(ハワイ島キラウエアの火山から流れる煙で、霞んだようになること)のためか、あまり視界がよくありませんが、きっとプウ・ワアワアの上からはキレイなパノラマが見えることでしょう、がんばって登るぞ!
と、思う気持ちを打ち砕くかのような、とてもとても急な坂道が現れました。プウ・ワアワアは、2つの噴石丘が合わさっているのですが、その継ぎ目を登っていくようです。今までダラダラ登っていたのに、一転して一気にプウ・ワアワアを登らなくてはいけません。坂道があまりに急なので、気を抜くとずるずると滑り落ちてしまいそう。トレイルの柵に沿って、軽々とサフランフィンチの群れが飛び回っているのが羨ましいくらいです。ああ、羽があれば簡単に山頂に行けるのに。
プウ・ワアワアを登っているうちに、いつの間にか霧が降りてきていたようです。やっと山頂に着いた頃には、深い霧に囲まれていました。残念ながら山頂からの絶景は臨めません。でも、霧に囲まれたプウ・ワアワアも神秘的でなかなかいい雰囲気です。霧の中に浮かぶ、深い草原や枯れた木、わたしたちを迷惑そうに見ているブラック・フェースの羊たち、とてもハワイとは思えません。今にも、どこからか首のない騎士でも現れそう。静かな山頂で、ちょっとドキドキしながらランチを取って、プウ・ワアワアを下山しました。晴れた日に登った友人の話では、やはり山頂から海まで絶景が見渡せたそうです。このコースは、ゆっくり歩くと4,5時間かかります。トレイル入り口にある門は、夕方には施錠されてしまうので、注意してください。
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