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ミノリのカウアイ日記

冬至の儀式

ミノリ・K・エバンス
赤と黄のティー・リーフを編み込んだラウアエのレイ

 みなさん、明けましておめでとうございます。今年も楽しいこと、嬉しいことがいっぱいの一年になるといいですね。あまり嬉しくないニュースも流れがちなこの頃だからこそ、社会的な、または超個人的な事情でも、ネガティブな状況に身を置いた時に、「楽しいこと、嬉しいことをしっかりキャッチできる」スイッチを、容易に入れられる自分でいたいなって思っています。なんてことを言うと、スイッチなんて入れる必要ないだろっ、いつも嬉しく楽しくやってるじゃないかって言われそうな私ですが、今年も「能天気スイッチ」は、できるだけ”オン”にしたままでやっていきたいなと思っています。

 さてさて、みなさん、良い年末年始を過ごされましたか? 私は、ハワイでの暮らしが年数を重ねるごとに、「日本の正月」「新年を迎える厳粛な気持ち」が薄れてきているように思う。2009年の暮れに、「よ〜し今年こそ、がっつりと大掃除だ!」と、何を血迷ったか、そんな決意をしてしまった挙げ句、「年末の大掃除」が、新年の最初の大仕事になってしまった。つまり、大掃除を始めた挙げ句に、途中で急激にヤル気が失せ、いつもよりもさらに部屋の中が散らかった状態で、新年を迎えた次第。元旦に、お餅のお裾分けに立ち寄ってくれた友人が、”ドロボーでも入ったの?”状態の部屋の片隅に佇んで、「一年の計は元旦にあり」って言うことわざに当てはめると、なんだかヤル気のない一年になりそうだねと、つぶやいて帰って行った。ヤル気がないんじゃなくて、その時々の自分の気持ちに素直に従おうとした結果がコレなんだよというと、そんなことはただの言い訳だとでも言いたげに、鼻で笑ってあしらわれてしまった。そんな部屋の大掃除計画は、新年が明けてもまったく進まなかった。そして、1月中旬にここ数年恒例になっている、フラシスター一家が日本から遊びに来るのを機に、なんだか適当に幕を閉じた。ま、そんなものである。あまり大掛かりで無謀な計画は立てないことが大事なんだと改めて思った次第である。いやはや。

上から見るとこんな感じ

 新年を迎える厳粛な気分が薄れてきていると書いたけれど、私には、暦上の新年を迎える前に、もうひとつ別の年末年始の行事がある。それが「冬至」の日。フラに関わっている人にとっては、「冬至」の日が新年を迎える日になるそうだ。というわけで、毎年毎年、場所を変えて、どこかのヘイアウ(聖域)、あるいはビーチで「冬至の儀式」が行われる。今年は、12月20日から21日にかけて行われた。冬至の儀式は通常、夕方の6時から、翌朝の6時まで、12時間。「儀式」に参加するというと、その時間にその場に身を置いているだけではなくて、いろいろな作業がその前後に待っている。その中のひとつが、「レイ・メイキング」。私たちのハラウ(フラの教室)では、儀式に参加するにあたっては、各自が、両手首、両足首、胸、頭と、6つのレイを作るのが習わしになっている。その時々でレイ・メイキングに使う植物はさまざまだけれど、よく使うのが、”ラウアエの葉”。ティー・リーフ(ティーの木の葉)で三つ編みを作りながら、”ラウアエ”の葉をそこに編み込んでいく。それに加えて、赤と黄のティー・リーフも編み込み、色合いをつけていくこともある。レイ・メイキングは、”ラウアエの葉”を摘みに行くところから始まる。私はいつも、フラ・シスターの友人宅の庭にお邪魔させてもらって、渓谷沿い(自宅の庭の一画に渓谷があるなんて、贅沢なお話ですね。笑)にびっしりと生えているラウアエの枝を摘む。種田山頭火の句に「分け入っても分け入っても 青い山」という有名な一句があるけれど、ラウアエを摘みに入る作業はまさにそんな感じ。分け入っても分け入ってもラウアエの枝。それを万全な蚊対策で固めた「農作業のおばさん」的ファッション(?)で黙々と進める。それを持ち帰って、枝から葉をちぎり、それを日陰に広げて、数日置いておく。ラウアエの葉が柔らかくなったところで、ティー・リーフを用意して、レイを作る。レイを作る作業は、わりと時間がかかる。一人で黙々とやっていると煮詰まってきたりもする。かと言って、ノリノリ(死語?)な音楽をかけながらレイを作ったりした日には、ラウアエの葉先があちらこちらを向いて、なんだかワイルド過ぎるレイになってしまうのも困る。というわけで、レイ作りはフラ・シスターと集まって、話をしながら一緒に作るというのが通常である。儀式はレイ作りから始まる...と教えられていつつも、儀式の数日前から「神聖」な気持ちになるのは、なかなかむずかしいことである。たわいのないおしゃべりや、これは儀式用のレイ作りをしている最中に話すことじゃないだろうという不謹慎なおしゃべりに花が咲いてしまう事もあるけれど、ま、そこは仕方がない。それでも、ひとつ、またひとつとレイが出来上がっていくうちに、不思議と、少しずつ「儀式」へと気持ちが向かっていく。メンバーの中では、比較的、レイ作りのスピードが遅い私。全部のレイが出来上がった時には、「やった〜!」と叫ぶエネルギーもなく、「できたぁ〜」と力なくつぶやきつつ、ナメクジのようにヨタヨタととベッドに潜り込む(いつも出来上がるのは夜中を過ぎてしまう)。

出来上がったレイを儀式などで着ける。写真は昨年のエマラニ・フェスティバル

 今年の冬至の儀式は、ウエスト・サイドのビーチで行われた。去年(2008年)の冬至の儀式は、風がビュンビュン吹いて、寒さとの戦いだったけれど、今年は比較的、風も穏やかでカヒコの衣装だけでも、そんなに寒くはなかった。なによりも印象に残ったのは、自分たちが座っている、その頭上に広がる澄み切った空、そこに散らばる満天の星の美しさである。辺りが真っ暗なだけに星空の美しさが引き立つ。ポロポロと流れ星がこぼれる。そんな空の下で、踊って、チャンテング(詠唱)をして、今年も新年を迎えることができた。クム・フラ(フラの指導者)が、静かな声で、今年はさまざまな変化を迎える時になるでしょう。どんな出来事、変化が自分のもとにやってきても、それが嬉しいこと、あまり嬉しくないことでも、バランスよく受け入れられる自分たちでいたいですね、と話してくれた。私はそんなクム・フラの声を、近いのだけれどなんだか遠くの方で鳴っている心地の良い音楽のように聞きながら、「なんだこりゃ〜」サイズの美しい星空をずっとずっと見上げながら、来るべき2010年に思いを馳せていたのである。

 

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