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オヒアの森の下生えとして繁殖するハプ・ウ |
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シダはハワイの自然史を語るうえで欠かせない植物のひとつです。
ハワイをきらびやかに彩る花や果実の陰に隠れて地味なイメージのシダですが、高さ3mを超えるものからてのひらサイズまでさまざまな種類があります。
また、先住ハワイ人が持ちこんだ食用の木性シダや、近年になって盛んになった観賞用のシダなど、シダはハワイのあらゆるシーンに登場します。
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アマ・ウの木性部分から成長する葉柄(先端部分) |
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シダは湿気の多いところを好むので、森のなかの比較的直射日光が当たらないところによく生息しています。
オアフ島のマノア滝周辺やハワイ島のキラウエア火山周辺には大型のシダがうっそうと茂っているのをみかけます。
これらのシダ類のなかでも、よく目にするのが、オヒアの森に共生するハプ・ウ(タカワラビ)です。
ハプ・ウは豊富なでんぷん質を確保できたため、かつてはイム(土のなかに埋めて焼く料理法)や、火山の水蒸気ガスが出ているところで蒸して食用にしたのです。
ただし、味や食感はあまりよくないため、飢饉のときなど、タロ(カロ)やブレッドフルーツ(ウル)が不足したときの非常食的な役割でした。
ハプ・ウは後述のアマ・ウに似て、比較的陽の射す場所でも成長します。若いものは hapu'upu'u と呼んで成長したものと区別していました。
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羽片は固く、V字状につくのが特徴 |
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アマ・ウ(ヘゴモドキ)はハプ・ウと似ていますが、ハワイの固有種です。
ハプ・ウと異なり、食用にはあまり適しません。幹に似た部分から出る枝を介さず、直接葉を伸ばすところと、葉がV字状に立つところがハプ・ウとの違いです。
アマ・ウも比較的高地に見られる木性シダで、若いときは赤っぽい色をしていますが、成長するにつれて緑色に変化し、紅葉したあとに枯れます。
成長期には葉の先端がすべてカールしているのが特徴です。アマ・ウは一般的なシダと異なり、陽の当たるところを好みます。
アマ・ウの葉に似た部分(frond)は、かつてパラホロと呼ばれ、カパ(布の一種)の素材に使われたほか、木の幹に似た部分(trunk)は、赤い染料を取ってカパを染色しました。
ハプ・ウと同じく、若い ama'u は ama'uma'u と呼んで区別していました。ちなみにキラウエアのハレマウマウ・クレーターの名は、「ama'uma'u の家(hale ama'uma'u)」に由来します。
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2つに分裂しながら成長するウルヘ |
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ウルヘの最初の分裂 |
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これらの木性シダはノブタの好物でもあり、土を掘り起こして食べるため、その後に雨水がたまってボウフラの生息地となることがあります。 そのため、主要な繁殖地はブタ避けフェンスを張り巡らせ、シダの保護と水たまりの出現を防いでいます。
高地にはアマ・ウやハプ・ウなどの木性シダに混じってウルヘ(コシダ)が繁殖しています。 ハワイ固有のシダのひとつであるウルヘは、一本の滑らかな紫色の茎を1メートル近くも持ち上げ、そこからきれいな二股の葉をつけたあと、二股に分かれながら広がっていきます。 このシダは他の植物に寄生し、ときに数メートルの高さまで伸びることがありますが、単独では1メートル強の高さにしかなりません。 褐色になって枯れた部分と瑞々しい緑のツートンが印象的なシダです。
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溶岩地帯に出現したクプクプ |
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熔岩の大地に最初に根づくのはオヒアとオヘロ、それにクプクプ(タマシダ)です。 クプクプは生育環境によって変異が大きく、溶岩地帯のように陽射しをたっぷりあびるところでは直立して育ちますが、カウアイ島のシダの洞窟のように日陰のものは垂れ下がるように育ちます。 ちなみにクプクプとはハワイ語ではシダの総称ですが、一般にはタマシダを指します。別名をパーモホ、英名を sword fern と言いますが、刀のように細く背が高いという意味です。 このシダは高地(標高600m〜1200m)で成長しますが、オヒアやオヘロとともに着床にすることが多く、キラウエアやマウナロアなどの、 熔岩の流れたあとの黒々とした土地にいち早く出現します。 ハプ・ウ、アマ・ウ、ウルヘ、それにクプクプの4種を覚えておけば、キラウエア周辺のシダはほとんど判別できるでしょう。
次回は花物語(8)と題し、その他のシダについてお話しします。
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