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大富豪の豪邸で、サンデー・ブランチ
ミノリ・エヴァンス
これまで個人的にあまり興味がなく、足を踏み入れたことのなかった場所のひとつが「KILOHANA」。さとうきび畑を経営して、大金持ちになった人のお家の跡… そんなの見てもなぁと、思っていた。でも”あそこのサンデー・ブランチはイケるよ”と聞いていて、それにはちょっとそそられてもいた。最近、我が家に泊まりに来ていた友人が、一日、私をツアーガイドで雇ってくれて(ありがと〜)、そのリクエストの中に「キロハナに行ってみたい」というのが入っていたので、じゃぁ、サンデー・ブランチに出かけましょうということになった。カウアイ移住10年目の「KILOHANA」デビューである。
昔はここがダイニング・ルームだったと思われる
「KILOHANA」はリフエの町中を西に向かったハイウエイ沿いにある。”キロハナ・プランテーション”という名前で載せているガイドブックも多いようだけれど、どうやら「KILOHANA(キロハナ)」が現在の正式名称のよう。1935年、さとうきび産業の最盛期に、「グローブ・ファーム・プランテーション」という、さとうきび製造会社の責任者だったゲイロード・パーク・ウィルコックス氏が建てた、彼の”ドリーム・ハウス”。その跡地を、レストラン/ミュージアム/ギフト・ショップに改装して、屋敷を囲うその広大な敷地も含めてカウアイの観光地のひとつとなっている。
官約移民として日本人がハワイに初上陸したのが、1885年2月9日…明治18年のこと(それ以前に官約移民という形ではない153名ほどがハワイに渡航記録あり)。944名が2週間の船旅を経てオアフ島に上陸。数日間の検疫期間などのあと、各島のさとうきび耕地に分かれて送られたと「ウィキペディア」には書かれている。カウアイ島に送られた日本人は、さらに6つのさとうきび耕地に分かれたようで、そのうちの何人かがこの「グローブ・ファーム・プランテーション」にも来たことだろう。それから50年の後、一流の建築家を雇い、最高の建築材を輸入して作られた大富豪の豪邸である。加えて邸内にはサンフランシスコから輸入したカスタムオーダーの家具、ハワイとポリネシア各王室が所有していた家具、東洋の高級家具を揃え、前庭には貴重なトロピカル植物が植えられた。完成した時、ウィルコックス氏の”ドリーム・ハウス”は、莫大な費用をかけて仕上げられた、カウアイ史上で最も贅沢な家となった。
朝食&軽昼食メニューがずらりと並ぶビュッフェ
ある日曜の正午前、私たちは「KILOHANA」のサンデー・ブランチへ出かけた。車を停めて、レストラン「22 North」へ。ウィルコックス・ファミリーが住んでいた当時は、中庭だったと思われる部分がレストランになっている。風の吹き抜ける気持ちの良い「コの字」型のテラスに、程よい感覚でテーブルと椅子が配置されている。私はフレッシュ・グアバ・ジュースとコーヒーをオーダーして、ビュッフェへ。サンデー・ブランチはビュッフェ・スタイル。もともとはダイニング・ルームだったと思われる場所に、美味しそうなブランチ・メニューがずらりと並ぶ。種類も豊富。「22 North」は観光客には人気のレストラン。どれを頂いても、その味は確か。フレンチ・トーストやパンケーキと言ったカジュアル・メニューでさえ、品の良さを備えた”高級メニュー”テイストがプラスされていると言った具合である。食べることが大好きな私の友人は、目をキラキラ輝かせて、ビュッフェ・エリアを満喫していた。私も少しずついろいろなメニューを食べてみたが、さすがにハズレなしに美味しい。そよそよと吹く風、時折降る小雨に肌がかすかに濡れる瞬間もあったけれど、青く澄み渡った空の下ではそれさえも気持ちよく感じられた。一人30ドルほどと、ちょっとお高いブランチではあるけれど、ゆったりと美味しいものをいただくのにはオススメの時間だと思う。とくにカップルにはオススメの場所かも。
サラダ、キッシュ、マッシュポテトとふんわりフレンチトースト
さて満腹&満悦ブランチを堪能したあとに、家の中を歩いてみる。現在は、豪邸の中が開放されていて、自由に歩き回れる。ミュージアム(博物館)好きな私は、もっと博物館的な要素を期待していたものの、邸内のほとんどの部分が当時の姿を残しつつ、空いたスペースはギフト・ショップになっている。お金を作ることに情熱を傾けたウィルコックス氏の意志がここかしこに受け継がれているというワケだ。少しがっかり。とはいえ、リビング・ルーム(広いっ!)や階段まわりなど、ショップになっていない静かな場所もある。そして驚いたのは、当時の家具などがあまりにも無造作に置かれていて、「触らないでください」などの注意書きがされていないこと。ショップには興味がないので、歩き流すことにして、人気(ひとけ)の少ない階段まわりやら、リビング・ルームに佇んでみる。
ちょっとしたところにハワイアン・テイストな一工夫があった
そして、75年という時間の流れを感じようと試みる。どうしても、この広大な敷地の周りに広がっていた、さとうきび耕地で働いていた移民たちの姿を思い浮かべてしまう。ウィルコックス氏と移民労働者たち、そして異国からそれらの人々が押し寄せて来たことを受け止めようとしていたハワイの人たち、同じ時代を生きていても、当たり前だけれど、その歩んでいた道は大きく違う。お金に糸目をつけずにこの豪邸を建てたウィルコックス氏も、地べたを這うようにこの地で必死に生きて「送金と帰郷」を夢見た移民たちも、それぞれの”ドリーム”を追っていたんだなぁとか、とめどもないことを考えてみる。そして、そんな”ドリーム”を求めて来た人々に、これまでの暮らしを変えていかざるをえなかったハワイの人々。こういった古い時間を抱いている空間に来ると、それはどんな時代だったのだろうなぁと自然に思いはその時代へと飛んで行く。ハワイの歴史などに興味のある人には、博物館的要素の少ないこの場所は、少し物足りないかもしれない。けれど、タイムトリップ感は味わえる場所である。また、105エーカーという広大な庭をアンティーク・トレインに乗って観覧してまわれる「Train-Hike-Orchard Tours」というのもある。ちなみに「ハワイ50選」という、ハワイ州観光局が選んだ”ハワイの景色50選”にも選ばれている。
カウアイ島の西側に「ワイメア・プランテーション・コテージ」という、さとうきび耕地で働いていた移民たちが暮らしていた跡地をコテージにしている場所がある。「ワイメア・プランテーション・コテージ」と「KILOHANA」。この2つの場所を訪ねて、同じ時代を違う視点から眺めてみるのもオモシロいかもしれない。