ハワイのレストランやスーパーでは魚の名前にハワイ名のついたものが少なくありません。ハワイの食卓を飾る魚のなかで代表的なものをいくつか紹介していきましょう。今回はマヒマヒとアヒです。
■マヒマヒ
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頭部が発達したマヒマヒのオス
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マヒマヒ(Coryphaena hippura)は和名をシイラと言いますが、これは動物の漂流死体に寄り添ったり、お盆のときに群れが来るなどの習性から、「シビトクライ」とか「死霊」と呼ばれ、これらのことばが変化してシイラとなったという説があります。あまりありがたくない名前ですね。八丈島ではトウヤクと言います。「十も百も」が由来です。他にもマンビキ(万匹)、クマビキ(九万匹)と言うように、数の多さを表す名前が付けられています。
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マヒマヒのプレートランチ |
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英名はドルフィン・フィッシュ(Dolphin Fish)。イルカのように船に寄り添って身軽に泳ぐ習性を表したものです。別名をドラド(dorado)とも言います。スペイン語で「黄金の」という意味がありますが、体色がコバルト色の斑点をつけた黄金色であることに由来します。ただし、釣り上げるとすぐに色は褪せてしまいます。ハワイ名のマヒマヒ(mahimahi)は「力強い」という意味の「mahi」に関係がありそうです。この魚を釣り上げるとき、あるいは釣ってからも、ひどく暴れるからです。ちなみにタヒチ、グァム、クック諸島でもマヒマヒと言い、ポリネシア語のマシマシ(masimasi)が語源です。
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マヒマヒの刺身 |
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マヒマヒは世界の熱帯と温帯の海で表層を回遊する魚です。体長は平均1.5mほどで大型のものはまれに2mを超えます。扁平で長い帯状の体をしており、頭が突き出た独特の形状をしています。ただし、頭部が発達するのはオスだけです。マヒマヒは海に漂うものに集まる習性があるので、漁をするときは漬漁法と言って、材木などを海に浮かべ、その下に集まったマヒマヒを巻き網で穫るという方法が取られます。マヒマヒは淡泊で弾力のある白身の魚で、わが国ではあまり人気がありませんが、ハワイではとてもポピュラーです。「マヒマヒ」のステーキといえば最上級の料理ですし、水分が多く柔らかい白身の肉は刺身としても人気があります。もっともポピュラーな食べ方はソテーでしょう。店によって味の差はありますが、ぱさぱさしていて淡泊だという印象は変えられることでしょう。
トリビアをいくつか。現在は定かではありませんが、マクドナルドのフィレオフィッシュに使われているのはこのマヒマヒでした。また、最近、日本に広がっているクア・アイナの本店で、地元の人たちが好むハンバーガーもマヒマヒ・バーガーです。ちなみに、日本店のマヒマヒ・バーガーとは味も量もかなり異なります。
■アヒ
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ヒレの黄色が特徴のアヒ
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アヒ(Thunnus albacares)は和名をキハダマグロといいます。名前の由来は、背びれと腹びれ、そして胴体に黄色の帯状の線があるためです。キハダマグロは出世魚(成長につれて呼び名が変わる)で、20kg以下の若い魚をキメジ、20kg〜40kgのもは小キハダ、それ以上のサイズをキハダ(マグロ)と呼びます。英名のイエロー・フィン・ツナ(Yellow
Fin Tuna)も和名と同じ由来です。ハワイ名はアヒ('ahi)ですが、ほかにもヒ・ウ・ウィー・ウィー(/薄い尾)やポ・オ・ヌイ(po'o
nui/大きな頭)といった呼び名もあります。また、日本語と同じように、若い魚はカナナー()と呼び分けています。アヒはポリネシア語のアフィ(afi)が語源です。
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アヒ・ポキはハワイ版の"漬け" |
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アヒは世界の熱帯と亜熱帯の海に広く分布します。ふだんは沖合いの表層に生息しますが、産卵のときは沿岸にやってきます。体長は最大で2mを超え、体重も200kgほどになります。イカやカニ、小型の魚などを餌としています。
アヒは肉の赤味や脂肪分が少ないので、味はホンマグロやクロマグロに劣るという人もいますが、活きの良いものは区別がつかないほどです。ハワイでも寿司ねたとして人気がありますし、ソテーにしてもおいしいですが、庶民の味として人気が高いのはアヒで作ったポキ(poke)です。角切りにしたアヒに刻みねぎを入れ、ごま油と醤油で漬けしたハワイ風の刺身です。ほかにもタコやオナガ(ハマダイ)など、さまざまな海の幸がポキにされています。
ハワイ島では一時観光名所となっていたヒロのスイサン(Suisan)でアヒの朝市が立ち、競りが行われていました。朝市は閉鎖してしまいましたが、現在も地元向けに朝食やランチを食べさせています。機会がありましたらアヒ・チャーハンをお試しください。
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