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アロハ・タイル

ミノリ・K・エバンズ

ショップに隣接するアート・スタジオで絵付けするスタッフ

 カウアイ島の西、ワイメアに向けて車を走らせる途中に「Hanapepe」(ハナペペ)という町がある。その昔、カウアイ島で最も栄えた町だったというハナペペは、1992年のハリケーン・イニキの被害から立ち直れないまま、そのさびれた町並みから、長い間、ゴーストタウンなどとも呼ばれていたらしい。私も最初のカウアイ旅行でここを訪れたことがあるけれど、廃屋といった感じの建物が並ぶ、ほとんど人影もないような、まさにゴーストでも出そうな、そんな印象だった。そのハナペペに、いつからか、島のアーティストたちが集まるようになった。そしていま、ハナペペの町は「芸術の町」として、昔の活気を取り戻そうと、確実に復活しつつあるようなのだ。金曜日の夜には「Art Night」(アート・ナイト)と称して、ほとんどのお店が夜の9時頃まで営業時間を延長して、週末ごとのお祭りを盛り上げている。


ハワイアン・テイストな作品が所狭しとならぶ店内

 山側の住宅地を背にする形で、ハイウエイから続くHanapepe Road(ハナペペ・ロード)沿いに小さなギャラリーやらが何軒か連なっているのが、「Hanapepe Downtown」(ハナペペ・ダウンタウン)と呼ばれるストリート。この一画に、私のお気に入りのショップがある。その名も可愛い「Banana Patch Studio」(バナナ・パッチ・スタジオ)である。ハワイを訪れた方の中には、きっと各地のギフト・ショップなどでアート・タイルを見かけている方も多いことだろうと思う。ハイビスカスやラウアエ*1 などの草や花、フラ・ガール、サーファー・ボーイなどの、ハワイらしいものをモチーフにしたイラストに、“Please take off your shoes”(クツをお脱ぎください)、“Gone to Surf”(サーフィンに行ってま〜す)、“Welcome”(いらっしゃいませ)などの、さまざまなメッセージが添えられたタイル。私はこれらを勝手に「アロハ・タイル」と呼んでいるが、ここ「バナナ・パッチ・スタジオ」は、そのアロハ・タイルの専門店。ほんとうに多種多様なデザインのアロハ・タイルが、壁一面にレイアウトされ、見ていてまったく飽きることがない。オーナーのジョアンナは、アーティスト。これらのタイルのデザインが、ほとんど彼女の作品だそうだ。


壁を埋める、多種多様なデザイン&機能のアート・タイル

 もともとは、アート・タイルの卸し専門の会社としてジョアンナが会社を作ったのが1992年。2003年にこのショップをオープンするまでは、カウアイ島内のギフト・ショップや、他島のギフト・ショップへ、アート・タイルを卸してきたそうだ。カウアイ島ではないどこかで、ジョアンナの作品を手にしている人も、きっと多いことだろうと思う。ショップに隣接して、アート・スタジオがある。お店のすぐ隣で、スタッフがタイルに絵付けをしていくのを、ガラス越しに見学することができるのも楽しい。タイルを焼くのはお店の裏手。うまく色が出なかったり、部分的に色が飛んでしまったりと、100発100中で、お店に並べられる作品ができるわけではないと、スタッフのシェリーが話してくれた。


時計仕様のタイルもあり

 お店にならぶアート・タイルには大小2種類のサイズがある。メッセージの入ったもの、入っていないもの、時計に加工されているもの...機能もさまざま。タイル以外にもお皿やお鉢、変わったところではバスルーム用のシンクなどもある。店内にはこの他にも、ハワイアン・テイストたっぷりの小物や、インテリア用品などが所狭しと並んでいる。部屋の模様替えが小さな趣味であったりする私には、購買欲をそそられ過ぎる、ちょっとキケンなお店でもあるのだ。たいがいは、西へと行くついでに立ち寄ることが多いのだけれど、クリスマスや誰かのお誕生日という時にも、ここに来ることが多い。日本へ里帰りする時にも、親しい友人にここでタイルを買ってみたりもする。トロピカル・カラーや、パステル・カラーの草花、マーメイド柄など可愛らしい路線から、ウミガメなどをモチーフに渋い色合いに仕上げられた、神話の本の挿絵になりそうなデザインまでとチョイスは広い。タイルの片隅には、ジョアンナのサインと並んで、「kauai」と入れられていて、お土産としてもオススメ。ただ、日本へのお土産を選ぶ際には、「ここで見るといい感じだけれど、はたしてこれが、自分の家(またはお土産を渡す相手の家)のインテリアに合うのか」ということを考慮したいもの。


オーナーで、アーティストのジョアンナ

 一度、母への誕生日ギフトにとハイビスカス柄のタイルが時計になっているものを購入したことがある。里帰りの際に、実家のリビングで目にしたソレは、部屋の中で、残念ながら、浮くのにもほどがある...というくらいに、浮いていた。個人的には、ハッキリした色彩や、渋めの色彩のものの方が、日本には合うのではないかと思う。よけいなお世話ですが...。ともかく、西へ行く際には(いや、行くついででなくても)ぜひ、立ち寄ってみてほしい。ギャラリーが軒を並べるストリートの中でも、緑色のペインティングがひときわ“センスいい”雰囲気を醸し出しているショップなのだ。

*1 シダの一種。 -> 特集「花物語(8)シダの世界その2」参照

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