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異なった色をした茎の部分 |
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カヴァ(kawa, awa)はコショウ科コショウ属の植物で、ハワイでは古くから酒の代わりとして用いられてきました。マレーシアからパプア・ニューギニア地域のあたりの原産で、オーストロネシア語族(*1)とともに、3000年ほど前から太平洋一帯に広がっていったとされています。西欧には、18世紀末にキャプテン・クックがポリネシアの島々を探検航海したときをきっかけに知られました。
*1 台湾南部からインドシナにかけて発生した民族で、ポリネシアやメラネシアなど南太平洋一帯に住む民族の先祖と言われています。
カヴァは樹高が1mから3m、穂状の花序(花の集合体)は3cmから9cm、ハート型の葉は10cmから20cmほどあります。茎の部分ははじめのうちは緑色をしていますが、やがて赤紫色となります。茎は枝分かれするところが膨らみ、全体にゴツゴツとした印象を与えます。
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カヴァの花序
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ポリネシアの島々では栽培したカヴァを酒として飲む習慣があります。カヴァはポリネシア人がハワイ諸島に入植したときに持ちこんだ植物のひとつとして知られているように、タヒチやトンガ、サモア、フィジーなど、南太平洋の多くの島々でカヴァ酒として用いられてきました。学名を"Piper
methysticum"と言いますが、種小名の"methysticum"には「酔いをもたらす」という意味があります。
カヴァの根を3cmほどの大きさに切り分け、よく水洗いしたあとに目の粗い石で潰していきます。潰し終えたら水を混ぜ合わせ、さらに練りこみます(*2)。その後、ハウやココヤシなどから採った繊維に浸し、絞るということを数回繰り返すとできあがります。カヴァを飲むと気分が高揚し、意識が敏感になることがあリます。ポリネシアの人々はカヴァ酒を精神安定剤や鎮痛剤として使用してきました。また、不眠症や傷の手当にも用いられました。
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枝振りに比べて大きな葉 |
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*2 ハワイではこの工程を選ばれた高位の人間が口の中ですることもありました。キャプテン・クックはこうしてつくられたカヴァ酒を振る舞われています。
ハワイを含む南太平洋の島々のいくつかにはカヴァ・バーなるものがあります。店内はたいてい薄暗いのですが、これは精神を落ち着けるための演出でしょう。バーテンダーの指示に従ってゆっくり飲むと、心が落ち着くと言われます。最初に舌の先が少し痺れたような感覚になり、やがて五感が鋭敏になったような気分になります。ただし、個人差が大きいので、まったく何も感じない人もいます。
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カヴァ・ティー |
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カヴァには抗痙攣作用(痙攣を鎮める作用)や麻酔作用などの薬効があることも知られていますし、欧米ではサプリメントとしても人気があります。カヴァ酒を長期にわたって飲む習慣のある老人の一部には象皮病に似た症状があります。キャプテン・クックは、ハワイ島でカラニ・オープウに会ったときの印象を「カヴァなる酒のせいで皮膚病になっている」と記しています。とはいえ、年に数度楽しむ程度であれば問題はないでしょう。味についてはお世辞にもおいしいとは言えません。わかりやすく言うなら泥水のようなものです。おしゃれに楽しみたいのであれば自然食の店などで販売されているカバ茶のパッケージを購入するのをお薦めします。
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