1949年にハワイ州の州鳥となったネネ(Hawaiian goose)は北米に祖先を持つと言われています。体長は55cmから75cm、体重は2キロ前後になります。ネネは一度に5個から8個の卵を産み、30日ほどで孵化します。この間、オスはかいがいしく卵の世話をします。ちなみに、ハワイ名のネネは、ネーネーという鳴き声が由来となっています。
ネネは比較的人見知りしない性格ですが、この性質はマングースにとっては餌として好都合でした。人間は畑を荒らすネズミを駆除するためにマングースを持ちこんだのですが、マングースは昼行性なのに対し、ネズミは夜間にしか活動しないので、マングースはつねに餌に不足していました。羽根がかなり退化し長時間飛ぶことのできないネネは地上での生活が主体となっています。それはマングースの餌としては好都合でした。しかも、ネネは火山大地に誕生した小さな洞窟や地面に直接卵を産むので、マングースは手間のかかる親鳥ではなく、卵を狙いうちしたのです。その結果、1940年代には個体数がわずか50羽と絶滅の危機に瀕してしまいました。
厳密に言うなら、1951年にネネは絶滅しました。しかし、個人が飼育していた約30羽が生き残ったいたため、これらを繁殖して今日に至っています。ネネはカウアイ島ではワイメア渓谷のコケ・エ周辺、ハワイ島ではマウナロア山麓やキラウエア周辺、フアラライ山の山麓など、マウイ島ではハレアカラ周辺に生息しています。オアフ島ではワイメア植物園やホノルル動物園で飼育されています。現在、解き放たれて半野生化したネネはいずれも標高の高いところにいます。理由は、その高さまではマングースが侵入してこないからです。この努力が実り、現在では2000羽とも3000羽とも言われるほど生息数は増えています。
しかし、よい話ばかりとはかぎりません。ネネはきわめて限られた集団から人工的に繁殖したため、種の多様化に対応していないのです。そのため、ある1羽が致命的な病に罹ると、他のすべてが同じ病に罹る可能性があるということです。もうひとつの問題は、野生状態で個体群を維持できるほどの幼鳥が誕生していないという事実です。野生に帰しても、子を産むことなく老衰して死ぬことを繰り返すのなら、人間が繁殖させて放鳥するという行為をいつまでもつづけなければならないことになります。この問題を解決するためには、生息環境をしっかり整えてやることが大切ですが、マングースや野ブタ、野良猫、野犬などの駆除は簡単ではありませんし、ネネに適した森の復元も長い時間をかけて行わなければならず、息の長い作業が必要とされています。
次回は「マウナケアと天文台」と題し、その第1回目として、マウナケアに天文台が建つまでをお話します。