四大神以外の神々
ハワイの神は絶対唯一的なものではなく、精霊、あるいは精神のようなものだと前回にお話ししました。ハワイの人たちが信ずる神は森羅万象に存在します。ポリネシア全域にわたってほぼ同じ傾向がみられますが、これはシャマニズムに基づく信仰です。シャマニズム(カフナによる呪術)や、アニミズム(精霊信仰)、トーテミズム(事物崇拝)などに基づく神々の世界がハワイにも根づいたのです。その原点は、ポリネシア人のルーツとも言われる台湾やフィリピンなどにおいて今日でも見られるものです。
|
ハワイ人とタロイモは兄弟だと信じられている |
|
ただし同じポリネシアであっても、名称や役割、性格は少しずつ異なります。四大神そのものが、ハワイ先住民の直接の故郷であるタヒチやマルケサスの神と少し異なるように、他の神々もハワイの自然と文化のなかで少しずつその役割を変えてきました。ロノという例外はありますが、四大神以外は人との交わりはなく、あくまで崇拝の対象ですが、それ以外の神々(下位の神々)は、ときに人との交わりを持ちます。そのような神を半神と呼ぶこともあります。半神とは神と人との間に生まれた子どもとされ、不死ではありませんが、その能力は人間を超えるとされます。ハワイの半神はこの定義に外れる者もいます。ここでは簡単にそれぞれの神がどのような役割を果たしているのかをお伝えします。
ワケア (Wakea) 天を司る神。妻は大地の女神パパ。
パパ (Papa) 大地の女神。夫は天の神ワケア。最初に産んだ子ハロアは死産だったため、地に埋葬したが、その体からカロ(タロイモ)が芽を出した。次の子が人間の祖先となったため、カロと人は兄弟とされる。
ヒナ (Hina) 女性の多産性や日の入りを表す他、月の女神を司る。タンガロアやカーネ、あるいはロノの妻。イナとも呼ばれる。マウイの母としても知られます。
ハウメア (Haumea) 豊饒の女神。安産の女神でもある。夫はカーネ・ミロハイ。ペレ(Pele)、カーモホアリイ、ナマカ、ペレ(Pere)、カポ、ヒイアカ、ケーウア・ア・ケ・ポー、カーポホイカヒオラ、カーネ・ヘキリなどの子がいます。
カーモホアリイ (Kmohoalii) サメの神で、ハウメアとカーネ・ミロハイとの息子。マウイ島やカホオラヴェ島でサメの姿になって泳ぎました。
カポ (Kapo) 豊饒の女神。魔術と暗黒の力を持つ。ラカの母でもある。彼女の両親はハウメアとカーネ・ミロハイ。カーモホアリイやペレと兄弟です。
|
クーの木像 |
|
ラカ (Laka) 豊饒の女神。音楽と舞踏、雨を司る。野生の植物を育む女神でもある。ロノの妻。ペレの数多い妹のひとり。
ラカ (Laka) 男性神。森の神。クー・カ・オヒア・ア・カ・ラカ。カヒキ(タヒチ)からハワイに移り住みました。姉妹にカーウア・クアヒヴァがいます。クムホヌア(クー)の息子。
カーウア・クアヒヴァ (Kua
kuahiwa) 山の稜線に降る雨の女神。兄弟姉妹とともにカヒキからハワイに移り住みました。
ヒイアカ (Hiiaka) ポーポエからフラを教わったフラの女神として知られます。ヒイアカ姉妹の末っ子で、ヒイアカ・イ・カ・ポリオ・ペレ(Hiiaka
i ka polio pele)と呼ばれます。オヒアレフアの花を愛しました。
ペレ (Pele) 火山を司る半神の女神。夫はカマプアア。嫉妬心が大きく、いさかいの絶えない神でもありました。最後には殺され、キラウエアのハレマウマウ・クレーターに霊となって住みました。
カポホイカヒオラ (Kapohoikahiola) 爆発や噴火を司る神。火の女神ペレの兄弟。
カーネ・ヘキリ (Kne-hekili) 雷を司る神。火の女神ペレの兄弟。
ケウアアケポ (Keuaakepo) 火の雨を司る神。火の女神ペレの兄弟。
ポリアフ (Poliahu) マウナ・ケアに住む雪の女神。キラウエアに住む火の女神ペレと対立しました。ハワイ島の雪の女神には、他に、カホウポカネ、リリノエ、ワイアウなどがいます。
マウイ (Maui) 太陽を捕まえた半神。火を熾し、天を持ち上げ、海中から島を釣り上げるなど多くの武勇伝が知られています。ポリネシアのほぼ全域にマウイ伝説が継承されています。ヒナの息子。
カマプアア (Kamapuaa) 男性神で、火の女神ペレの夫。日頃は美しい人間の男性の姿をしていますが、怒ると8個の目を持つ豚に変身します。また、戦いで敗色濃厚となったときなどはフムフムヌクヌクアプアアという魚に変身して海へ逃れます。
|
木像を見るクック一行(ケアラケクア) |
|
ナマカオカハイ (Namakaokahai) 海の女神。火の女神ペレの姉妹。
ウカニポ (Ukanipo) ハワイ島に住むサメの神。
モア・アリイ (Moaalii) モロカイ島とオアフ島に住むサメの神。
アプコハイ (Apukohai) カウアイ島に住むサメの神。
ラ・アマオマオ (Laamaomao) モロカイ島に住む風の神。
ヒナクルイアウ (Hinakuluiau) 雨を司る女神。
モ・オアレオ (Mooaleo) ラナイ島に住む大地の精。
ハウリイ (Haulili) ことばを司る神。
コレアモク (Koleamoku) 癒しの神、カフナの守護神。
モク・アリイ (Mokualii) カヌー制作者の神。
カライパホア (Kalaipahoa) 樹木を傷つける女神。
クアハナ (Kuahana) 人々をあやめる神。
リエ (Lie) 山々を司る女神。
|
メネフネが作ったとされる側溝 |
|
キハ (Kiha) マウイ島に住む女神。
ウリ (Uli) 呪術を司る神。
オウリ (Ouli) 特別の祈りを捧げると呪った相手を殺すことのできる神。
アウマクア (Aumakua) 家の神。それぞれの家ごとに崇拝されていた、個人的な色彩の強い神。また、死んだ者にはマナ(神)が宿ると信じられ、死後、神として神格化(spiritと)されました。
メネフネ (Menehune) 伝説によればとても小さな背丈の人々がいて人々が寝静まった夜のうちに、フィッシュ・ポンドや道路、ヘイアウなどを作り上げてしまうとされていました。これとは別に、マルケサスやタヒチからポリネイシア人が到来する以前にハワイにいた先住民族であるとの説もあります。
※これらの神々がハワイ人の日常の暮らしや宗教儀式においてどのように関わっていたのかについては機会を改めてお話しします。
|