気がつけばもう4月。時間の経つ早さに驚くばかりです。
日本はもう満開の桜も散り、春を迎えているのでしょうか。
ワイルアの我が家では朝夕はまだまだ冷え込む日も多く、「寒い、寒い〜」と言いながらベッドを抜け出しています。それでも空が明るくなる時間がどんどん早くなり、陽が暮れるのがどんどん遅くなって、日々、夏に向かっているのだな〜ということを太陽が教えてくれます。ハワイでは”春”を実感することはあまりありません。厚めのスエットパーカを着込んで「寒い〜」と言っていたと思ったら、「暑い〜」とタンクトップを着ているという風に、「バーン!」とドアを開けるように季節は夏になります。
ここ二ヶ月ほど、カウアイの家を留守にしてメインランドに行っているアンティ・ベティのお家に通っています。我が家とアンティ・ベティの家は車で5分ほどの距離。アンティ・ベティが飼っているイヌのメレの散歩が私たちの役目です。メレは生まれて5年目のメスのテリア。大きな中型犬と言ったところです。イヌ好きな人はご存知なことですが、イヌにはそれぞれ性格があり、なかには個性的なイヌもいます。人間と一緒ですね。メレは比較的、警戒心の強いイヌで誰にでもすぐになつくという感じではありません。毎週一度のクプナ・フラクラス(クプナクラスは年配のフラ・ダンサーのためのレッスン。私はそこのお手伝い。クプナのメンバーではありません〜。←ここ、強調。笑)がアンティ・ベティのお家であるのですが、「メレ〜、メレ〜」と呼んでもなかなかこちらには来ず、ちょっとした物音でも走って自分の部屋に戻っていくような女の子です。そういう警戒心の強さも手伝ってか、なかなかコミュニケーションが取れないイヌなので、毎週レッスンで会ってもお互い距離を縮めることなくこれまでは過ごしてきました。5年もの間、毎週のように顔を合わせていたのにも関わらず、です。
そのメレのお散歩係になって、最初は「なつくかな〜」と心配していたものです。もうひとつの課題は、メレが男性を大嫌いなことでした。なぜだかは分かりませんが、なついたとしても女性のみ、男性には近寄ろうともしません。なので一緒に散歩させるウォーレン(ダンナさんです)とコミュニケーションが取れるのかな〜と心配していました。その心配通り、最初は散歩用のリーシュを見せるとこちらには来るものの、私たち…とくにウォーレンへの警戒心は予想以上でした。それでも毎日お散歩に行って、エサをあげているうちにどんどん距離が縮まって、今ではとても仲の良いファミリーです。アンティ・ベティが留守の間、ケア・テイカー(お家をお世話する人)として泊まっている私のクム・フラ、アンティ・プナとだんなさんのアンクル・カラニ、そして2人の姪っ子で私のフラシスターでもあるカルナが、「夕方になると玄関ドアの前で2人が来るのをずっと待ってるよ〜。2人が帰ったあともドアの前でずっと見てるよ〜」と言い、2人が来るとメレの様子が全然違う、活き活きするのだと教えてくれました。今ではメレの一番のお気に入りはウォーレンです。ウォーレンが現れると、メレがジャンプして彼のまわりをしっぽをクリクリ振って、飛び回っています。(笑)
5年もの時間を、ただ”アンティ・ベティん家のイヌ”だったメレが、たった二ヶ月でとても大切なファミリーになりました。人と人ともうそうだけれど、動物たちとも、命と命はみんな不思議なご縁で結ばれているんだな〜と思います。自分の日々の時間にいなかった誰かがふとした瞬間から特別な存在になることもあれば、長い年月一緒にいたパートナーとふとしたことでお別れすることもあります。そういったいろんな”ご縁”を大切に紡いでいくことは、私にとって暮らしの中でもっとも大切にしていたいことのひとつです。
もらったティーリーフは水に浸けて、根が出るのを待つ最中。
間もなく、庭に植えられそうです |
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ある日のことです。メレの散歩をしている途中で、美しい紅いティーリーフがわさわさと植えられているのがいつも気になっていたお家の前を通った時に、ちょうどその家の人がティーリーフの手入れをしているのに出くわしました。
「アンクル、その切ったティーリーフは捨てちゃうの?」
と、声をかけると、
「これ、株分けしてるんだよ。もっと増やそうと思って」
と言い、どうしてそんなこと聞くの? と尋ねられました。アンクルの紅いティーリーフをいつもきれいだな〜って見ていて、捨てちゃうんだったらもらってうちの庭に植えたいと思ったのと言うと、「そっか、ちょっと待ってろ」とアンクル。そしてハサミを手にして、庭の横手にまわって、「ここが一番きれいだからな」と一番きれいで立派なティーリーフを選んで5枝ほどポンっとくれました。「何に使うんだ?」というので、「フラの儀式の時のレイを編むから、庭に紅いティーリーフがほしかったの」と言うと、「そうか、フラか!」と言って嬉しそうに笑ってくれました。一番きれいなティーリーフを切って、ポンっと差し出してくれる…とてもカウアイらしいな〜と思いました。カウアイでの暮らしでは、ほんとうによく経験することですが、多くの人が自分が差し出せるものを、そして差し出す時には一番良い部分を、さりげなくポンっと差し出し合います。ここの暮らしに慣れてきて、そういうことが当たり前になって、一回一回「感動」することはなくなり、ちょっと感度が鈍くはなってきている私ですが、でもそういう環境に身を置いていることはやはりシアワセなことだな〜と思います。お互いが気持ちよくなるように接し合う、カラダやココロに染み込んで”当たり前”になった思いやりは、受け取る側にとっても重荷になりません。自分もまたそういう機会があれば、一番良いところを誰かその時の相手に差し出すだけです。
考えてみれば、私たちはそれぞれとても多くの差し出せるものを持っています。例えば言葉。行動。笑顔。直接手に取ったり、触ったり、目で見たりできなくても、私たちはそれぞれとてもたくさんの”差し出せるもの”を持っている。そういうことを心に置いて、一番良いところを惜しみなく差し出せる自分でいたいなといつも願っています。
さて今日もメレは、いまから6時間後には玄関ドアの前で私たちがやってくるのを待つのでしょう。今日もワイアレアレの麓の夕方のひとときを、新しい家族メレと楽しみたいと思います。
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