ハワイとサメ
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イタチザメ |
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ハワイの近海には、確認されているだけで15種類のサメがいます。もっとも生息数が多いのはネムリブカ(whitetip
shark)で、日中はサンゴ礁の下や岩の陰で休んでいます。体長は約1.8メートルと、サメのなかでは比較的小型で穏和な性格です。
イタチザメ(tiger shark)は注意が必要です。全長6m以上になる大型のサメで、カメやアザラシ、海鳥やイヌ、ときにはウマまで、近づいてくるもの(獲物)には何でも襲いかかる性質があり、胃の中からは缶詰や金属製品など、とうてい消化できないものまで見つかることがあります。イタチザメがサンゴ礁の内側に入ってくるのはふつうは夜ですので、遭遇する危険は少ないでしょう。
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サメ用の釣り針 |
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サメはハワイ語ではマノ(man )と呼び、大型のサメ一般を指します。性質の温厚なものはマノ・イア(man
'ia)、どう猛なものはマノ・ハエ(man
hae)と呼びます。そしてさらに、ルヒア(luhia)やララケア(lalakea)、レレワ・ア(lelewa'a)、パハハ(pahaha)、カヌーさえ襲う人食いザメのニウヒ(niuhi)などの種類に分かれます。ハンマーヘッド(man
kihikihi)やネムリブカ(lalakea)は食用とされました。
サメ人間(mano kanaka)もかつてのハワイ人にとっては重要な存在でした。海で暮らしをたてる者にとり、サメは恐怖の対象でしたが、同時にその力は、人々を護る象徴ともなりました。なかでも巨大な歯にはマナ(霊的な力)が宿ると言われ、護符のように扱われました。そして、サメ人間は先祖の魂(アウマクア)として考えられてきたのです。(これについては後述します。)
サメ釣りとサメの利用
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サメの歯 |
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ハンマーヘッドやネムリブカの漁は漁網を使い、ニウヒには罠を使いましたが、その他の大型サメ漁には巨大な釣り針を使いました。餌にはアヴァ(カヴァ)やバナナ、まれにククイナッツを使用しました。ニウヒは深海に生息しますが、これを釣り上げたときは、切り分けた肉を焼いてからティの葉で包み、砕いたアヴァと少量の水を混ぜ合わせてヒョウタンに入れ、保存食としました。
サメの皮はパフ・フラをはじめ、ドラムの表皮として用いられました。(※「ハワイの楽器(1)」を参照) 歯はさまざまな用途に用いられましたが、とくに武器として、剣や棍棒が作られた他、歯を並べてノコギリのように使いました。サメの歯の剣はニホ・オキ(niho
'oki)、武器一般はレイ・オマノ(lei omano)と呼ばれました。
神話
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ナナウエの滝(ワイピオ渓谷) |
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火の女神ペレには6人の兄弟と5人の姉妹がいました。サメの神である長兄のカモホアリイを船頭に、兄弟姉妹は故郷のカヒキ(タヒチ)から、ハワイ諸島へ旅立ちました。ハワイ島のワイピオに住みついたカモホアリイは、ある日のこと、いつものようにサメに変身して泳いでいました。そのとき彼は美しい女性を見そめます。数日後、彼はその女性に結婚を申し出ました。カモホアリイは、カレイという名の妻との間に子をもうけ、ナナウエと名づけました。息子の背中には穴があいていました。ナナウエの成長とともに、穴には鋭い歯が生えはじめ、やがてサメの口となりました。
やがてカモホアリイは家を捨てて旅に出ます。そのとき彼は妻に、息子には動物の肉を食べさせてはいけないと警告します。しかし、祖父はナナウエに肉を食べさせてしまいます。肉の味を覚えたナナウエはときどきサメに変身して村人を襲い、食べるようになりました。やがて正体がばれたナナウエは村人たちに捕まえられますが、殺される寸前に脱走します。次に住みついたマウイ島のハナでひっそりと暮らしはじめましたが、再び殺生を繰り返し、見つかってしまいますが、今度も逃げのびます。しかし、次に訪れたモロカイ島のポニウ・オ・フアで半神ウナウナに見つけられて殺され、人々によって食べられてしまいました。
このような物語はナナウエだけでなく、マウイ島ではカマイカアフイやパウ・ワル、カウアイ島ではカヴェロ、ハワイ島ではネネヴェなどと名を変え、数多く残されています。
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