花はハワイのイメージを形作る重要な要素のひとつです。そこでハワイの代表的な花を取り上げ、ハワイの歴史や文化、あるいは自然との関わりをお話ししましょう。
ハワイの植物はすべてが島の誕生からそこにあったわけではありません。火山活動が落ち着き、植物の生育条件が整ったとき、渡り鳥の体や糞とともにやってきたもの、海流にのって海を漂いながらやってきたもの、あるいは漂流物に付着してやってきたものなど、さまざまな手段でハワイの島々にたどりつきました。それらは大きく次の4つに分けて考えられます。
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ハワイにだけ見られるもので、人間の到来以前からある植物 |
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ハワイだけでなく他の地域にも見られる植物で、人間の到来以前からある植物
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6世紀から13世紀にかけて入植したポリネシア人が持ちこんだ植物 |
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18世紀後半以降、主に西欧人たちによって持ちこまれたもの |
島々に人が到来する以前からあった(1)と(2)は固有種と呼ばれ、人が持ちこんだり、人が住みついた後に登場した(3)と(4)は帰化種と呼ばれます。ハワイでよく知られた花が、必ずしも昔からあったわけではないということです。それぞれどのような背景を持っているのか、まずはよく知られた花を通してハワイの自然と文化を探ってみることにしましょう。
◆ハイビスカス(アオイ科フヨウ属)
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ハイビスカス・アルノティアヌス(コキオ・ケオケオ)
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最初に紹介するのは、ハワイ州の花としてもっともよく知られたハイビスカスです。ハイビスカスは学名(ヒビスクス)がそのまま花の名前になったもので、ハワイ王朝時代の昔から園芸植物として愛されてきました。州花ということもあって、ホノルル、とくにワイキキ地区では至るところでさまざまな色や形のハイビスカスをみかけます。ハイビスカスは一日花ですから、朝咲いた花は夕方には落ちてしまいます。そこかしこにあるということは、清掃もまた大変ということですね。
園芸種のハイビスカスの元となっているのは、ハイビスカス・コキオ(ハワイ名:コキオ・ウラウラ)というオレンジや真紅のハイビスカス、あるいはハイビスカス・アルノティアヌス(ハワイ名:コキオ・ケオケオ)という白いハイビスカスなど、わずか5、6種類です。これらの原種に、ブッソウゲやフウリンブッソウゲなどをかけ合わせた結果、今日5,000種以上という園芸種が誕生しました。原種は園芸種のような派手さこそありませんが、園芸種にはない、甘い香りを漂わせます。いまでは生育地はきわめて限られていますが、ホノルル市内の植物園で観察できます。
◆州の花
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ハイビスカス・ブラッケンリッジー(マオ・ハウ・ヘレ)
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州花となっているハイビスカスはハイビスカス・ブラッケンリッジー(英名:native
yellow hibiscus、ハワイ名:マオ・ハウ・ヘレ)で、黄色の花をつけます。一般にハイビスカスは水を多く必要とする花ですが、ハイビスカス・ブラッケンリッジーは乾燥地帯を好み、他のハイビスカスとの交配もできません。
ハイビスカスが州花となったのは1923年ですが、当初は真紅のハイビスカス・コキオが州花でした。しかし、きわめて希少な種で観察する機会も稀なため、1988年にブラッケンリッジーを州花に変更したのです。こちらの方はハワイだけでなく、メインランドでも広く栽培されています。
◆ハイビスカスの仲間たち
ハウ(ハイビスカス・カリフィラス)は、根がジャングルジムのようにもつれあって地を「這う」のが特長です。ハウも一日花で、朝に明るいクリーム色の花を咲かせると夕べには赤く染まって短い一生を終えます。カウアイ島のワイルア川沿いには見事な群生が見られます。よく知られているハイビスカスの仲間には、この他にレイの素材として知られるイリマ、ワタ(綿)、ミロ、オクラなどがあります。
◆花飾りとティー
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壁面に大きく描かれた花をさした女性(カウアイ島カエナ)
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ハワイではときおりハイビスカスなどの花を髪にさしている人をみかけます。何気なくさしているようにみえるでしょうが、未婚の場合は右に、既婚の場合は左にさすという決まりがあります。また、女性だけでなく男性も花をさします。
花は観賞するものと思われがちですが、ハイビスカスの一部(※ローゼル種)は飲用にも用いられています。よく知られているのはハイビスカスティーですが、これはハイビスカスの花びら(花冠)とがく(萼)をお茶にしたものです。ハイビスカスにはビタミンCが多く含まれており、疲労回復や血をきれいにする作用があると言われており、スポーツ選手で愛飲する人も少なくありません。
次回はプルメリアとブーゲンビレアを取り上げます。
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