地底の世界には、そこでしか観察できないものが数多くあります。地底は外の世界の影響をほとんど受けないので、風雨による浸食や人や動植物による破壊、陽光や大気による化学変化が起こりにくく、噴火当時の状態をかなり忠実に残します。これは洞窟の形状や生成因によっても異なります。ハワイに無数にある洞窟は、大きく次の10タイプに分けることができます。
溶岩やガス噴出の際にできる洞窟
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マウナ・ロア南麓3000m付近のピット・ケイブ
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(1)ピット・ケイブ スコリア(岩滓)を噴出する噴火口の、地上にいたる柱の部分と噴火口の底部にできます。キラウエアのチェーン・オブ・クレーターには多くの噴石丘があり、そのうちのいくつかはピット・ケイブを形成しています。溶岩にできた世界最深の竪穴もこの地域にあります。
(2)ガス噴出孔 高温の火山ガスが噴出する竪穴。溶岩の噴出口を兼ねることもあります。チェーン・オブ・クレーターズのプウ・オー・オーに近いクレーターの縁などに見られます。キラウエアのサルファー・バンクス・トレイル沿いにもありますが、人が入るほどの大きさはありません。
(3)リフト・ケイブ 噴火の火山エネルギーで断層が生じ、そこから溶岩が噴出することがあります。このときの溶岩の通り道と、断層全体を指してリフト・ケイブと呼びます。ハワイ島のマウナ・ロア山頂付近、キラウエア・カルデラなどに見られます。長いものは数キロメートルに及びます。
(4)フィッシャー・ケイブ 断層(リフト)と似ていますが、それよりは規模の小さなものです。噴火の際に生じた溶岩の亀裂に生じた地下空間で、マウナ・ロア南麓やチェーン・オブ・クレーターには数多く見られます。
溶岩の流れがつくる洞窟
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ハワイ島ヒロにある溶岩トンネル(カウマナ・ケイブ) |
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(5)溶岩トンネル 地下のホットスポットから上昇したマグマが噴火して流れ降りるとき、外部はすぐに冷え固まり、内部だけが高温状態となります。噴火口からの溶岩の供給が止まると、溶岩が流れ去ったあとに空間が残り、冷え固まって溶岩トンネルとなります。ハワイ島のキラウエア火山南麓や、マウイ島のハレアカラ南麓に見られます。
(6)溶岩チューブ 溶岩の粘り気がいくぶん高いときは、溶岩の温度が下がったときに水蒸気ガスが発生します。この水蒸気は飴状の溶岩のなかにいくつもの気泡をつくり、気泡は膨らみながら次々に横に連結して地下空間(洞窟)をつくり出します。溶岩トンネルとは生成因が異なるため、地下空間の様子も異なります。ハワイ島のプナやマウイ島のハナにある洞窟で見られます。世界最長クラスの溶岩洞窟はプナに集中しています。
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マウナ・ロア南麓の3200m付近の崩落孔 |
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(7)コラプス・ホール(崩落孔) コラプスとは「崩壊」のこと。崩壊の理由はふたつあります。ひとつは、溶岩トンネルの天井部が非常に薄いため、地上部が風化して崩落するケース。もうひとつは、まだ内部が熱いときに発生した水蒸気ガスが天井部を押し上げ、外に噴出するケースです。
その他の原因でできる地下空間
(8)溶岩樹型 よく知られているのはハワイ島キラウエアのキプカ・プアウルと、ナパウ・トレイルのプウ・フル・フルの周辺、それにパホアの南にある溶岩樹公園です。また、複数の樹木が折り重なってできる空間(複合溶岩樹型)が洞窟となることもあります。樹型は木から発生する大量の水蒸気が内部を押し広げるという説もありますが、ハワイの溶岩はきわめて短時間(1分以内)に包みこんだ木との接触面が固まるので、内部空間はほぼ木の直径に等しくなります。
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キプカ・プアウルの溶岩樹型
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(9)岩屋 崖の一部が風雨の浸食や、岩の崩落によってできるもの。カウアイ島のシダの洞窟が知られています。洞窟とは、開口部分より奥行きが長いもので、人が入ることのできる空間を持つものという前提があるため、「Fern
Grotto」を洞窟と呼ぶのは本来正しくありません。
(10)海食洞 波が溶岩の崖を浸食してつくるもの。規模が小さく、岩の上まで貫通するとブローホール(潮吹き穴)となります。オアフ島のマカプウ、マウイ島カプルア、カウアイ島のポイプなどによく知られたブローホールがあります。
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