ローカル・ストア in キラウエア・タウン
週末の朝、隣でダンナさんがグ〜スカと寝ている時は、波のない日。目が覚めた時に隣がもぬけのからになっている時は、波のある日(ちなみに朝4時などに出かけて行くこともあってか、これまでに家を出て行く気配で目覚めたことのない自分が、不思議でもあります)。 ウォーレンがサーフィンに出かけるかどうかで、週末の過ごし方はうんと変わってくる。彼が家にいる時は、時々、少し遠出をして、遅めの朝食を取りに、お気に入りのカフェに行く。とは言っても、そんなに選択の余地のないカウアイ島のこと。行くのはだいたい、北に向かって「キラウエア・ベーカリー」に行くか、西に向かって「カラへオ・コーヒー」に行くかが定番。どちらも過去にこの「カウアイ日記」で書かせてもらったことがあると思う。どこへ行くかを決めるのはだいたい私。その日の気分によって、である。
この日は、北へ向かった。「キラウエア・ベーカリー」で朝食を取って、最近カメラを趣味にし始めたウォーレンと2人で、キラウエアの町を撮影してまわろうという企画。「キラウエア」という名前は、火山でよく知られていることもあって、ほんの時々ではあるが、「あの火山が噴火しているところ?」と聞かれることがある。けれどあの火山で有名なキラウエアはハワイ島にある。激しい気性で知られる女神ペレがいまも住んでいると言われて、噴火を繰り返して、真っ黒な溶岩が地を這って海へと流れている、あの「キラウエア」はカウアイ島にない。’なんで同じ地名なんだろう’と不思議なくらいに、カウアイにある「キラウエア」は、山と海に囲まれた穏やかな町。観光名所でいうと「キラウエア灯台」が有名かもしれない。ここでは、ネネなどを始め、さまざまな野鳥類が観察できる。白い灯台、足下に青い海。とても美しいカウアイの風景のひとつだけれど、ハワイ島のキラウエアとは違って、どこまでも、ゆったりと穏やかな風景である。
キラウエア・ベーカリーに行ったら、ついでに寄るところがある。それが「キラウエア・タウン・マーケット」。昔はその名を、‘キラウエア・ファーマーズ・マーケット’と言ったらしい。たぶん(あくまで想像)ファーマーズ・マーケットという同じ名前で、毎週、青空市場も開かれていることもあって、これでは紛らわしいと改名されたのかもしれない。2005年に残念ながら廃館してしまった「キラウエア・シアター」の跡地の、そのすぐ隣に戸を構える小さなローカル・ストアである。日本の田舎でも昔はよく見られた(いまもそうだと思うけれど)、よろず屋さんと少し雰囲気が似ているかもしれない。日本のそれをハワイ風にした感じのお店。ローカルの野菜などと、ちょっとした生活用品、飲み物、菓子類などが置かれている。ここで必ずと言っていいほど買うのが、「organic salad mix(オーガニック・サラダ・ミックス)」$5.50を2袋。5〜6種類のオーガニック野菜がミックスされていて、とても美味しい。普段から、野菜は「ファーマーズ・マーケット(青空市場)」でローカルのものを買っている我が家だけれど、ここのミックス・サラダは、いろいろなものを試した中でも、ベスト3に確実に入る。入っている野菜の種類の多さ、そして混ざり具合。何と言っても、配給する人の「新鮮で美味しいものを届けたい」という気持ちが伝わってくるような一袋である。と言っても、これを作っている人と話をしたことはない。でも、商品を通して、作り手のそういう姿勢というのはわかるもの。中身がいつも新鮮で、きれいに洗われていて、いろんな種類がほんとにいい具合で混ざっているから。野菜は、とくにこういった葉っぱ類は、収穫時期が少しズレただけで、甘みの代わりに苦味が出て来たりする。この「organic salad mix(オーガニック・サラダ・ミックス)」はいつも新鮮で、ほんのり甘く、いい具合に柔らかく、時々はスパイシーな野菜がこれまた適度に入っていたりする。その時々で、微妙に混ざり合っている野菜の種類が違うのも、お楽しみのひとつ。
お店にはたいがい、愛想の良い、可愛らしいアンティがいて、気持ちのいい応対をしてくれる。お店の奥には「DELI(デリ)」コーナーもあって、なかなかの充実ぶり。このデリで作られたたくさんの種類のサンドウィッチが冷蔵庫にずらりと並んでいて、どれも美味しい。ローカルのまぐろを挟んだ「Island Ahi」など、オリジナルなメニューが並ぶ。サラダを2袋買いに入るだけなのに、気づくといつもお店の隅々までをチェックして、車に戻る時にはサラダに加えて、あれやこれやを手の中に抱えているのがお決まりである。こうやって、ゆる〜りと過ぎていく週末の朝は、私のカウアイ暮らしの中のお気に入りの時間でもある。私は友人が来ると、こんな場所をゆる〜りと一緒にまわることが多い。観光名所に行くのもいいけれど、こんな時間に身を置いてみるのがまた、カウアイを楽しむ方法のひとつではないかなと思う。忙しいハワイの旅はワイキキにお任せして、カウアイに来られる機会にはぜひ、この島のゆるいエネルギーと、ゆる〜く時間を過ごすことがよく似合う、それが許される、カウアイ島の魅力に触れてほしい。そして、そんなゆるさは、観光地以外のところに溢れているような気がするのです。