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カウアイ・タロ・フェスティバル(1)

ミノリ・K・エバンズ

 10月最後の土曜日、ハナレイの町で開催された「カウアイ タロ・フェスティバル」に行ってきた。「Kauai Taro Association」(タロイモ栽培者協会)主催の、隔年で開催されているイベントである。このイベントは、タロイモ栽培に関わる人々が、カウアイに住む住民やこの島を訪れる観光客の人に、ハワイにはかかせない食物であるタロイモについて、もっとよく知ってもらおうと始められたイベントで、今回で5回目を迎える。


Hanaleiの山にかかった白糸のような滝

 カウアイ島に来られた方の中には、島の北ハナレイの町に広がる美しいタロイモの水田風景を目にされた方も多いと思う。私ははじめてカウアイ島を訪れた際にハナレイの町で、山の麓に広がるタロイモの水田風景を見て、その美しい風景に感動するとともに、何とも言えない懐かしさに胸のあたりがビビンと揺れたことを憶えている。この島に住むようになった今でも、ハナレイの町のタロイモの水田風景は私のもっとも好きなカウアイの風景のひとつである。私の住んでいるワイルアの町からは車で40分ほど、ハイウエイをひたすら北上してプリンスヴィルを過ぎてしばらくするとハナレイの町に入る手前が急勾配の坂道になっている。そのぐねぐね道を降りると右手前方にハナレイの入り口に広がるタロイモの水田風景が広がって見えてくる。それまで車から見えていたカウアイとはがらりと様子を変えた風景がそこには広がっていて、急勾配の坂のちょうど終点に1車線の幅の狭い小さな橋がかかっている。その橋を渡る形で右に行くとハナレイの町へと道は続き、橋の手前の細い道を左に折れるとタロイモ水田に取り囲まれる形になる。

 この一帯は「Hanalei National Wildlife Refuge」(ハナレイ・ワイルドライフ・レフュージ)といって、タロイモ水田を中心にした湿地保護区に指定されている。ちなみにこのハナレイ・レフュージは未公開指定となっているので、足を踏み入れることはできないのでご注意。ただ、真ん中を流れるハナレイ・リバーと沿道は指定区域外となっている。急勾配の坂に入る手前(ハイウエイを北上していく左手側)に展望台が設けられていて、この一帯の風景を鳥瞰できるようにもなっている。人によって感じ方はさまざまだとは思うけれど、私はここの風景にはとてもカウアイ島らしいものを感じると同時に、子供の頃、親戚を訪ねて夏休みに遊びいった田舎の町みたいな、そんな懐かしい感じをいつも受ける。


ハワイアン・ミュージックとフラのステージもあった

 さて「カウアイ・タロ・フェスティバル」の当日はあいにくの曇り空であった。それがハナレイの町に近づくにつれてぽつぽつと雨が降り始め、橋を越えたあたりからは本格的な雨降りとなった。そのおかげでタロイモ水田の向こうに連なる山々の山肌には、幾本もの細い白い滝が流れ落ちて、何とも言えない美しい風景を目にすることができた。ちょくちょくハナレイにはビーチに遊びに来るものの、この幾本もの滝が山肌を流れ落ちる風景には滅多にお目にかかれるわけではないので、それを目にできたのはラッキーだったし、嬉しかった。ただ、ざーざー降りの雨の日のイベントというのは決して嬉しくもないし、ラッキーでもない。移住してから傘というものを使ったこともなければ、所持もしていなくて、びしょ濡れになるなぁ〜と車を走らせながら、気持ちも少し曇りつつあったのだ。


ポイ作りの実演風景

 会場となった「Wai'oli Park」はハナレイの町の真ん中。到着するとすでにたくさんの車が雨にざんざんと打ちつけられながら駐車されている。運よく、一緒に来たトモダチ夫婦が余分の傘を持っていて貸してもらうことができた。「どうせ、あなたは傘なんか持っていないと思って家にあるのをぜんぶ持ってきたのよ」と言って広げてくれた傘には大きな穴が開いていた。「これでも少しは雨よけになるんですかね?」と聞いてみたところ、「あら、失礼ね。でもこれじゃダメだわ」と別の傘を広げてくれた。2本目の傘は穴こそ開いてはいなかったものの、骨と布を接続する糸が何本も切れていて、きれいな星形の傘が広がった。「あのぉ、もういいですよ。濡れていきますし」と言うと、いや次のは大丈夫かもしれないとさらに3本目の傘を広げてくれて、ようやくそこで傘らしい傘を手にすることができたのである。雨の多いカウアイだけれど、傘をさしている人はほとんど見かけたことがない。傘といって見かけるのは、ビーチ・パラソルぐらいである。ゆえにカウアイの住民が所持している傘事情は、まあこんなものである。日本や欧米のデパートで1万円も2万円もする傘が当たり前のように販売されているのを知ったら、驚く人も多いに違いないのだ。

 次回へつづく


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