今年の春に一ヶ月ほど、日本へ里帰りをした。滞在日のほとんどを実家や、地元の町にいて、家族親戚、友人知人たちとの時間を過ごした。ポコンっと、ひさしぶりに日本の暮らしの中に身を置くと、「ああ、そうだったなぁ」といろんな場面で日本での暮らしがよみがえってきて、懐かしかったり、新鮮に感じたものだ。そのひとつが「ゴミ出し」である。
空港の奥にある「Island
Recycle Center」 |
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実家がある地区では週に2回、ゴミの回収がある。各地区に設置されているゴミの収集場所に、市から指定されたゴミ袋に入れたゴミを持っていく。カウアイでは週に一回。我が家のある地区は月曜日の朝にゴミの収集車が各家庭をまわって、ゴミを回収していくので、少しシステムが違う。日本のゴミ回収システムが新鮮なのか、毎回ゴミの収集日には、「オカアサン(うちの母)、ゴミノヒデス」と言ってウォーレンがいそいそとゴミ袋を運んでいた。こちらに越してきた当初、ゴミの分別システムがはっきりと把握できず、何もかも一緒に捨ててしまうことにかなり抵抗があった。ウォーレンに聞くと、島の東には2カ所ほど「ダンプ」と呼ばれるゴミ捨て場があり、それとはまた別にカーボンボックス(段ボール箱)、缶(アルミ缶のみ)、ビン類を捨てにいけるリサイクルボックスが設置されている場所があると知って、それを利用していた。「ダンプ」はおもに大型ゴミを捨てに行く。とくに分別ゴミを持っていくというシステムにはなっていないが、そこに行くと、おおまかに、家具類などの大型ゴミ、家電類、樹木の類いを分けて捨てるシステムになっている。引っ越してすぐに家を建てる作業に没頭していた私たちは、「ダンプ」はただゴミを捨てる場所だけではなくて、庭に植えたい樹木を、捨てられた樹木類の中からピックアップして、自分の庭に植えるということもしていたものだ。
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知人から「カウアイ群政府が、コンポーストを無料で配布しているから行ってみるといいよ」と電話が入った。コンポーストというのはご存知の通り、生ゴミを入れて攪拌(カクハン)させられる容器のことである。以前から生ゴミを捨てるコンポーストを庭の隅に設置したいなぁと思っていた。家庭菜園をやっていた頃には、生ゴミは土や木クズなどと混ぜて畑の肥料にできたので、生ゴミを捨てるといってもそんなに後ろめたさはなかったのだけれど、家庭菜園を中断してからは後ろめたさを感じつつも、ただゴミとして収集日に家の前に出していた。もちろん多少は庭の樹木の栄養にと利用はしていたけれど、それでも大半はゴミとして捨てていた。コンポーストがほしいなぁと思いつつも、けっこう価格が高かったりして、手に入れるのがのびのびになっていたところへ、けっこういいコンポーストが無料で配布されているというので、ある土曜日にウォーレンと一緒に、「Island
Recycle Center(アイランド・リサイクル・センター)」を訪ねてきた。
出かける前に電話を入れると、オフィスの人が「コンポーストを受け取る前に、その説明ビデオを30分ほど見てもらう必要がある」というので、時間の予約をしてから出かけた。センターは空港と同じエリア、よく利用している「ダンプ」に隣接する形であった。オフィスの人の案内で、違う部屋に通され、そこでビデオを見る。ビデオではコンポーストの設置から、使い方、どういう風にすれば効果的に生ゴミが攪拌するか、虫などの問題などについて説明されていた。ビデオを見終わって、書類に必要事項を記入する。これはコンポーストの配布が一人ひとつと決まっているため、誰が受け取っていったかを把握するためでもある。また、これまでコンポーストを使用した経験のある人には、使用する上で生じた問題などについても記入する欄があった。すべての作業を終えて再度オフィスに行き、書類を渡すと、裏に車を廻すように言われる。ついでにこれまでどこに捨てればいいかが分からずに困っていた種類の不要物について訪ねると、裏にまわる途中に種類別に別れた大型ゴミ箱が設置してあるのでほとんど解決できるはずよと教えてくれた。
そこに行くとなるほど、雑誌、新聞、印刷のされたカーボンボックス(ビールなどのケース)、ただのカーボンボックス、ビン、アルミ缶、オフィスペーパー、ペットボトルなどなど、各町の一カ所に設置されているものよりもさらに詳細に分別してゴミを捨てられるようになっている。恥ずかしながら、こういう場所があることをこれまで知らなかった私たち。これからはここに来ようと、少しホっとした気分になった。受け取ったコンポーストは意外にも大きなもので、なかなかしっかりとした造りのものである。これからは生ゴミを捨てるうしろめたさが少しは減るな...と思うと、少しウキウキした気分になったのである。
日本ではそんなに積極的な気分でいなくても、ゴミの分別収集は当たり前になってきているし(もちろん、それらの処理にはまだまだ問題があるだろうけれど)、情報も入る。こちらでは個人の意志が問われるような仕組みになっている。それにはいろいろな理由があると推測されるけれど、5万6千人ほどの人口しかいないこの島でさまざまなことを住人の税金からまかなえる範囲というのにもかなり限りがあったりするのだろう。カウアイ島に住むようになってから、「なるべくゴミを出したくないなぁ」ということを、以前よりよく考えるようになった。なんて書くと、自然にローインパクトな暮らしを徹底しているように聞こえるかもしれなくて、いやいや決してそんな立派な暮らしをしているわけではないのだけれど、でも出来る限り自然環境にローインパクトな暮らしをしてみようという思いが、私の中で以前より強まってきているのはほんとうである。これも美しいカウアイという島から受けている恩恵かなぁと思ってみたりしているのだ。
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