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ハワイミツスイの祖先とされるハウスフィンチ |
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オヒアレフアの蜜を主な餌とするアパパネ |
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ハワイミツスイはハワイ固有の鳥と言いましたが、その祖先は北アメリカ北部のハウスフィンチ(スズメ目アトリ科ヒワ亜科マシコ属)だと言われています。分類学上ではカナリアの遠い親戚です。起源は350万年ほど前にさかのぼりますので、地質年代がそれより古いカウアイ島やニイハウ島、あるいはレイサン島など北西ハワイ諸島に端を発すると考えられています。ハワイ諸島には鳥の天敵がいませんでしたから、彼らは自分たちのテリトリーを広く持つ必要がなく、特定の場所に落ち着き、そこに自生する植物を餌にしてきました。
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オヒアレフアやロベリアの蜜を餌とするイイヴィ |
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島ごとに亜種が生息するアマキヒ (写真はカウアイ島のもの) |
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その結果、花の蜜を吸うものはくちばしが長く彎曲し、樹皮の昆虫をつまみ出して食べるものは長く彎曲しているが下のくちばしが上よりも短くなりました。また、木の芽をこじ開けて食べるものは下のくちばしが極端に短くなり、固い実を食べる種類は祖先のハウスフィンチと同じく、万力のように短くて太いくちばしを持つようになりました。このように、生物が異なった環境に適応し、比較的短い期間に形態や生理的に分化し、さまざまな系統に分岐していく現象を適応放散と言います。
ハワイミツスイと並んで有名な適応放散の例としてガラパゴス諸島のダーウィンフィンチがいます。その名の通り、進化論を唱えたダーウィンによって発見され命名された鳥です。ちなみに彼はハワイミツスイについても調査をしています。
200年ほど前には50種近くが生息していたとされていますが、現在は13属約23種ほどになっています。この数は生存している可能性がゼロではない、という程度の意味で、実際には10種を切るところまで減少しています。彼らの生息環境は日々悪化しているのです。
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パパネやイイヴィが生息するオヒアの森 (カウアイ島) |
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非常に長いクチバシを持つアキアロア |
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ハワイミツスイがこれほどまでに激減した背景は三つあります。ひとつはハワイ王朝がこの鳥の羽を取ってガウンなどを作ったためです。毛を抜かれたのは主にオオ(ほぼ絶滅状態)の黄色い羽根と、他のハワイミツスイの赤い羽根です。彼らはパパラケパウの粘着性のある種子をトリモチ代わりに使って鳥を捕まえ、羽根を取ってから逃がしましたが、脚にトリモチが残っていれば生きていけませんし、そうでなくても小鳥はストレスですぐに死にます。二つ目は白人がもたらした鳥に感染するマラリア蚊です。これまでに二度大規模なマラリアが発生し、膨大な数の鳥が死にました。三つ目は生息環境の激減です。特定の植物に依存しているハワイミツスイは、たとえわずかでも環境が変化すれば影響を受けますが、島の外から人が来て人口が増え、大規模なプランテーションが開発されると、低地に生息するハワイミツスイは大きな打撃を受けたのです。
ハワイのように外界からの影響が極端に少ないところでは、植物はトゲを持つことをやめ、鳥たちはテリトリーを気にすることなく特定のエサを手に入れることができました。ハワイミツスイの進化は、ハワイという土地だからこそ起こり得たことと言えるでしょう。しかし、その環境があだとなり、彼らは絶滅の道を進んでいます。現在も保護と繁殖のためにさまざまな努力が払われていますが、ハワイミツスイが将来とも生き残れるのはわずか3〜4種だという説もあります。
次回は「鳥たちの世界」の第2回としてネネ(ハワイガン)の話をします。
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