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スムース・カイエン種。葉にはトゲがない |
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ハワイの果物と聞いて思い浮かべる御三家はパイナップル、マンゴー、パパイヤでしょう。今回はハワイの一大産業となったパイナップルについてお話しします。
パイナップルを最初にヨーロッパに紹介したのはコロンブスの一行です。新大陸を発見したコロンブスが1493年に行った次の航海のとき、クルーのひとりであったミシェル・ド・クーナオが、西インド諸島のグアドループ島で発見したことを手紙に書きしたためています。パイナップルは欧州でもてはやされ、とくに貴族の間では競うように栽培が行われたといいます。その熱波はまたたく間に世界中に広がりました。
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葉に鋭いトゲがある品種 |
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ハワイではスペイン人のドン・マリンという人物が、栽培したのが最初の記録で、1813年のことです。(*1) このときの品種はカイルアと名づけられ、当時、サンフランシスコに輸送されていました。1886年、ジャマイカから葉のトゲがないスムース・カイエン種が導入されたとき転機が訪れました。1892年にキッドウェルがオアフ島で生産を開始し、その後を追うように、ドールが数年後にホノルルに工場をつくりました。やがて大量生産が始まり、缶詰加工が行われるようになってから一大産業として発展していったのです。ハワイはやがて世界一のパイナップル産地となるにいたりました。しかし、やがて労働賃金の低いアジア産に押されはじめ、今日では主要産業の地位を他国に譲っています。しかし、オアフ島にあるドールのパイナップル畑をはじめ、いまも各島に大小のパイナップル畑が点在し、ハワイ風物詩のひとつとなっています。
*1 16世紀頃にハワイ島コナの海岸で外国船が難破し、積荷の一部であったパイナップルが漂着したものを、住民が栽培したという説もある。
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ドールのパイナップルアイスクリーム |
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パイナップル(ananas comosus)はパイナップル科アナナス(Ananas)属の多年草です。ブラジル原産(*2)で、アナナスという学名は、ナヌス(nanus)という土地の名前に由来しています。これとは別に、「ア」はポルトガル語で「果実」、「ナナ」は「優れている」という意味だとの説もあります。一方、パイナップルということばは、スペイン語の「ピナ」が英語化し、これに果実を表す「アップル」が付いたものだと言われています。ハワイ語ではハラ・カヒキと呼びますが、「ハラ」とはタコノキのこと。タコノキの実がパイナップルによく似ていることから誤用したと言われています。
*2 ブラジルのパラナ川とパラグアイクァの流域で、グアラニーというインディオによって栽培されていたという記録がある。
パイナップルは世界に2000種近くありますが、その多くは着生植物(*3)です。しかし、食用のパイナップルは地生植物で、100種ほどの品種があります。オアフ島やマウイ島では広大な大地一面にパイナップル畑が広がっているのを見ることができます。ラナイ島もかつてはそうでしたが、現在はハワイにおけるパイナップル産業の衰退に伴って廃棄されました。
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レッド・スパニッシュ種。葉に小さなトゲが密生する |
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*3 他の植物の地上部の表面で生育し、独立に栄養摂取を行う植物のこと。ヤドリギのように他の植物の組織の内部にまで侵入し、その植物から養分を摂取する寄生植物とは異なる。広い意味では露出した岩石の表面に付着して生育する植物をも含める。着生植物はパイナップル科のほかにも、ラン科、サトイモ科など多くの科にみられる。
パイナップルの葉はきわめて強靱で、かつては吹き矢の矢じりに使われたほどです。さらに鋭いトゲがあり、これが大量で効率の良い栽培を困難にしていました。しかし、1819年にトゲのないカイエン種というパイナップルが発見され、栽培の効率は飛躍的に向上しました。今日ではカイエン種が全流通の90%近くを占めています。
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地平線の彼方まで広がる広大なパイナップル畑 |
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その他に、17世紀から栽培されている甘みの強いクイーン種、甘いが酸味も強いレッド・スパニッシュ種などがあります。ハワイのプランテーション・パイナップルはほとんどがカイエン種ですが、少量ながら、酸味が少なく芯があまりないコナ・シュガーローフという品種や、ヒロという品種などもあります。ちなみに、ワヒアワ(ワヒアヴァ)のドールプランテーションには、世界中の主なパイナップルが植えられています。
パイナップルは葉の長さが60cm〜1m、幅が6〜8cmほどあり、基部が重なりあって器のようになっています。ここに水や腐植した葉などをたくわえ、水分と栄養の補給を行うことができるので、乾燥にもある程度持ちこたえることができるのです。ちなみに、果実の上にできる葉のように見える部分が芽ですが、これを切り取って砂地に挿せば、新しい株となって成長します。
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観賞用のアパッチ(パイナップル科グズマニア属) |
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最後においしいパイナップルの見分け方を書いておきましょう。できるだけ大きく、軸が太く、下膨れのものを選びます。底を押して軟らかければ食べ頃ですが、そうでない場合は冷蔵庫に入れて2日ほど寝かせたほうが酸味が減ります。ちなみに学術的には、パイナップルは果物ではなく野菜です。その理由はご自分で調べてみましょう。
パイナップル産業はハワイの歴史に深い関わりがあり、カメハメハ王朝の消滅とハワイ共和国、後のアメリカ併合に大きな影響を及ぼしました。この辺の話はいずれ、歴史の紹介のなかで行いたいと思います。
次回はパパイヤについてお話しします。 |