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マウナケアと天文台 (2)
近藤純夫

冠雪のマウナ・ケア山頂近くに天文台群がみえる

 今年のマウナ・ケアは写真でもわかるようにずいぶん雪が多いです。ハワイの気候は少しずつ寒くなっている気がします。安定した貿易風のおかげで高所の晴天が約束されていたマウナ・ケアの山頂付近なのですが、ここ数年は曇天が増えているとのことです。世界的な気象変動の影響を、絶海の孤島であるハワイ諸島も受けているということかもしれません。

すばる望遠鏡の主鏡

 とはいえ、いまでも地球上でもっとも天体観測に適した場所のひとつであることに変わりありません。ここには1968年に最初に出現した口径わずか60cmのハワイ大学の天体望遠鏡を皮切りに、70年代以降に建設されたハワイ大学の第2天文台、カナダ・フランス・ハワイ大学連合、イギリス・オランダ・カナダ連合、イギリス、カリフォルニア大学、アメリカ国立天文台、アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア・チリ・アルゼンチン・ブラジル連合が作った口径8.1mのジェミニ天文台、NASAの赤外線望遠鏡、オーストラリア、それに日本のすばる天文台など、13の天文台が軒を並べています。なかでもケック天文台の望遠鏡は口径10mもあります。ただし、この望遠鏡は単体ではなく、36個からなる6角形の鏡の集合体です。


すばる天文台(前)とケック天文台(後)

 では、単体の鏡で世界最大のものはどれか? それは日本のすばる天文台にある望遠鏡で、口径が8.2mあります。ただし、これほど巨大になると、自らの重みで歪みが生じてしまい、高度な観測には耐えられません。そこですばるの主鏡には厚さを押さえた鏡が使われているのですが、そのままではたわみが生じるため、アクチュエーターという電子制御されたつっかえ棒のようなものを261本もレンズの下に張り巡らせ、一枚のレンズを支えています。


プロジェクトごとに装置を入れ換える

 すばる天文台は良好な視界と高い精度を得るために、天文台の形状を円柱状にしたり、温度差によって生じる気流を防ぐために建物内と外の気温を調整したり、さらには建物内の温度を完璧にするため、研究者といえども観測中には望遠鏡のある場所には入れないようにしたり、望遠鏡部分の施設をリニアモーターカーと同じ原理で磁気浮揚させて微細な振動を防いだりと、数え切れないほど多くの工夫や新技術が駆使されています。


ヒロ市内にある研究実験棟

 1991年4月、文部科学省は国立天文台望遠鏡の建設をハワイ島で開始しました。1992年6月にマウナ・ケア山頂での工事を開始。それから1年をかけて基礎工事を行い、その後、1993年4月に望遠鏡本体の組立が始まりました。翌年7月に主鏡材が完成し、8月に主鏡の研磨を開始。1995年4月に望遠鏡本体部分の製作がいったん終了すると、仮組立が行われました。1998年9月に主鏡の研磨が終了し、それが山頂に持ち上げられて設置されたのが同年の11月。そして1999年1月にファーストライト(試験観測開始)が行われました。

プレアデス星団(すばる天文台の葉書より)

 すばるは山麓のヒロに研究実験棟があり、近い将来、この施設から遠隔操作ですべる望遠鏡を使う計画を立てています。また、いずれは三鷹の国立天文台本部からの遠隔操作も視野に入れています。光を集めて結ばれた像はすべてデジタル情報として処理されますから、必ずしも現場(マウナ・ケア山頂)での解析を必要としない研究もあるからです。ちなみに、研究実験棟には、すばる望遠鏡の大量データを高速処理するスーパーコンピュータ(富士通製)があります。

 マウナ・ケアは日没以降、屋外に光が漏れるのを禁じていますので、関係者以外はすべて下山しなければなりません。夕陽を受けて黄金色に輝く雲海を堪能したら、3000mほどのところにあるオニヅカ・センターまで降り、すばる(プレアデス星団)の輝きを堪能しましょう。

次回はビショップ博物館についてお話しします

>> 過去の特集は、こちらでご覧いただけます。


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