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モキハナ・フェスティバル (2)

ミノリ・K・エバンズ

 「Kauai Mokihana Festival 2005(カウアイ・モキハナ・フェスティバル)」。今年で21回目を迎えたこのイベントは、一週間を通して、毎日どこかで趣向を変えて、ハワイの文化に触れる催しが行われる島を代表するイベントのひとつになっている。今年の開催日は9月18日〜24日。前回ご紹介した、カウアイ島にいくつかあるハワイアン・スクールの子供たちによる、チャント(詠唱)やフラが披露される「“Eo,E Lili'u”Children's/Youth Music Competition」に続いて参加してきたのが、9月21日に行われた「Hawiian Cultural Workshop」。今年はアンティ・マリー・ルーによるフェザー・クラフト・ワークショップが、開催された。


自作の髪飾りとカヒリを手にもったアンティ・ロケ

 実は私、クラフトにはあまり興味がない。いや、ハラウ(フラの教室)でフラの道具を作ったり、ハワイアン・クラフトを見たり買ったり使ったりする分には非常に興味があるタチなのだけれど、それを自分の手で作ろうという方向には、あまり興味がない。作れたら作れたで楽しそうだけれど、でも面倒だしなぁ...という気持ちが先に来て、なかなか自分から積極的には手を出さない。だから、このワークショップへの参加も実は自分の意志ではなくて、前回ご紹介したイベントに引き続き、私のクム・フラ(フラの先生)であるプナの采配によるもの。ワークショップの前日あたりだったと思う。「水曜日のフェザー・クラフトのワークショップ、行くでしょ?」とプナ。「えっ、そんなのがあるんですか? わぁ、知らなかったなぁ。楽しそうですね。で、でも行くかなぁ、どうかなぁ」と言葉を濁す関心が薄い私。「楽しいわよぉ(決まってるでしょ、という口調)。アンティ・ロケとあなたの名前で申し込みしておいたから」とニッコリ笑うプナ。...というわけで、イベント4日目、「Hawiian Cultural Workshop」に初参加をしてきた。

 当日会場に行くと、丸テーブルがいくつか用意されていて、各テーブルの上にクラフトの材料が置かれている。アンティ・ロケの姿を見つけて、彼女の隣に座る。アンティ・ロケは私が所属しているハラウのクプナである。クプナはハワイ語で、祖父や祖母、祖先、長老など、広い意味で年配者を呼ぶ言葉。他のハラウなんかでは年齢で区切って「クプナ・クラス」という風に、ある程度の年齢が来ると自動的にクプナになるというところもある。私たちのハラウでは、年齢的なものや孫がいるかという人生での位置みたいなものに加えて、ハラウのみんながさまざまな場面でアドバイスをもらえたり、元気をもらったり、人間的にも幅があって尊敬できる人がなるのだとプナが私に話してくれたことがある。アンティ・ロケはまさにそういう人で、ハラウのメンバーが慕う私たちにとって頼りになる、クプナである。ちなみに昔はモデルをしていた頃もあるという彼女はとても美しいクプナでもある。彼女はとにかく手先の器用な人で、キルトやパッチワーク、裁縫系はお手のもの。庭もいじるし、バス・ルームやラナイ(ベランダ、バルコニー)の改装だって自分でやってしまうという人。ともかくプナがクラフト・ワークショップに送り込むのにピッタリの人である。そ、それにしてもなんで私がここに....。お尻の座りの悪いなか、ワークショップは始まったのである。


マリー・ルー・ケクエヴァさんと娘さんのポーレット・カハレプナさん。中央はモキハナフェスティバルのオーガナイザー、クム・フラ のネイセン

 この日の講師、通称アンティ・マリー・ルー、マリー・ルー・ケクエヴァさんと娘さんのポーレット・カハレプナさんはフェザー・レイ作りの名人として、フラやハワイアン・クラフトに興味のある方の中ではご存知の方も多いはず。毎年カウアイで行われるフラのイベント「エ・ピリ・カコウ」でもワークショップを受け持っている親子である。フェザー・レイというのは、その名の通り、鳥の羽を使って作るレイ(首や頭に飾る装飾)のこと。ワークに入る前にひと通り、フェザー・クラフトの歴史や、どんな鳥の羽を使っているか、どんな場面でフェザー・クラフトが登場するかなどのレクチャーが行われる。オアフ島にあるビショップ・ミュージアムなどに行かれた方は「カヒリ・ルーム」という名前を目にされたことだろうと思うが、「カヒリ」というのはハワイの王族用によく用いられていたもので、長い棒の先に鳥の羽が円柱状にたわわに飾られているもの。見たことのない方には、自動車などのホコリ取りに用いられるフサフサ棒(名前を知りません)....アレを想像していただくとかなり近いかと思う。前置きが長くなったけれど、この日の最初のお題は、小さな髪飾りに続いて、このカヒリ作り。もちろんそんな巨大なものは作れないので、カヒリの小さい版で、まさに車のホコリ取りのようなものを作った。


私の2作目、フェザー髪飾り

 テーブル中央に置かれた色とりどりの羽、たくさんの種類の羽の中から好みの固まりを取って、まずは羽をちぎってひとつひとつバラバラにする。それを色の組み合わせや羽の風合いを考えながら、組み合わせつつ、刺繍糸で捲いてフラワー状にしていく。なかなかやってみると楽しい作業である。ただし、隣でスルスルと美しい飾りを仕上げていっているアンティ・ロケのようには、もちろんいかない。いびつなフラワーを作ってはほどいて、また捲いて、またほどく。そんなことを数回繰り返すうちに最初のひとつが出来上がった。ひとつ出来上がると、少し要領を得て、今度はもっといろいろな色や種類を組み合わせて作ってみたくなる。ちなみにカヒリ作りでは、最初のひとつは、カヒリというよりは、フェイク・椰子の木みたいになってしまったが...。


いろいろな種類のフェザー・レイを紹介するポーレットさん

 今度はクジャクの羽をここにいれて、アクセントにこんな色も入れて...と、やっているうちにどんどん夢中になってしまった。ランチを食べる間も惜しんで作業に取りくんでいた私である。最後の課題の少し大きめのカヒリを3分の1ほど作り終えたところで、時間が来てお開きとなった。仕上げるためにとテーブルに余った羽はぜんぶ持ち帰っていいというのが嬉しかった。うわぁ、家に帰ったらいろいろ作ろう...とたくさんの羽をジップロックに詰めて帰途についた私なのである。何事も喰わず嫌いはいけないものである。やってみるとフェザー・クラフトってすごく楽しいものであった。その後、持って帰った羽を活用しているかと言えば....すみません、それは聞かないでください。ただ、小さな髪飾りはあれから数度作って、人にお礼を言いたい機会などに「ありがとう」の言葉に添えて、渡してみたりしているのである。


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