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ラウアエ採り

ミノリ・K・エバンズ
ラウアエの葉で編んだレイをつけて儀式に参加するフラシスター

 3月の中旬から4月の中旬まで日本に行ってきた。暖かい日が続いていると聞いていたものの、到着してみると「寒の戻り」とやらで、日本はとても寒かった。薄手のダウンパーカを着て過ごして日本からカウアイへ戻ってみると、さすがにこちらは暖かい。1ヶ月ぶりにTシャツ姿の日常に戻ってホっとしたのもつかの間、数日後に義父が亡くなったと訃報が入った。お葬式に参列するために、急遽、アイダホへ飛んだ。行ってみると、アイダホは寒かった日本よりもさらに寒くて、雪なんかもうっすらと積もっているではないか。吐く息も白い。そこで2週間ほどを過ごしてカウアイに戻ってくると、もう暦は5月になろうというところである。バタバタした日々のあとで我が家に戻って気が緩んだせいか、今度は風邪を引いてしまって、高熱と咳にやられつつ1週間ほどを過ごした。前回、この「カウアイ日記」でインフルエンザにかかったと書いて、今度は風邪で寝込んだなんて、なんか体力が落ちているなぁ、免疫力が落ちているなぁと実感している今日この頃である。周囲の人が言うには、飛行機での移動というのは、いろいろな菌をもらいやすいらしい。ふとカレンダーを眺めてみると、4月中でカウアイにいたのはなんと4日間だけ。そういうことはかなり珍しい。風邪の症状が落ち着いてきたら、来週、モロカイ島であるフラの儀式への準備が山積みで、ほんとうにあっと言う間に日々が過ぎていく。

雨がたっぷり降ったあとの山肌を流れる滝

 モロカイ島のフラの儀式は、毎年5月に行なわれる「Ka Hula Pico(カ・フラ・ピコ)」と言われるフラを中心としたハワイアン文化の祭典。儀式や、訪れるヘイアウ(聖域)で踊るフラのレッスンもさることながら、それらのための衣装作り、衣装とともに身につける装飾品の作成などなど、出発までにやることが後を絶たない。モロカイ島への出発まであと4日となった今日は、頭と首につけるレイの材料を採りに行った。材料となる「ラウアエ」の葉を採取するのは、いつもフラシスターであるカレンの友人の家。カパアの町をずっとずっと山の方へ奥深く入っていったところに、その家はあるのだけれど、12エーカーという広い敷地の中にさまざまなハワイの植物が植えられている、とても美しい場所である。敷地の中に川が流れていて、その小さな渓谷沿いに、美しく立派な「ラウアエ」がびっしりと密生している。残念なことに、今朝起きてみると、これでもかというほどに雨が降っている。こんな雨はひさしぶりだなぁ、と言うくらいのあっぱれな降りっぷりである。「ラウアエ」の葉を採取しに行くには、そうとうに厄介な天候である。とはいえ、レイを作るには、1週間から、せめて数日前には枝を取って、葉を枝からむしって日陰に干しておく必要がある。ハウという樹の繊維で、葉を編み込んでいってレイを作るのだけれど、それにはある程度、しなりが必要で、採りたての新鮮な葉ではレイは作れないからだ。「こんなどしゃ降りの中でもやっぱり、今日、採取しにいくのかなぁ」と、ビビる気持ちでいるところへ、カレンが青いトラックでやってきた。レインコート代わりのアノラックを着て、彼女のトラックに乗り込む。手には枝きりハサミとグローブ、そして採取した葉を入れるためのゴミ袋。こんな時にいつも「ああ、1足買っておけば良かった」と後悔する防水性シューズもなく、クロックス製のつま先に穴があけてあるスリッポンで足元を包む。

 その家に到着すると、タイミング良く雨がかなり弱まってくれた。いつもの通り、川沿いに行って、なるべく同じ場所から採取しないように気をつけて、「ラウアエ」を取る。足元が雨で滑りやすくなっているので、いつもより慎重に斜面を踏みつつ、「ラウアエ」の密集している場所を、緑の中に分け入りつつ、60〜70本ほどの枝を摘んだ。「こんなものでいいかな」と必要分を採取した頃に、ふたたび雨が降り始めた。植物採取には若干、不便な状況だったけれど、いつ来てみても、なんとも美しいところである。ふと山を見上げると、山肌に沿って幾筋もの滝が、白い線を描いているのが見えた。フラの儀式に参加する時にはかならず、こうして何か植物を採取して、その緑を身につけて踊る。手間のかかる作業とも言えるけれど、暮らしのすぐそばに、こうして植物を採取できる豊かな自然があるということは、とても気持ちを豊かにしてくれるし、実際に豊かな暮らしを送らせてもらっているのだとも思う。とくにフラのある暮らしを通して、この島から享受しているものの大きさに気づくことも多い。どしゃ降りの中、「Mahalo Kauai, Mahalo Keakua(ありがとう、カウアイ。神様、ありがとう)」と、心の中で感謝をする1日を、今日も、過ごしたのである。


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