プルメリアの生い立ち
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白地基調のプルメリア・オブツサ |
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赤いプルメリア・ルブラ |
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プルメリア(インドソケイ)はキョウチクトウ科の樹木としてハワイ諸島のどこでもよく見られます。原産地は西インド諸島からメキシコ、ベネズエラにかけた熱帯地域ですが、今日では沖縄やシンガポールなど、世界各地の温暖な地域でもよく見られます。
ハワイではレイの素材として知られていますが、じつはよく用いられるようになったのは比較的近年のことです。というのも、プルメリアはパンチボールなど、墓地でよく見かけるように、本来は死人に手向ける花として知られていたからです。これは欧州でも同じで、英名を
Temple Tree と言います。ですから、今日でも、お祝い事などにプルメリアの花を贈るのはカプ(タブー)なのです。しかし、その甘く芳しい香りと、魅惑的な花の人気は高く、今日見られるようにレイの素材として欠かすことができない存在となりました。名前の由来は、宣教師であり植物学者でもあったフランスのシャルル・プリュミエにちなんだものです。ホノルルのパンチボールには見事な樹林があります。
プルメリアの個性的な横顔
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枝振りは先端まで太い。その先に花をつける |
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プルメリアは黒くがっしりとした枝を迷路のように伸ばし、その先端に花をつけます。花を落とすと、この植物が意外にゴツゴツとした感じであることに驚かされるでしょう。枝は先端まで太く黒く、バリケードのように縦横に枝を広げますし、葉も巨大です。また鞘状の実も巨大で、花の可憐さとは好対照です。
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鞘をつけたプルメリア |
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プルメリアは園芸種としてハイビスカスと並んで種類が多く、さまざまな形状、色合い、サイズがあります。もっともポピュラーなものは、花の中心部がほんのりと黄色い、白のプルメリアでしょう。ワイキキの大通りをはじめ、リゾート地の定番ともなっている品種です。
キョウチクトウ科の木はたいてい白い樹液を分泌します。この液のなかにはアルカロイド系の物質が内包されていて、医療に用いられたりしますが、毒性が強いので、肌につけないよう気をつける必要があります。
プルメリアは大変生命力が強く、折った枝から葉を取って切り口部分を数日乾かし、日当たりの良い場所に埋めておくだけで発芽します。ただし、低温には弱いので日本では室内で育てられる例が多いようです。プルメリアの仲間には、キョウチクトウやアラマンダ、アデニウムなどがあります。
庭先を彩るブーゲンビレア
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紫色の庖に包まれたブーゲンビレアの花 |
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ブーゲンビレア(オシロイバナ科、別名イカダカズラ)はブラジル(ペルー説もある)が原産の花で、赤や黄、紫など、さまざまな彩りを楽しめます。よく間違えられますが、外側に三枚ある三角形のものは苞(ほう)。そのなかにある小さな白い三つが花です。苞は紙のように薄く乾いた感じのため、英語では
Paper Flower と呼ばれています。写真のように、花は通常2つが先に咲いて、残りのひとつは少し遅れて咲くことが多いようです。茎は細くツル状で、棘があります。ハワイでは通年咲いていますが、基本的には冬季に咲く花です。
花名の由来は、探検航海が盛んだった18世紀にフランスのルイス・デ・ブガンビルがブラジルのリオ・デ・ジャネイロで発見したことによるとされていますが、イカダカズラ、テリハイカダカズラ、それにパーベナなどを交配して作られたものです。
「ハワイの花」を考える
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密生して咲くのが特徴的なブーゲンビレア |
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庖のなかには3つの花が咲く |
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ハイビスカスのところでも書いたように、一口に「ハワイの花」と言っても、固有種、帰化種、外来種など、多くの出所が混在しているところが、ハワイの自然の特徴とも言えます。ハイビスカスには固有種がありますが、今回紹介したプルメリアとブーゲンビレアは、いずれも1800年代に入ってハワイに持ちこまれたもので、園芸種、あるいはプランテーション用の植物と位置づけられます。両者ともにハワイ名がないではありませんが、基本的に西欧人が西欧的発想で持ちこんだものですから、ハワイとの歴史的関連を考える対象ではないと言えます。
とはいえ、今日のハワイのイメージを大きく支えているという側面もありますし、それが長くつづけば、いずれハワイの歴史のなかに組み込まれるということにもなります。たとえばオアフ島には
Gathering Island という愛称がつけられているように、世界のさまざまな動植物がこの島々のなかで新たな位置を占めていくというのも、ハワイの歴史の一面であることを忘れてはいけないでしょう。
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