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トレイルを歩く(5) ポロル渓谷
近藤純夫

ポロル渓谷の展望

 ハワイ島のコハラ半島を南から登りつめていくとカパアウの町を経てポロル渓谷に達します。ポロル(pololū)とは、ハワイ語で「長いやす(long spear)」を意味します。渓谷の展望台からはリアス式海岸を思わせる断崖の連なりを展望することができます。海は貿易風の影響もあって波が高く、泳ぐのには不向きですが、サーファーたちは波の高い日にやって来ます。この断崖の先にはワイマヌ渓谷やワイピオ渓谷が続いていますが、海岸伝いに歩いて行くことのできる道はありません。

 眼下にはわずかに黒砂の海岸が見えますが、展望台とこの海岸を結ぶのがポロル渓谷トレイルです。標高差はおよそ300メートル。渓谷には夏には黄色の花をつけるハウと、やわらかな緑色のヴェールをまとうモクマオウの森が、まるで手つかずの自然のように広がって見えます。かつては人が住み、タロ畑などが作られていました。クックが到来する頃にはタロ畑は姿を消していましたが、当時、真紅の茎を持つタロは極上の品種としてハワイ島全土に知れ渡っていたと言われています。

黒砂のビーチ

 19世紀には中国人移民がこの地を開墾して米作を試みました。しかし、タロ畑が姿を消したのと同じように、度重なる津波の被害で水田と集落は打ち棄てられました。その後、第二次世界大戦中に米軍が上陸演習を行ったことはありますが、このように厳しい自然環境のせいで、今日にいたるまで開発の手を免れてきました。かつてここには多くの日系移民が集められ、ポロル渓谷からノースコハラまで30km近くに及ぶ用水路作りが行われたりもしました。

 そのような歴史を思い返しながらポロル渓谷のトレイルを歩いてみましょう。車を道路脇に停めたら道の突き当たりまで行きます。付近の民家にはシェル・ジンジャーやコアリアヴァがそこかしこに見られます。晴れた日にはイオ(ハワイアン・ホーク)が海上を飛ぶのを観察できるかもしれません。トレイルは突き当たりの少し下にあるガイド標識のところから始まります。雨が多い土地のせいで道はたいてい滑りやすいので下りはとくに注意しましょう。

ホワイト・シュリンプ・プラント

 歩きはじめるとすぐにホワイト・シュリンプ・プラントの群落が現れます。間もなくトレイルは岩が露出しはじめ、足元に気を奪われているうちにいつしかハウの森となります。ハウやタコノキ、モクマオウなどの森を歩きますが、ときおり眼下に海岸が見え隠れします。トレイル沿いにはノニ、ラッツ・テイル、シャンプージンジャー、パラパライ、アジアンタム、ティー、ハープウ、エアープラントなど、実に多くの植物を見かけます。道は比較的単調ですが、花の観察をしているうちに海岸へと降り立つでしょう。

 海岸からは展望台で見下ろした断崖が立ち上がり、その足元に荒い波が打ち寄せては砕け散るのが見えます。また、黒い砂一色に見えたのは、実は波に洗われて丸くなった溶岩と、同じようにしてできた珊瑚の小石が磯のように広がっているのだということがわかります。

 背後には打って変わって鏡のように静まりかえった沼地があります。沼に向かって右端にも渓谷の奥へと続くトレイルがあり、奥にはカポロアの滝があります。一般向けではないので経験者以外にはお勧めできませんが、現地の会社によってツアーが主催されています。また、海岸を突っ切ると、再び登りの踏み跡があります。これはアヴィニ・トレイルですが、こちらも整備はされていないので探索は避けたほうがよいでしょう。

ビーチの反対側の風景

 午後は天候が悪くなることが多いのでトレッキングは午前に行うのがよいでしょう。トレイルは最近拡幅されずいぶん歩きやすくなりましたが、それでも雨が降るとぬかるみ、すべって転ぶ人がいます。足元には十分気をつけましょう。海は潮の引きが強いので泳ぐのは勧められません。また、沼地へは子どもだけで行かせないようにしましょう。

◆アプローチ

険しい海岸線

コナからは19号線を北上し、コハラ半島の西側海岸線沿いに170号を北上します。カパアウとハラヴァの町を通過して突きあたりまで行くとそこがポロル渓谷展望台です。道の突き当たりにポロル渓谷トレイルの標識があります。下り約20分、上り約25分。

 次回はマウイ島のキパフルについてお話しする予定です。

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 ダイヤモンドヘッドに登ろう (1) 2002年8月1日
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