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盆ダンス

ミノリ・K・エバンズ
盆踊りの始まる前、フードブースは大賑わい

 カウアイでは、「BON DANCE」(盆ダンス=盆踊り)のシーズンを迎えている。毎年6月下旬から7月下旬まで、毎週末、どこかのお寺で「BON DANCE」が開催される。先日、私とウォーレン(ダンナさんです)は、昨年に引き続いて、「ワイメア東本願寺」の「BON DANCE」に出かけてきた。我が家のあるワイルアの町から、ワイメアまでは車で一時間弱ほど。遠出にはなるのだけれど、住職夫妻とはお友達ということもあって、ついつい、足が向いてしまう。今年は、私のクム・フラ(フラの先生)プナも一緒に3人でワイメアに向かった。車の中から、私とプナは踊る気満々、ウォーレンは踊る気ゼロ、「BON DANCE」に対するモチベーションは3人、それぞれ違うようだ。私は「踊る阿呆に見る阿呆、どうせ阿呆なら踊らにゃ損、損」という歌の通り、盆踊りに出かけたら、がんがんと踊る。大きな、橙色のきれいな夕陽に向かって、車道の横に広がる島の西の景色を見ながら、車を走らせた。

賑わう境内

 到着したのはまだまだ辺りが明るい7時30分頃。踊りが始まるのは陽が落ちてからだというのに、駐車場はすでに満杯。お寺の外にも人が溢れ出している状態だ。「なんか盛況そうだね」などと言いながら、境内に向かう。以前にもお伝えしたように、こちらの「BON DANCE」と、日本の「盆踊り」の違うところは、観客席があること。やぐらの周りに、踊るスペースを取り、さらにその周りはロープが張られて、椅子が数列、配置されている。ポータブルの椅子を持参してくる人も多い。フードコーナーには、ホットドッグやら、パニーニ風ハンバーガーやら、プレート料理やら、シェイブアイスが用意されて、人々は好きなものを買っては椅子に座って、料理を食べながらゆったりと踊りが始まるのを待っている。知った顔にあいさつしながら、奥へとすすんでいく。赤ちゃんからお年寄りまでたくさんの人が浴衣姿で集まってきているが、平均して浴衣の柄が派手目なのが、ハワイらしいところだろうか。私たちはずずっと奥へ行って、舞台裏手の、「BON DANCE」の運営にあたるメンバー(信者)さんたちが集うテーブルへ入らせてもらう。境内の喧噪とはまた別の空間がそこにはあって、日系人のメンバーさんたちが楽しそうに話しながら、ビールを飲んで、いわゆる「まかない料理」を食べている。この「まかない料理」が実は、相当に美味しい。一度腰を落ち着けてしまうと、かたことの日本語やらで話かけられたりしながらの会話が続いて、なかなかそこから動けない。ひとしきり、飲んだり食べたり、会話して、お腹が膨らんできたところで、エクササイズがてら踊りに行くことにした。ウォーレンはさらに腰を落ち着けてしまって、どうやらそこから動く様子もない。「踊ってくるよ〜」と声をかけると、「ハイ、ドーゾ」と変な日本語でひとこと、返ってきた。まったく踊る気はないらしい。

 境内ではすでに「BON DANCE」が始まって一時間ほど、けっこうな盛り上がり具合である。実はこの日は、「BON DANCE」のあとに、オアフ島から来ている知人の姪っ子さんのウエディングパーティに誘ってもらっていたこともあって、私はアロハドレス姿。その上から借りたハッピを着て「BON DANCE」を踊る、ちょっと変な人状態である。輪状に張られたロープの中に入ると、まずは「ヒデミさん」の姿を探す。ヒデミさんはこちらに住んでいる日本人だけれど、“盆踊りと言えば、この人”という感じの存在で、個人的な意見でいうと、この人の右に出る人はいないと私は思っている(って、私にそんな太鼓判を押されても何も意味がないのですが...)。「BON DANCE」グループというのがいくつかあって、シーズンに向けて練習もされているようで、それらのグループはこのシーズン、毎週末のイベントでともかく忙しい時期を送られるようだ。そして、私はぴったり、このヒデミさんにくっついて踊ることにしている。ヒデミさんをピッタリとマークしていれば、知らない曲ばかりでも、なんとか楽しめるからだ。私が知っている曲といえば、「炭坑節」と、あとひとつ(名前はわからない)くらい。あとはひたすら、ヒデミさんを真似て踊る。

琉球太鼓のパフォーマンスをする子供たち

 「BON DANCE」グループに所属していると思われる人たちがリードしながら、ロコの人も次々と混じって踊りを楽しむ。驚くのは若い人の姿がとても多いことだろうか。小さい子、小学生や中学生くらいの子供たちもたくさんいる。ハワイで作られた踊りも多いようで、聞いた事も見たこともない、爽やかというか、やたらと明るく軽快な踊りが混じるのがおもしろい。ターンが入る振りがわりと多くて、やぐらの周りを回りながら、ターンをしつつ踊っていると、目がまわるようだ。みんなが着ているハッピにもいろいろな種類があって、異国の地のハッピは、デザインも書かれた文字にも味があって、こちらも目を楽しませてくれる。休憩時間には、琉球太鼓グループの子供たちのパフォーマンスがある。

 何曲くらい踊ったのだろうか。いやはや、疲れてきたなぁとロープの外へ出ようと思ったところへ、「これが最後の曲です」とアナウンス。けっきょく、わりと長い時間、踊っていたように思う。知らない曲、振り付けが多いのも手伝って、必死で真似をしつつ踊っているうちにあっと言う間に時間が過ぎてしまったようだ。最後の曲が終わってロープの外に出ると、夜の11時をまわっていた。いやぁ、疲れたなぁと思ったところで、次なるパーティが待っていることを思い出して、次なるパーティへと繰り出していく私たちなのであった。到着してみると、こちらは「ジャワイアン」(ハワイアン・レゲエ)やらが大ボリュームで演奏されて、みんなアルコールを片手に踊りまくっている。違う世界から、違う世界へとワープしてきたような感覚に包まれつつ、ぼんやりとしてきた頭で、今日という日はいつ終わるのだろうか...と考えながら踊る私なのでした。


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