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熟しはじめた(コモン)グァバ |
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ハワイの野山を歩くといろいろな植物に出会えます。おそらくだれもそのすべてを言い当てられないほど多くの植物があり、驚くべきことに、その種類はいまなお増加中です。そうした多彩な植物群のなかにあってよく目につくもののひとつにグァバがあります。ハワイでは、グァバをブレンドしたジュースはパッションフルーツともによく知られていますが、フィールドではそれ以上に大きな勢力を持ち、至るところで目にします。
グァバの木は樹皮がつやつやとしたマダラ状なので、果実をつけていなくても比較的簡単に見分けられます。グァバはオヒアやユーカリと同じフトモモ科の植物で、和名をバンジロウ、あるいはバンザクロと言います。18世紀末にハワイ諸島にもたらされました。このグァバは、英語ではGuava(あるいはCommon
Guava)と呼ばれます。グァバの仲間は100種近くが確認されていますが、ハワイでは(コモン)グァバとともに、ストロベリーグァバ(テリハバンジロウ)とイエローストロベリーグァバ(キミノバンジロウ、ハワイ名はワイアヴィ)がよく知られています。
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完熟した(コモン)グァバ |
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(コモン)グァバの種名はguajava。これはスペイン語のguayabo(果実)に由来しています。ちなみに、3つのグァバの属名にはいずれもザクロを意味するPsidiumが付けられています。その起源は紀元前800年のインカにまで遡ると言われています。グァバはオヒアの仲間ですので、オヒアレフアと似たブラシのように長く白い雄しべをつけます。果実は楕円形のものがよく知られていますが、この他にも洋なし型や球形のものがあります。
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林床に落ちたグァバとショウジョウバエ |
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(コモン)グァバとイエローストロベリーグァバは、成木になると8〜10mの高さになります。一方、ストロベリーグァバは平均3〜5mの灌木です。いずれも非常に繁殖力が強く、しかも密生しますので、他の植物を駆逐してしまうことが少なくありません。そのため、地域によっては有害植物に指定されています。いずれのグァバも果肉のなかに多くの種が入っており、これが動物たちや、ときに人間によって散布され、繁殖地域を拡げています。地元ではこれを生食し、口に含んだ後に種だけをはき出しますが、これはマネをしないほうがいいでしょう。グァバの拡散を助長するだけです。熟して落ちた果実にはたちまちショウジョウバエをはじめとする多くの昆虫や動物がやってきて種を拡散させます。
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ストロベリーグァバと花 |
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味はコモングァバが乳酸の香りが強いせいもあって、完熟していないとそれほど美味しいとは感じないでしょう。完熟したストロベリーグァバは名前のようにイチゴとグァバの中間のような味わいがあります。酸味と甘みが同居していて、クセになる味と言えなくもありません。イエローストロベリーグァバはストロベリーグァバをもう少し品の良い味にしたものと考えればいいでしょう。いずれも集めて持ち帰り、絞ってジュースにして飲んだり、ジャムを作ったりして楽しみます。他の果実とミックスして味わうというのも楽しいでしょう。
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イエローストロベリーグァバと果実 |
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グァバは白人文化がもたらされた後に入ってきたものですから、ハワイ固有の文化と結びついているわけではありませんが、薬用としての効果は、ポリネシアの一部で知られていました。もっとも多用されたのはグァバの若葉で、葉を絞った液を飲んだり、葉を直接かじったりして、胃痛や下痢止めとして使用しました。
ハワイ諸島ではどこでもコモングァバやストロベリーグァバが多くの実をつけているのを見ることができます。甘い果実を存分に味わってください。
次回は「渓谷の魅力」と題し、その1回目としてワイピオ渓谷を紹介します。
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