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「Open Hand for Peace」 in ヨーロッパ その2

ミノリ・エヴァンス
 前号から引き続いてご紹介するフラのプログラム「Open Hand for Peace(平和に向けて手を広げよう)in ヨーロッパ 2012」は、約6日間。プログラムの3日目、4日目は「マイナウ島」へ出かけて、それぞれ“カヒコ(伝統フラ)”と“アウアナ(モダン・フラ)”のシェアの時間を過ごした。

 マイナウ島(ドイツ)は、ボーデン湖に浮かぶ花の島。島全体が手入れの行き届いた庭のように造られ、島の隅から隅まで、花と緑に囲まれた「ガーデン・アイランド」と呼ばれているところ。一方、カウアイ島もハワイ諸島の中で花と緑が豊富な「ガーデン・アイランド」と呼ばれている。ヨーロッパとハワイ諸島にある2つの「ガーデン・アイランド」のコラボレーションとなったわけである。聞けば「マイナウ島」は、マイナウ島の主だったレンナルト・ベルナドッテ伯爵(2004年没)が、荒れた島に手を入れて、花々、樹木を植え、島全体をひとつの造園として蘇らせ、一般に公開した島らしい。現在ではその美しさに触れに、癒されに、年間約100万人の観光客が訪れる、ボーデン湖最大の観光地となっているそうだ。

船の窓から見えてきたマイナウ島にそびえる宮殿
船の窓から見えてきたマイナウ島にそびえる宮殿
 プログラムの拠点となっていた町フリードリッヒスハーフェンからは船で1時間45分ほど。各自が泊まっているホテルから出航場所までは歩いて10分とかからない場所。けれども、ハワイ各島から60名ほど、それに日本チーム、ヨーロッパ・チームが合体した大グループの大移動はそんなに容易ではない。加えて、フラのプログラムのために用意された楽器や衣装の量も半端ではなく、その10分の道のりでさえ、一時間ほどを要してしまうほどの大騒ぎになってしまう。どちらかというと「四角」く動くヨーロッパ・チーム、若干観光気分になって「ふわふわ気味」の日本チーム、そしてどこに行ってもがっつり「自分たちペース」のハワイチーム。その中をいわゆるスタッフ組(私も一応はその一人)が「船に乗り遅れないで〜!」とか大きな声で叫びつつ、荷物の移動に桟橋を往復して、頭数が揃っているかどうかを確認する。とはいえ、みんな静かに船が来るのを待っているはずもなく、途中から「乗り遅れたら、もう諦めてくださ〜い」という雰囲気にスタッフは包まれてしまっていた。

ハワイ島から参加のクムによるオープニング・チャント
ハワイ島から参加のクムによるオープニング・チャント
 たとえば、私は日本チームの頭数を数えるのが役割りのひとつだった。日本人は全部で10名と少し。把握するのに苦労する数ではまったくない。「いま6人? じゃ、あと誰と誰が来たら全員集合だね」と確認、残りのメンバーが来てみると、今度はさきほどいたはずの中から数人がいない。「なんで?」と聞くと、「なんかね、ストローハットを買いに行ってくるって売店にいっちゃった」という具合。スタッフが忙しく桟橋を往復する間をハワイアンたちが「ガハハ〜」と笑いながら、またフラの曲を口ずさみながら優雅にゆったり歩いていく。「船が着いたらすぐに乗らないと置いてかれてしまうからね〜」と声をかける。「オーッケー!」とにこやかに答えてくれるハワイアンたち。でもそのおしゃべりも歩く速度もまったく変わらず速まりもしない。そのユルさがいいんだよね〜と荷物運びに走りながらも、気持ちにスマイルが浮かんでしまう。

 私たちをマイナウ島へ乗せていってくれる船はその名も「クィーン・カタリーナ」。なんだか旅の要素のすべてが優雅である。そして船の中ではハワイ各島から集まったクムたち、アンティ、アンクルたちの即興エンターテイメント。歌あり踊りあり、楽しいおしゃべりがあり、加えてラウハラ(ハワイの植物)でブレスレットを作るなどのワークショップありと、あっと言う間に2時間弱が過ぎていく。船室の窓の外に流れるのは、湖畔に浮かぶ歴史深い建物や緑濃いヨーロッパの風景、船室の中では「これでもかっ」というほどのたっぷりなハワイアン・ワールド。船外と船内。そのギャップというか、コラボレーション具合が不思議で、そして心地よい。

各島から集まったクムたち
各島から集まったクムたち
 到着したマイナウ島は聞いた通りの「ガーデン・アイランド」。咲き誇る花々や草木、なかには樹齢150年を誇る木などもあり、歴史を刻んだ島の中に何千、何万という色彩が鮮やかに散りばめられた島。カウアイ島が同じく「ガーデン・アイランド」と言われているけれど、そのガーデン具合はまったく異なって、ヨーロッパらしく人の手でちゃんと管理された、計算されつくした美しさである。島の上にある宮殿前でカヒコ、アウアナを踊り、島での時間も心地よく過ぎ去っていく。ヨーロッパでフラは、まだあまり知られている存在ではないらしい。観光客の人たちが大勢、なんだなんだと観て喝采を送ってくれていた。その場にいる人々へ、クムからアロハの意味や、プログラムの意図がシェアされる。今日は気持ち良く楽しい日です。でもこうして気持ち良く踊っているこの瞬間にも、世界のどこかでは穏やかではない日常を暮らしている人がいることを忘れたくないですね。そして、それぞれがたとえそれが気持ちだけでも、平和を祈るということに意識を向けたら、それは確実にパワーになるのです …。

 “平和を祈ること”・・・ 人によっては漠然として聞こえる、「何それ?」と思ってしまう、あるいは胡散くさく聞こえてしまう人もいるかもしれない。けれど、フラを通してたくさんの国の人と会っていると、または(もしかしたら)アメリカに暮らしていると、平和に気持ちを向けることは「大切なこと」だと思う。それは自分の日々の暮らしに感謝する、自分が受け取っているものに感謝することから始まるのだと思う。当たり前のように平和な中にいると、「平和」という状態が当たり前になっている人がたくさんいる。「口に出すのはコッ恥ずかしい」という人もいる、「なに?宗教?」という人もいる(笑)。けれど、平和な世の中を知らずに暮らしている人も、この世の中にはたくさんたくさんいる。表面的な言葉だけで捉えずに、「平和」を祈る自分なりの方法を各自が見つけられたらいいのではないかなと思う。隣でちょっと困っている人に手を差し出す、そんな行為も平和への一歩だ。・・・ と、まぁそんなことを気持ちに置きながら、宮殿の前でフラを踊った。

樹齢150年の木の下でカヒコを踊る
樹齢150年の木の下でカヒコを踊る
 「Open Hand for Peace(平和に向けて手を広げよう)」・・・ その主旨に向けて、ハワイ、日本、ヨーロッパと各地から集まったフラシスターたちで紡いだ時間だった。震災以降、日本でもたくさんの人が、普通に日常を過ごせることの素晴らしさに思いを寄せたように、“普通に、平和に”暮らせていることは、きっと奇跡的に恵まれていることなのだと思う。だから、自分の恵まれている部分にスポットライトをあてて、感謝をし、楽しいな、シアワセだなと思える時間を丁寧に積み上げる毎日でありたいなと、改めて思ったプログラムになった。

  帰りの船ではみんな一日の疲れが出てぐったり、往きとは違って船の中はとても静かだった… というワケはなく、乾杯のアルコールが入って帰りの船はさらにヒートアップ。デッキの上でも、船室でもそれぞれにハワイアン・ミュージックがクムたちによって次々と奏でられ、またまた歌って踊っての船旅となった。ハワイアンたちの「目の前にある、自分が身を置いている時間を出し惜しみなく楽しみきる、みんなを楽しませる」スピリットとエネルギーに脱帽しつつ、プログラムはヨーロッパの町で賑やかに幕を閉じていったのだった。

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