4月中旬から5月中旬まで約一ヶ月間、日本へ里帰りしてきた。残念ながら桜には間に合わなかったけれど、花粉症のシーズンも終わり、ほどほどに暖かくなってきたベストシーズンの日本を楽しんできた。今回はウォーレン(ダンナさんです)も一緒。私たちが日本ではこれを満喫して帰るぞっと決めていたのが「食べること」。ウォーレンは大が5つくらいつくほどの日本食好きである。「ワタシ、ジャパニーズ・フード、ダーイスキ」と言う欧米人によく出会うものの、彼らが言うジャパニーズ・フードは、寿司&天ぷら、みそ汁とちょっと豆腐料理くらいで、実際、ほんとの日本食となると食べられない人の方が多いという印象を受ける。そこへいくとウォーレンは納豆以外は何でも来いで、お口の許容範囲は私などよりもはるかに広い。
煮干し、削り節、ごま、刻みわかめ・・・と日本の調味材料ならぶ我が家のキッチン
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ひさしぶりの里帰りで、家族、親戚、友人知人らが毎日のようにディナー・パーティやらBBQパーティやらを開いてくれて、連日のイベント続きである。私もウォーレンも一ヶ月間、お腹が空いた瞬間を一度も持たなかったのだから、体重のことを考えるとうすら寒い話である。「ニホンハスゴクウマイ(日本の食事はすごく美味しい)」「ああぁ〜、もうシアワセェ」とうなる私たちに「普段、何を食べてるの?」とよく質問された。「何って、普通に。」「普通ってどんなの?」「だから、普通の日本の家庭で食べてるような食事」「えっ、そうなん?(えっ、そうなの?)」と友人知人。そう我が家では、日本の家庭料理が食卓に並ぶことがほとんどである。そしてハワイで生まれ育ったウォーレンには、ごはんとみそ汁は日常的なアイテム。おはしの持ち方などは、うちの父親よりもよほど美しいのである。
「でも食材とか手に入るの?」とまたまた友人知人。そうなんです、実はわりと手に入るのです。ただこれがホノルル(オアフ島)だと、(贅沢やこだわりを言わなければ)かなりのものが手に入るのだけれど、でもここはカウアイ。基本的なものはスーパーで手に入るけれど、その先をのぞむと、ちょっと辛いのが現状である。でも、そんな私たち日本からの移住組には「Sunny
Home Delivery」さんという強い見方がある。
「Sunny Home Delivery」さんは、日本から空輸で送られてくる鮮魚をはじめ、刺身用冷凍食材、豆腐や油揚げ、お漬け物、乾物、海産物類、その他の冷凍加工品、味噌、インスタント食品、菓子類、調味料やドレッシング、ソース類、醤油や酢などから雑誌や本まで、日本の商品を広く扱っているデリバリー・カンパニーである。カウアイ島担当は、桐山和弘&良子ご夫妻。聞けば、発足は2001年1月にホノルル・オフィスがスタート。同時に各島からもホノルル経由で注文ができるようになったらしい。2001年といえばつい最近である。私がカウアイに移住したのが、2001年5月。それまでは日本食をほしいメンバーで負担し合って、ホノルルに買い出しに行っていたというから大変だ。ずいぶんラッキーなタイミングで移住をしてきたものである。それ以降は口コミで広がって、カウアイ・オフィスも本格的にスタートしたという。
さんまの開き、いくら、明太子・・・、品揃えはかなり豊富
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移住してからますます思うのだけれど、「食事」というのはほんとうに大切なものだ。たまの旅行でハワイに来て「B級グルメ」なんて呼びながら、ハワイのプレート・ランチを楽しむことはできる。しかし、毎日の食事となると、私の場合はやはり日本の家庭料理が食べたい。野菜の煮びたし、ひじきの煮物、切り干し大根、肉じゃが、魚料理などなどにみそ汁とごはん、そして漬け物である。加えてダンナさんが日本食何でも来いのアメリカ人というのが我が家の食事スタイルを決定づけて、ほぼ日本の家庭の食卓と変わらない。夏の休日は冷やしそうめん、冬は湯豆腐もしばしば登場する。ウォーレンのお弁当にはおかかや梅干しなどがどっかりと入り、だし巻き玉子などが彩りを添える。そうそう、ちなみに私は大阪出身なので、「お好み焼き」「たこ焼き」の日もあり。
オーダーの受け取りは「配達」か「ピックアップ」。箱にアイスとともにパッキングされてある
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「生まれてからずっと身についているものを食べるのが健康に一番いい」と、ご主人の和弘さん。カウアイ移住前に暮らしていたホノルルにくらべて、カウアイでは食べたいものが手に入らない・・・。そこで以前につとめていた日本の鮮魚を、地元(ハワイ)のレストランに卸す会社のラインを使ってどうにか調達できないかと考えたのが「Sunny
Home Delivery」のスタートだったそうだ。ネイバー・アイランド(カウアイ、マウイ、ビッグアイランド)で、自分と同じように考えている人もたくさんいるはずだとホノルルの会社に掛け合った結果、「Sunny
Home Delivery」が誕生したわけである。スタート時からさっそく反響があり、最近では利用者からのリクエストにできるだけ応じる品揃えを・・・、という努力もなされている。
利用者の大半は、私のように直接、日本から移住してきた人。ちなみに桐山夫妻のお気に入りのオーダーは「有機納豆」と「さば」。我が家のお気に入りは「明太子&たらこ」と「さんまのひらき」「ししゃも」。ホノルルのオフィスから定期的に来るレターでの売れ筋アイテムは「有機納豆」「野菜コロッケ」「たこ焼き」「銀だら切り身」などが上位に上がっている。ともかく「Sunny
Home Delivery」さんのおかげで、カウアイ島に住みつつ、さんまの開きやほっけの開き、明太子スパゲティが食べられる。ほんとうにほんとうにありがたいシステムなのである。最後に良子さんが言っていた「地元の方にも、食習慣や健康な食事ということを見直してもらえるきっかけになれば・・・」という言葉に私も深くうなづいてしまった。長寿国・日本は食生活が支えている部分も大きいのだろうと思うからである。
以前にも書いたかもしれないが、私たちの世代の移住は「個人の選択」によるものである。各自事情は少しずつ違えども、少なくとも私の場合は、ここに住みたくてやってきた。隣町にでも引っ越すような気持ちでやってきた。それでも生まれ育った国のごはんがこんなに恋しいのだ。日系1世や2世の方々が、苦しい暮らしの中で「新天地」を夢見て、長い時間をかけて船でやってきた異国。その地でとれる材料で、あるいは違う風土の中で工夫して日本の食材を育てて、なんとか祖国の味を追求しようとしてきた食べ物に出会うことがあると、「すごいなぁ」と少しジンとしてしまう。祖国の味って、すごいんだなぁって、苦しい生活の中で生きる力を与えてくれたり、気持ちを支えてくれるものだったのだろうなあとジンっとしてしまうのである。そういう私も「うう〜む」とモチベーションをあげたい時は、大きな梅干の入ったおむすびをワシワシと食べる。椰子の木のしたで頬張るおむすびは、その時々で、実にいろんな味がするのでした。
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