火山と溶岩(1) Volcano &
Lava
近藤純夫 |
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煙を上げるプウオーオー |
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海に落ち込んで激しい水煙を上げる |
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噴火に伴う溶岩
溶岩と聞いて何を思い浮かべるでしょう。先日もイタリアのエトナ山が噴火し、大量の溶岩が流れ出したというニュースが流れました。日本でも雲仙や大島、三宅島など、多くの火山が噴火しています。その大半はなにがしかの災害を伴い、人が犠牲になったり集落にダメージを与えたりします。つまり、火山の噴火と、それに伴う溶岩の流出はいつもマイナスのイメージで人々の頭にこびりついていると言えます。
ところがハワイ島では少し事情が異なります。かつてのハワイ人は火山の噴火が始まると、ランチを片手に溶岩見物に出かけたとさえ言われています。これはあり得る話なのでしょうか? その前に、溶岩とはなにかを確認してみましょう。
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マグマと溶岩
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固まった溶岩の下を流れる高温の溶岩 |
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地球の地下およそ100kmから200kmの範囲を上部マントルと呼びますが、マグマはこのなかで発生します。その中身は主に橄欖岩で、岩石を構成するさまざまな物質のうち、融けやすいもの(珪酸、酸化アルミニウムなど)は液体となり、融けにくいもの(酸化マグネシウムなど)は結晶物質、それ以外は火山ガスとなります。このうち、液状となったものが徐々に集まってマグマとなります。
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溶岩流が噴き出す火山ガス |
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生成されたマグマは周囲より比重が小さいので上昇しはじめます。しかし、地表を覆う地殻の密度はマントルより小さいので、マグマが地殻周辺に到達して周囲の密度とおおよそ等しくなると上昇は止まります。そこにマグマの溜まる場所が出現しますが、これをマグマ溜り(ホットスポット)と呼びます。その深さはおよそ地下2kmから4kmと言われています。マグマ溜まりのマグマが火山活動などを通して顔をだしたものを溶岩と呼びます。ハワイ諸島はひとつのマグマ溜まりから噴出しつづけた溶岩によって誕生しました。(※この辺のことは後日、章を改めて説明します。)
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火山ガス
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地下で活動を続けるハレマウマウ・クレーター |
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火山から噴出するものはいくつかあります。日本でもおなじみなのは火山ガス。これは火口や岩の割れ目、あるいは溶岩溜まりなどから発生します。ガスは真っ白なものもあれば、黒に近いものもあります。白いガスは水蒸気ガスで、色のついたものは火山灰などが混ざったものですが、たいていの火山ガス(80%以上)は水蒸気。それ以外にも二酸化炭素、塩化水素、フッ化水素、窒素、水素、一酸化炭素、メタン、アンモニアなど、実に多くのガスが発生します。
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マウナウル近くの火山ガス活動 |
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溶岩見学の場所として有名なハワイ島キラウエア火山の南麓海岸線では、溶岩の見学に気をとらわれると、大変なことになります。現在、噴火をつづけているプウオーオーでは溶岩の噴き出し以上に、膨大な噴煙を上げています。噴煙はたいてい南に流れていきますが、ときおり南西に向かって流れます。そうなると、火山ガスに巻かれた人は、そのなかにある刺激物質の働きによって咳き込んだり、涙が止まらなくなったり、ひどいときは呼吸が困難になったりします。視界を遮られるほど煙が広がっているときは注意した方がいいでしょう。
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溶岩流の末端部 |
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溶岩の性質
ハワイでは火山の噴火活動によって溶岩が噴出します。ちなみに、マグマが地表に放出され、それが冷え固まるまでの溶た状態(溶融状態)を溶岩といいますが、冷え固まったものも同じように溶岩と呼びます。この溶岩は噴出直後には摂氏1000度から1200度にもなります。ただし、温度や性質は、マグマを構成する岩石と鉱物の割合によって大きく異なります。
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ひび割れた部分から溶岩が顔を出す |
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火山岩はふつうその内部に含まれる珪酸(二酸化珪素,SiO2)によってその呼び名が変わります。溶岩流中の二酸化珪素の割合が40〜52%のものは玄武岩、52〜55%のものを玄武岩質安山岩、55〜63%のものを安山岩、63〜70%ものをデイサイト、70〜76%のものを流紋岩と呼びます。玄武岩質の溶岩流では摂氏1050度から1200度、安山岩質の溶岩流で摂氏1000度から1100度というように、珪酸の含有量が少ないほど高温で、水っぽい(流動性に富んだ)溶岩となります。ハワイ島の火山から噴出する溶岩はすべて玄武岩質溶岩です。水っぽい溶岩は爆発を伴うことがきわめて少なく、実際の川のように流れます。そこでかつてのハワイの住人は、溶岩流を恐れることなく、この流れを眺めに出かけることができたというわけです。
次回は冷え固まった後の溶岩の話です。
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