パンフレットや本、アロハシャツや食器、切手や航空機にも、ハワイをイメージする鳥として、イイヴィの写真や絵が使われています。ハワイに行かれたことのある方は、どこかでご覧になったことがあるのではないでしょうか。でも、実際のイイヴィを目にすることは、なかなか難しい。他のハワイ固有種の鳥と同様、イイヴィはとても生息数の少ない鳥だからです。さて、バードウオッチが好きな私は、ハワイ滞在中も鳥を見るために、森の中をウロウロしています。長い時間ウロウロしたおかげで、イイヴィを見る機会に恵まれました。今回はハワイの希少なミツスイ、イイヴィについての話です。 |
イイヴィの日本名は「ベニハワイミツスイ」。名前の通り、真っ赤な鳥です。翼の先が黒いのが、ポイントになっていますが、クチバシも足も薄紅色をしています。ハワイミツスイの仲間では、アパパネも赤い鳥ですが、アパパネのクチバシや足は黒っぽいので、見分ける時の目印になります。また、イイヴィの方がアパパネよりも一回りほど身体が大きく、羽の色もアパパネは少し黒っぽい深紅、イイヴィは朱色に近い紅色をしています。イイヴィの方が少し明るい赤い羽をしている、という感じでしょうか。でも、最大の違いはそのクチバシの形です。イイヴィの大きな特徴の一つである湾曲したクチバシは、ロベリアなどの、つぼ型になっている花の蜜をすうために進化したと言われています。実際にイイヴィを見ると、大きなクチバシのわりに目が小さめで、ちょっとアンバランスな感じもします。 |
こちらはアパパネ。イイヴィと違ってクチバシがまっすぐ |
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現在、イイヴィが生息しているのは、カウアイ、オアフ、モロカイ、マウイ、ハワイの各島。その内、オアフ島やモロカイ島では極めて生息数が少なく、ほとんど見かけないと言われています。オアフ島でイイヴィを見つけるのは、かなり難しそうなので、イイヴィを見たい方は、ぜひネイバーアイランドへ行きましょう。どの島でも、市街地ではなく山中、それも「ちょっと寒い」くらいに感じる高所にイイヴィは棲んでいます。以前「アパパネを見よう!」でも、ご紹介したのですが、高地の森にはハワイ固有種以外の鳥も、だいぶ棲み着いていて、赤い鳥全てがイイヴィかアパパネ、というわけではありません。イイヴィやアパパネは、外来種のカーディナルと間違えやすいので、気をつけたいところです。私自身は、ハワイ島とマウイ島では、イイヴィを見つけることができるのですが、カウアイ島では、まだ見たことがありません。コケエの山の中で数回、鳴き声を聞いたことがあるのですが、はっきり姿を見ることができないでいます。 |
こちらは外来種のノーザン・カーディナル。同じ赤い鳥なので間違えやすい |
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アパパネは見たことがあるけれど、イイヴィを見たことがない、という方もいらっしゃると思います。イイヴィはアパパネに比べると、生息数がかなり少ないようです。また、アパパネの声は、見つけやすい木の天辺から聞こえてくるのに対し、イイヴィの鳴き声は森の奥や、時には藪の中から聞くことが多いのも、見つけにくい理由の一つになっているのではないでしょうか。以前、ハイキングをしていて、トレイル沿いの藪の中から、イイヴィの鳴き声がしてびっくりしたことがあります。春だったので、営巣中のイイヴィだったのではないかと思い、静かにその場所を離れましたが、ちょっと見た限りでは、巣も鳥の姿も全く分かりませんでした。イイヴィは声が大きな鳥で、藪の中などから聞こえる、地鳴きもかなり大声。イイヴィという名前は、その鳴き声から由来すると言われていますが、森の奥から「イービッ!」という大きな声が聞こえたら、それがイイヴィです。 |
イイヴィの幼鳥、イイヴィ・ポポロ。黄緑の羽が少し赤い羽に変わってきています |
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イイヴィとアパパネを比較してきましたが、バードウオッチをしているとイイヴィがアパパネを追い払っているところを何度も見かけます。アパパネがどちらかというと群れでいるのに対し、イイヴィは単体でいることが多いようです。縄張り意識が強いのか、アパパネに限らず、アマキヒなどの他のミツスイや、同じイイビィでも幼鳥など、とにかく目に入る鳥は追い出したい、という感じです。アパパネは、スズメのようにいつもさえずっている印象がある鳥ですが、イイヴィがいる場所では静かに花の蜜をすっているところが、なんだかちょっとかわいそうでした。他の鳥にイジワルな感じがするイイヴィですが、春先などに巣立ったばかりらしい幼鳥を連れて飛び回っている姿は、微笑ましいです。イイヴィの幼鳥は、ハワイではイイヴィ・ポポロと呼ばれ、羽が黄緑色をしています。 |
ママネの蜜をすうイイヴィ。曲がったクチバシが便利そうです |
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最後に「ハワイ島日和」らしく、ハワイ島でイイヴィを見た話を。それはまだ私がイイヴィを見たことがなかった頃、イイヴィがいるらしいと聞いて、サドルロード沿いの森にバードウオッチに行きました。折悪しくサドルロード周辺は雨。もう帰ろうかな、と思ったときに、望遠レンズを構えたバードウオッチャーに出会いました。オアフ島からいらしたというその人は、私がイイヴィを探していることを知ると「あのオヒアの木を見ていてごらん、ちょっと前にイイヴィが来たばかりだから、またすぐに来るよ」と、すぐ近くの木を教えてくれました。すると、本当に5分もたたないうちにイイヴィがやってきたのです。その後、私も探鳥のコツをつかみ、ハワイ島ではサドルロード周辺や、マウナ・ロア・ロード沿いの森で、イイヴィをよく見つけられるようになりましたが、初めてイイヴィを見たときのことは一番の思い出になっています。 |
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