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キラウエア (1)
近藤純夫

火山の誕生


キラウエア・カルデラとハレマウマウ・クレーター

 キラウエア山はマウナロアの東20kmほどにある山で、現在も活発な活動をつづけています。キラウエア火山とは、一般にはハレマウマウを含むキラウエア・カルデラと、その東に伸びるクレーター群(チェーン・オブ・クレーターズ)を含む総称として用いられます。

 この山が最初に噴火した正確な時期は不明ですが、いまからおよそ30万年前から60万年前に海底に出現したと言われています。それ以降、今日に至るまで長く沈黙した期間はほとんどなく、つねに噴火活動を続けてきました。地表面と、いくつかの試坑(ドリルで溶岩に穴をあけ、過去の溶岩流の層を探索する)を調査した結果によれば、キラウエア火山はそのほとんどが噴出した溶岩によって形成されていることが判明しました。*1

1924年の大噴火

 その後、5万年前から10万年前の間に海上に姿を現しました。キラウエアの噴火活動は、その時代から今日に至るまで、キラウエア山頂(キラウエア・カルデラ付近)と、2つのリフト・ゾーン*2で行われています。

 山頂付近に広がるキラウエア・カルデラはよく知られていますが、このカルデラがキラウエアの誕生当初からあったものなのか、あるいはここ数千年の間に誕生したものなのかについては、地質学者の間でも意見が分かれます。いずれにしても、カルデラは同じ場所にあり続けたわけではありませんし、大きさも一定ではなかったでしょう。出現したり消滅したりを繰り返しながら今日に至ったのだという説が大勢を占めます。

 噴火活動は今日でもキラウエア・カルデラとその周辺で見られますが、より活発な活動は総延長が120kmほどにもなる東リフト・ゾーン(チェーン・オブ・クレーターズ)に移っています。現在の噴火活動の中心は、その東端にあたるプウ・オー・オーにあり、盛んに溶岩を噴出し、海岸まで流れ降りています。東リフト・ゾーンの地上の末端は、プウ・オー・オーよりさらに東にあるクパイアナハですが、マグマの枝は地底をさらに東まで伸ばし、現在は海面下1000mのところで、ロイヒという海底火山が噴火活動を続けています。この火山は今後、1万年から5万年の間に海面に姿を現し、やがて島を形成するでしょう。*3

キラウエア・カルデラ遠望

ハレマウマウ

 たいていの噴火は爆発的ではなく穏やかに起こります。今日、プウ・オー・オーから立ちのぼる噴煙は巨大ですが、噴泉は幅数メートル、高さは瞬間的に数百メートルになることもありますが、ふつうは数十メートルです。噴泉から吹き出した溶岩は時間をかけて次第に盛り上がります。その形が寝かせて置いた盾に似ているため、盾状火山と呼ばれます。*4

 1790年にはカメハメハ大王と戦っていた敵の勢力が、ハレマウマウの大噴火に遭遇し、多くの犠牲者が出たと言い伝えられています。また、1866年にマーク・トウェインがハレマウマウを訪れたとき、「このクレーターはペレの女神のかまどから吹き上げる熱のせいで、われわれは茹でられたタマゴのようになってしまった」と描写し、1873年にイザベラ・バードが同じ場所を訪れたときは、「そろそろ立ち去ろうというときに、溶岩湖に新たな衝撃が走った。高々と炎が噴き上がり、同時に溶岩が噴き出した」とその驚きを伝えています。20世紀に入ってからも噴火活動は盛んで、何度か小規模な爆発を繰り返し、巨大な噴煙を上げることもありました。過去40年間に絞っても、30回を超える噴火を行っています。

キラウエア・カルデラの火山活動史

 ハレマウマウ・クレーターはキラウエア・カルデラのなかほどに口を開けた溶岩湖の跡で、直径は約1kmあります。ちなみにキラウエア・カルデラは長径約4.5km、短径は約3kmです。キラウエア・カルデラがその形状をつねに変えてきたように、ハレマウマウもまたその形状をめまぐるしく変えてきました。

 キラウエア火山の山頂は意外と知られていませんが、ハレマウマウ・クレーターを見下ろす、火山観測所のすぐ裏手にあります。標高は1243mですが、標識がなければ、そこが山頂とは気づかぬほど平坦な場所にあります。


キラウエア火山の山頂

 ハレマウマウは火の女神であるペレが住むと言われています。ペレは、度重なる火山の被害のすえにハワイの人たちが編み出した火山活動の象徴と言えます。この女神はカヒキ(タヒチ)より到来し、西北の島から下り、ようやくこの島に安住の地を見出したことになっていますが、それはまさしくハワイ諸島の火山活動の変遷に重なります。ちなみに、ハレマウマウの語源はハレ・アマウマウです。アマウマウとは、この一帯に生育するアマ・ウと呼ばれるシダの若い個体を指すことばで、アマウマウの家という意味があります。*5

キラウエアの未来

 今後、キラウエアの噴火活動がどのように推移するかについては、過去の例から比較的容易に推測できます。溶岩の噴火は今後も続きます。カルデラは再び溶岩で溢れ、キラウエアの標高はさらに増すでしょう。


マーク・トウェインが訪れた頃のキラウエア・カルデラ

*1 部分的には爆発的噴火によって生じた火山堆積物もあります。
*2 南西リフト・ゾーンと東リフト・ゾーンがあります。
*3 「火山と溶岩 (5)」を参照
*4 同じ火山でも富士山のような形状とならない理由は「火山と溶岩 (1)」を参照
*5 「花物語(7)シダの世界(その1)」を参照

次回は「キラウエア(2)」と題して、海岸に流れ下った溶岩がどのように周辺の地形や人の生活を変えてきたかを見ていきます。
【ハワイの自然】
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 ダイヤモンドヘッドに登ろう (2) 2002年8月15日
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