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羽毛と犬歯、真珠貝でつくられた神像(キイ) |
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ハワイの神を知るには、その背景となるポリネシアの信仰についての知識があると、より深く理解できます。とは言ってもその範囲は膨大ですので、ここではハワイの神々を取り上げる際に、個別にお話ししていきます。なお、神を「ひとり」と数えるのはおかしいですが、「ひとつ」と数えるのも変ですので、ここでは便宜上、ひとり、ふたりと表記します。
ハワイは森羅万象に神の宿る土地なので、神の数は無数にあります。これからそれを紹介していくにあたって2つの点に注意する必要があります。ひとつは、ハワイの神は、英語で言う「ゴッド(God)」ではないということです。西欧的な価値観としてのゴッドは、「万物の存在する根拠。あるいは絶対者」、「超越的な立場にある救済者」、「自然界、あるいは天上界における聖なる者」などのように捉えます。そのときどきによって、神は絶対唯一であったり、複数が存在したりしました。一方、ハワイの神は、敢えて英語に翻訳するなら「精霊(spirit)」でしょう。ハワイ語では「uhane」、「akua」「wailua」などにあたります。このことを端的に表すのが、死んだ人間の存在です。彼らは死んで「aumakua(あるいはakua)」
となるからです。また、彼らの骨にはマナ(mana)が宿ると信じられています。これらについては後日、お話しします。
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プウ・ホヌア・オ・ホーナウナウ(ハワイ島)のヘイアウ |
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さて、ハワイの神々は、人々すべてに影響力を行使する上位の神と、特定の職業やグループに関わる神、個人や家族に関わる神など、いくつかの階層に分かれます。ただし、その地位や意味は必ずしも一定ではありませんし、3つの階層にすべてを整理できるわけでもありません。ハワイの宗教はタヒチやマルケサスなどの宗教観を反映したものでしたが、地理的隔絶があったため、長い間に少しずつ変化しました。ただし、同時に、基本的な宗教観の確認作業は、ポリネシア広域で、細々ながらも継承されたため、まったく異なった構造や意味が与えられることもありませんでした。その後、近世になって西欧社会と接触すると、大きな変化が起きました。文字と資料を持つ文化であれば、どれほど世界観が変化しても、過去の価値観は存続しますが、ハワイを含めたポリネシア社会に文字も資料もなく、神を含む価値観はさまざまに影響をこうむってきました。
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