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コーヒーバッグに収められたコーヒー豆 |
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コーヒーの木はエチオピアが原産ですが、ハワイと言えばコナ・コーヒーと言われるほど、ハワイのコーヒーは世界に知られるようになりました。コーヒーの木(コーヒーノキ)はアカネ科のコーヒー属で多くの種があります。なかでもアラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種の3種がよく知られています。コナ・コーヒーはアラビカ種ティピカ亜種の植物で、樹高は4メートルから7メートルほどになります。コーヒー農園では剪定をおこない、収穫に都合のよい樹高2メートルから2.5メートル程度に高さを調整しています。
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収穫を待つコーヒー並木 |
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ハワイのコーヒー史をひもとくと、最初の木がホノルルに植えられたのは1813年であるという記録があります。しかし、収穫を得るにはいたりませんでした。1825年、当時のオアフ島知事は、急逝したカメハメハ二世と女王の亡骸を運ぶイギリスの軍艦に乗船していました。船がブラジルのリオデジャネイロに寄港した際、彼が持ちこんだコーヒーが、今日に至るコナ・コーヒーの源です。このコーヒーはコオラウ山脈の麓にあたるマキキ渓谷とマノア渓谷に植えられましたが、やはりはかばかしい結果は得られませんでした。ちなみに、この地区ではいまも当時のコーヒーの木を見ることができます。
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焙煎中のコーヒー |
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3年後の1828年、サミュエル・ラグルズというキリスト教の宣教師が観賞用にと、これらの木をハワイ島のケアラケクア地区に移植しました。順調に生産量を増やしていったコーヒー産業でしたが、サトウキビやパイナップルと同じように、国際競争のなかで価格は下落し、経営はしだいに困難になっていきました。そこで当時の白人経営者は作業の大半を評判のよい日系人にまかせるようになりました。経営は次第に回復し、20世紀初頭にはコーヒー園の80%が日系人の手によるものになったほどです。そして今日、世界でもトップクラスのブランドとして定着しました。以前にも書きましたが、作家のマーク・トゥエインはコナ・コーヒーをこよなく愛し、新聞などでしばしば紹介しました。アメリカ本土でコナ・コーヒーが注目された一端として、彼の功績は小さくないでしょう。
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ケアラケクア周辺のコーヒー農園を遠望する |
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コーヒーの木は日陰を好みますので、溶岩地帯のような陽射しが注ぐところで発芽したり育つことはありません。また、冷涼な気候と、雨が多いこと、そして、ある程度の寒暖の差なども必要となります。これらの環境を満たす場所は、標高300メートルから800メートル前後のマウナロア山麓にあり、南北に長くコーヒー農園が広がっています。
コーヒーの小さな白い花はジャスミンに似た甘い香りを放ちます。花は春先に一斉に開き、遠目に雪をかぶったようにみえるため、コナ・スノウとかスノー・ブロッサムとも呼ばれています。ただし、花は2〜3日でしぼみます。また、コーヒーチェリーとも言われる熟した赤い果実はサクランボに勝るとも劣らない甘さがあります。
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収穫をし終えたばかりのコーヒー |
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豆の収穫は9月から翌年2月にかけて行われます。コーヒーを大量生産する農園では収穫は機械によるものが多いですが、コナ・コーヒーはいまも手摘みが主流です。一本のコーヒーの木からは3キロから5キロの果実が採れますが、これを精製してコーヒー豆にすると5分の1程度になります。ちなみに、カップ一杯分のコーヒーを作るためには、70個から80個の豆が必要となります。コーヒーの木になる実は、平均3000個かそれ以下ですから、40杯に満たない量しか採れない計算になります。
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豆を乾燥させる過程 |
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コーヒーには品質表示がありますが、国によって異なります。ハワイではエクストラファンシー(スクリーン#19)、ファンシー(スクリーン#18)、ナンバー1(スクリーン#17〜16)、さらに、プライム、スリーエックスというグレードがあり、コナ・コーヒーは上の3グレードに限られています。コーヒー豆はひとつの果実のなかでふたつの塊が核を作っていますが、まれに一方の発育が止まり片方だけが発達して粒状になることがあります。前者をフラットベリーと呼ぶのに対して、こちらはピーベリーと呼ばれ、エクストラファンシーと同じランク付けがなされています。
*スクリーンとはコーヒー豆の粒の大きさを表現するもので、数字が大きな程大粒であることを示します。
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鈴なりに実をつけたカウアイ島のコーヒー |
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コナ地区には多くのコーヒー農園が集まっていますが、なかでもグリーンウェル農園がユニークです。農園に隣接する石造りの当時の家はコナ・コーヒーの歴史博物館となっており、コーヒー以外にも、19世紀から20世紀にかけての当時のハワイの産業を俯瞰できるようになっています。
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波打つのが特徴のコーヒーの葉。右は花 |
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現在ではマウイ・コーヒーやカウアイ・コーヒーも人気があります。コーヒーを購入するときは、同じブランドの同じグレードであれば安いほうがいいし、また、豆の状態よりパウダーの状態の方が楽だと思う方も多いでしょう。しかし、豆は時間によって確実に味が劣化していきます。その豆がいつ焙煎されたかということが重要なのです。ですから、コーヒーの産地へ出かけたときは、できるだけ焙煎したての新鮮なものを購入することをお勧めします。またパウダー状態にあると、どれほど真空パックをしていても香りは少しずつ飛んでいきます。できるかぎり豆を購入し、飲む直前にひくことを心がけましょう。袋を開けたら真空に近い状態を保てるバックか缶に入れ、冷蔵庫で保管するとよいでしょう。
次回はグァバの話です。
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