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スペクタクルドパロットフィッシュの成魚のオスとメス、幼魚 |
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ブダイの仲間たち
ウフと呼ばれるパロットフィッシュ(スズキ目ブダイ科)は、熱帯地域に広く分布するカラフルな魚で、オスとメス、また稚魚と成魚でも体色は大きく異なります。たとえば、ハワイの固有種として知られるスペクタクルドパロットフィッシュ(spectacled parrotfish)は幼魚のときは、尾の赤と白の鮮やかさが目立つ暗褐色の体色をしていますが、成魚になると青く縁取られたグリーンになり、頭部も発達します。尾やヒレの形状も異なるため、成長の過程をつぶさに観察しないかぎり、到底おなじ種だとは思えないほどです。ちなみにハワイ人もこの魚が同一のものだとは思わなかったようで、幼魚にはウフ・アフ・ウラ、成魚にはウフ・ウリウリという、別々の名前を付けています。同じように沖縄の海でも見られるハゲブダイ(Bullethead parrotfish / ウフ)は幼魚は白い斑点とピンクのアゴが目に鮮やかですが、成魚は腹部の黄色が鮮やかなエメラルドグリーンになります。
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ハゲブダイのオスとメス |
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パロットフィッシュには9つの属と、その下に83の種があり、そのうちの3分の2以上を、アオブダイの仲間が占めます。大型のものが多く、アオブダイ(blue
parrotfish)やヒブダイ(bluebarred parrotfish)は80cm、最大のカンムリブダイ(humphead
parrotfish)は120cmにもなります。ちなみにブダイ科の近縁であるベラ科のナポレオンフィッシュは2.3mもの巨体です。ブダイの仲間は、1匹のオスがメスの群れを従えるハレムをつくります。オスが死んだ場合は残ったメスのなかの1匹がオスへと性転換します。
パロットフィッシュはハワイのサンゴ礁には欠かせない魚のひとつです。パロット(オウム)の名が示すように、オウムに似た立派なクチバシを持っていますが、これは歯が癒着して板状になったものです。(*1)
非常に強力な力を発揮し、石のように固い死んだサンゴを食べます。パロットフィッシュは喉の部分におろし金のような固い突起があるので、クチバシで砕かれた小さなサンゴ片はさらに細かく寸断されます。かんじんのエサはそのとき分離する海藻ですから、わずかなエサに膨大なエネルギーを費やしていることになります。同じものを主食とするアオウミガメと較べると効率の悪さが際立つようですが、この性質が観光客に大きな恩恵を与えているのです。
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岩をもはぎ取る強力な歯 |
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パロットフィッシュは大食漢なので、排泄される糞は膨大な量になります。この糞の成分はほとんどがそのまま排出されるサンゴの微粒子、つまり砂です。その総量は年間1トンにもなるという説もあるほどで、パロットフィッシュの仲間たちがつくり出す砂は、ハワイ諸島のビーチの形成に少なからず貢献しているわけです。ちなみにナガブダイ(Redlip Parrotfish)のメスはウフ・パールカルカと呼ばれますが(*2)、「大量に糞をする魚」という意味です。
*1 幼魚のときは分離している。
*2 オスはウフ・エレエレと呼ばれる。
ハワイでは食材としても人気がありますが、ブダイの中でもっとも種類の多いアオブダイはわが国でも沖縄などで刺身や蒸し物として食べられてきました。しかし日本のアオブダイ属には毒のある種類もあります。釣って食用にするときは、事前の確認が必要です。ハワイでは煮魚や酢和えとして食べられます。このアオブダイは夜になるとサンゴの陰で寝ますが、その際、粘液をはき出して膜状にし、これで体を覆います。
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ハワイの食卓にのるさまざまなブダイ |
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ハワイで知られるブダイには、このほかに目の回りが星の輝きのようなデザインのポーヌフヌフ(stareye parrotfish /タイワンブダイ)、黄色のラインが印象的なイエローバーパロット(Yellowbar parrot)や、ラウイアと呼ばれるリーガルパロット(Regal parrot / アオブダイの仲間)など、十数種に及びます。
次回はハワイのことばと題し、ポリネシアの言語についてお話しします。 |