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クイラウ・リッジ トレイル ミノリ・K・エバンズ

ゲートの横に立つトレイルの標識
 今、我が家にはうちのわんぱく坊主パコと、居候のチーフとレイアの合計三匹の犬がいる。ある日の夕方、トモダチが突然我が家へやって来て、しばらくの間預かってくれと、彼の愛犬2匹を置いていったのだ。初めての夜、突然飼い主と別れて知らない家へやられた不安と、ここのところ続いている寒さとで、二匹は悲しげに鳴き、震えていた。からりと晴れ上がった翌日、私たちは元気のない二匹の姿を見かねて、スーパー散歩を決行することにした。

トレイルは涼しくて歩きやすい

 クイラウ・リッジ トレイル(Kuilau Ridge Trail)は、我が家から車を走らせること10分。家の裏手を走るクアモオ・ロード(Kuamoo Road)をワイアレアレの山に向かって走る。住宅のある地域を過ぎて山道をしばらく行くと右手に黄色のゲートが出てくる。ここが入り口だ。ここらへんはロコ(地元住民)の遊び場になっていて、近くの川やその周辺ではBBQ や水遊びを楽しむロコの家族がたくさんいる。モーターサイクルにもってこいのフィールドでもあり、凸凹ダート道をバリバリ音を鳴らして走るライダーもいる。ちょっと耳にうるさいこのバリバリ音を背中に聞きつつゲートを入ると、すぐにトレイルの始まり。犬たちは喜んで元気にダッシュをかけ、いきなり見えなくなってしまった。犬たちの後を追う形で小走りに進み始めたものの、他に人がいるでもなし、シダ類が茂る道をゆったりと歩き始める。傾斜もほとんどなく、木陰もあり、風が吹き抜ける気持ちのいい道が続く。足元はぬかるんでいることが多いが、この日は幸いにも軽度のぬかるみだった。


少し傾斜が出てくると眺望が広がってくる

 夏休みのおばあちゃん家の裏山といった風情を楽しんでいると、左手側が開け、木々の向こうにワイアレアレの山が見えてくる。さらに進んで赤土の道を少し下がり、ジェットコースターのようにまた上がると広々とした空き地のような場所に到着する。ここには休憩用のベンチもあって、足下に渓谷を彩る緑、目線の向こうにカウアイの山々が連なる美しい風景を楽しめる。ワイアレアレ、ハナレイ、モアレペと三つの山の稜線が部分的に見え隠れしながら太陽に照らされて、ほんとうに美しい。


休憩ベンチのある空き地からトレイルを振り返る

 カウアイを車や自分の足で歩いてまわっていると、その昔、先住の人々だけが暮らしていた時代に思いを馳せてしまうような風景によく出くわすが、休憩所のあるこの場所もそんなところだった。ベンチの反対側に道のようなものがあり、そこをいけばさらにトレイルが続いている。が、今日はここで引き上げることにして、疲れを知らずに飛び回っている犬たちを呼んで、帰路につくことにした。この日はけっきょくただの一人も観光客に出会わず、我が家の庭のように自分たちだけでこの美しいトレイルを楽しんだ。静かで、歩きやすい(体力に自身のない人も大丈夫)トレイルだった。北のハナレイまでを抜けるルートがすぐ近くから始まるのだが、全行程8時間のロング・ルートだ。今度はこのルートにも挑戦してみたいな。


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