トモダチのエドが看護士の資格に合格したというので、それを祝って大々的にパーティが行われることになった。アメリカ本土から両親と兄弟姉妹、その子供たちを呼んで派手に行うという。際しては準備から手伝いに来られたしとのメールが来たので、パーティ前日、指定時間にエドの家を訪れた。準備は夕方の6時から。リビング・ルームに勝手に入っていくと、エドの家族がそろって思い思いにカウチで寝ころんだり、新聞を読んだり、庭のプールでは子供たちとエドがきゃ〜きゃ〜とはしゃいでいる真っ最中である。「あれ、準備は?」と聞くと、エドのママが「いま準備に備えて、ピザが届くのを待っているところなの」と言った。腹が減っては戦はできぬか…でも、なんだかゆったりしてるなぁと思ったのが顔に出てしまったのか、「ハワイアン・タイムよ」と口々に言われてしまった。届いたピザを、これもゆったりと食べて、みんなが腰を上げたところで、準備を指揮するフラワー・アレンジャーのベティや、すごい量のハワイの花々、樹木類がタイミング良く到着した。
ティーの葉をヒモにひとつずつ結わえて、フラ・スカートを作っていく |
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準備のおもな内容は、庭と各テーブルに配置する花のアレンジメントと、エドの姪っ子、そしてエドの仲の良いトモダチであるセリーナの子供たちがフラを踊るための、ティー・リーフのスカートを作ること。私はフラを習っているということで、子供たちと一緒にティー・リーフのスカートと、手首や首にかけるクペエ、レイと呼ばれる飾りものを作ることになった。合計4人分。なかなか手強いお題目である。ティー・リーフは笹の葉をもっと大きく分厚くしたような形をしていて、蒸しもの料理の際には食材をティーで包んで土の中に入れたり、供え物を包んで祭壇に捧げたり、古き時代より現代にいたるまで、ハワイでは日常生活に欠かせないもの。我が家でも緑や深紅、緑に白いスジ模様の入ったものなど、数種の葉のバリエーションを持つティーを庭木として育てていて、それらを切っては、大皿料理の敷物にしたりして頻繁に日常生活の中で活用している。そんな風にいろいろな場面に登場する中でも、テイー・リーフのスカートは、ハワイでフラを踊る人がつける定番のスタイル。フラを見たことのある人、また習っている人には想像してもらいやすい、あるいはよくご存じかもしれないけれど、ハワイのホテルなどでやっているフラ・ショーなどでよく見かけるし、写真にもよく登場しているかと思う。見た目にもすごく豪華だし、いかにも南国という感じがして良いのだけれど、これを作るのはちょっと根気のいる作業となるのだ。
結わえてスカート状になったティーの葉を切りそろえてゆく
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まずはティー・リーフを裏返して根元に近い茎の部分にナイフで小さな切り目を入れていく。それがすむと、テーブルの端を利用して滑らせる要領で、茎を葉から外していく。こうすることで葉から芯が取れて柔らかくしなやかになる。次に2脚のイスを用意して、そこへヒモを渡す。このヒモがベルトの部分になるのだが、根元を上に、葉を下方に垂らす形で、このヒモに茎の部分を結わえ付けていくのだ。隙間がないようにみっちりと葉を重ねる要領で結わえていくのだけれど、枚数が増えるに従って、重量もとうぜんぐんぐんと増していく。フラ・ダンサーの踊りを見ていると軽やかでそんなことは感じないだろうけれど、出来上がりを手に持つと、かなりずっしりと重たい。今回はフラ未体験のエドの姪っ子たちが着るということで、少し重量を減らすために、見た目に違和感のない程度に隙間を少し開けつつ結わえていく。この結わえていく作業が慣れない者にはなかなか進まない。とくにこの日集められたのは切り取ったばかりの葉ばかりで、新鮮なだけに茎の部分がしっかりとしていて、ヒモにまわしてくくりつけるのが困難でもある。はじめの数枚は子供たちも黙々とやっていたものの、次第に溜息が漏れてきて、集中力が見る見る失せていく。ここで作業を放棄されては、あとの作業をぜんぶ私一人でやらねばならなくなるから、私も必死でなだめたりすかしたり声をかけたりしてみるが、実は私も内心、「はぁ〜」と大きな溜息をついていたりしたのだ。
出来上がったフラ・スカートでフラダンスを披露する子供たち
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作業が半分ほど終了した頃には子供たちはすっかり飽きてしまって、「Minoriがやるのが一番きれいに仕上がる」とかなんだか調子の良いことを言ってはただ座り込んでしまっていた。親指とひと差し指の先が緑に染まって、多少じんじんと痺れる頃に、なんとか4人分のスカートが終了した。「終わった〜!」と一番喜んでいたのはもちろん私だったのである。すると子供たちは急激に元気を取り戻し、こんどは試着。ヒモをイスからはずしてそれを各自腰にまわす。サイズの調整をしたあとに、今度は葉の先のラウンドしている部分を、膝下の長さに揃えてまっすぐにハサミで切りそろえる。このあたりまでくるとすっかりスカートらしくなって、みんなウキウキだ。最後に各葉を細く割いてご存じのフラ・スカートの出来上がりだ。子供たちは「マミー、写真撮ってぇ」なんて言って大はしゃぎである。それから4人の子供たちは、明日踊る予定の「フキラウ・ソング」の練習を始めた。フラを習っているセリーナの子供がエドの姪っ子たちにフラの定番「フキラウ・ソング」を教えている。まわりを見渡すと、その頃にはフラワー・アレンジメント組の作業もほぼ終わった様子で、庭のあちらこちらにきれいにアレンジされたハワイの樹木、花々が美しく配置されていたのだ。夜10時、準備終了。明日のパーティは夕方6時からだ。(続く)
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