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鉤形をしたマンゴーの果実
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マンゴーはウルシ科の植物で、学名を""Mangifera indica"と言いますが、"Mangifera"とは
"Mango(マンゴー)" と "fero(運ぶ)" の合成語です。"indica(インド産の)" ということばが示すように、インド東北部が原産で、インドでは4000年以上前から栽培されていたと言われています。釈迦がマンゴーの木の下で一夜を明かしたという言い伝えから、「仏教五木」のひとつになっており、また、その後のアショカ王は旅人の日除けとして数千本のマンゴーの木を植えたと言われています。
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樹高約15m、幅20mほどもある巨木 |
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インドのマンゴーはその後アレキサンダー大王の遠征軍によって西欧に紹介され、広く欧州にも分布するようになりました。10世紀にはペルシアや東アフリカへ、18世紀には南米に広がりました。ハワイには1809年にメキシコ経由で、1824年には帆船カメハメハ号によってマニラからもたらされました。パパイアと同じく、スペイン人のドン・マリンが栽培を試みました。その後、1885年にジャマイカからも導入され、ハワイ農業試験場などの研究によって新品種がつくられ、今日に到っています。
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成長するにつれ、枝からぶらさがる |
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マンゴーは樹高30mにも達する常緑の高木で、長く垂れ下がった葉が遠目にもマンゴーの木の識別に役立っています。花はとても小さく、ピンク色のものが束状に、数百の単位で咲きます。花からは十分な蜜が採れるため、マンゴーのハチミツも作られます。多くの花を咲かせるものの、そこから結実するのはわずか2、3個です。しかし、巨木になると、一度に数千個の実をつけます。果実の大きさは50g程度から2kgに近いものまでありますが、店頭に並ぶものは平均250g程度です。色は黄色、赤色、紫色、緑色とさまざまで、500を超える栽培品種があると言われています。
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紫色の品種
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マンゴーは近縁の仲間が熱帯多雨の地域にあるのに対し、乾燥した土地を好みます。とくに花をつけている期間に雨が多いと、じゅうぶんな収穫を望めません。ハワイでは通常、6月から9月にかけて収穫されますが、場所や天候に大きく左右されますし、隔年で豊作を迎えることもあります。葉の長さは20cmから30cmほどで、細長い形状のものが枝先にまとまって付きます。少し赤紫色を帯びた新葉の美しさは際立っていて、公園の並木として利用されることも少なくありません。
マンゴーの樹皮から得られる樹液はゴムの木と同じように接着剤や乳化剤としても使われます。同じく樹皮からは黄色の染料が採れます。マンゴーの果実にはβカロチンをはじめ、ビタミンAや食物繊維が豊富に含まれているほか、種を煎じたものは駆虫剤や下痢止めとして使われます。良いことずくめのようなマンゴーですが、ウルシ科の植物ですので、過敏な人はアレルギーが生じる場合もあります。果肉や果汁は皮膚につけたままにするとかぶれの原因となることもあるので注意しましょう。花はスギ花粉と同じく、まれに花粉症の原因となることもあります。
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果実の中身と大きな種 |
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マンゴーは熟すと傷みはじめるので、追熟できるタイプのものを収穫して出荷しますが、最近では完熟タイプを直販する農園もあります。追熟タイプのものは光沢が出ていてじゅうぶんに軟らかいものは食べ頃ですが、そうでない場合は常温で完熟するまで待ちます。マンゴーは出荷直後のものであれば3日目以降が食べ頃です。その後は冷蔵しておけば、ある程度日持ちします。食べるときは平らな種をサンドイッチにするように、たてに3枚に切り分けるのがふつうですが、ハワイの子どもたちは切る前によく揉み。先端をちぎって吸い出す食べ方もします。これであれば手を汚すこともありません。
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野生のマンゴー。左はグァバ |
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ちなみに、ハワイから日本に出荷されるマンゴーは、ミバエの類が発生しないように蒸熱処理を行なってから輸出されています。日本でもマンゴー栽培が試みられ、鹿児島県では1970年から、沖縄県では80年代から栽培がはじめられました。
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