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ハワイ島のボルケーノ国立公園内にはたくさんのトレイルがあります。ハワイ島日和の第一回目にご紹介した、キラウエア・イキ・トレイルのように人気のあるトレイルもありますが、あまり人に知られていないトレイルもあります。そんなトレイルでも、歩いてみると面白いですよ。
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ボルケーノ国立公園内は、レストランがあまりないので、お弁当を持っていくことがあります。そんなときに、お昼を食べる場所に、アイナホウ・ランチは、なかなかいいところです。アイナホウ・ランチへは、チェーン・オブ・クレーター・ロードを少し下ったところから、歩いて行きます。往復4kmくらいなので、のんびりハイキングにもぴったり。地図で見ると、この辺りの東側も西側も溶岩に囲まれています。溶岩に囲まれても燃えずに残った森を、キプカといいますが、ここもキプカの一つでしょう。トレイルはオヒアの森の中を緩やかに下っています。オヒアの大木に囲まれたトレイルは、ひんやりしていい気持ち、標高が高いせいか、蚊もいないようです。
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トレイルは、舗装してある場所がほとんどで、歩きやすいのですが、ちょっと単調かも。そんなときは、トレイル沿いの植物を観察しましょう。オジギソウやジャマイカ・バーベインなどの外来種もありますが、オヒアの幼木リコ・レフアや、赤い実をつけたプキアヴェ、貴重な香木のイリアヒ、豆のような実のママネなど、ハワイの固有植物も多くみつけました。姿は見えませんが、アパパネの声も聞こえます。アパパネは、オヒアの枝の高いところにいるようです。ハワイの森は、独特の匂いもするので、五感が森の刺激を受け、歩いているだけでリラックスします。
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半時間ほど歩き、モミの木の林を抜けると、大きなお屋敷が見えてきました。アイナホウ・ランチの母屋です。アイナホウ・ランチは、20世紀半ばにシップマン家によって造成されました。現在は、土地も建物もボルケーノ国立公園に寄贈されています。広いバルコニーを持つ母屋の中には入れませんが、建物は今でも使われているようです。ボランティアの方々が、建物や広い庭の維持管理をされているそうなので、この母屋に泊られることもあるのでしょうか。母屋の裏手には、お弁当を広げるのにぴったりの、ピクニック・テーブルもあります。車寄せが作られた前庭は、ハーブや花々が植えられていますが、築山のような小山もあり、ちょっと日本庭園のような感じもします。
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何度かアイナホウ・ランチを訪れているのですが、晩秋に初めて来たときの印象が一番強く残っています。それは、入り口付近に、大きな柿の木があるからかもしれません。常夏のハワイ、などと言われるように、ハワイは一年中夏のように思われがちですが、季節によって咲く花も変わります。でも、日本の様な紅葉は見ないなあ、と思っていたのですが、鮮やかに色づいた柿の葉を見て驚きました。たわわに実った柿には、メジロが来ています。まるでここだけ日本のようです。当たり前のようですが、ハワイでも柿は秋に実をつけるのですね。
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柿だけではなく、アイナホウ・ランチには、実を付ける木がたくさん植えられています。レモンやザボン、桃やブドウ、洋ナシやオリーブなど、なんだか果実園のようです。他にも、ヒイラギやツバキ、ハワイ固有の植物もたくさん植えられています。裏庭にある大木は、珍しいコルクの木。東洋も西洋もハワイのものも集められた庭園は、ハワイの縮図のようです。もともとの生育地が違う植物でも、この庭園の中で元気に育っていることが、ちょっと不思議。庭園を散策していると、どんどん時間が経ってしまいます。
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アイナホウ・ランチを造成したシップマン家は、ハワイ州の鳥、ネネの保護と繁殖にも尽力したことで知られています。このアイナホウ・ランチもネネの保護地だったということです。現在も、アイナホウ・ランチの周辺で、ネネをよく見かけます。ネネは庭園の芝をムシャムシャ食べながら、歩き回っていました。その名前の通り、アイナホウ・ランチは牧場だったのですが、もちろん今は牛はいません。その代わり、今はネネが牛のような声で鳴いています。今もネネは、アイナホウ・ランチの周辺で巣作りをするので、ネネの繁殖期にはアイナホウ・ランチ周辺は立ち入り禁止になるそうです。ハイキングをするときは、ボルケーノ国立公園内のビジターセンターなどで確認してから来たほうがいいようです。
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