ポキとは海産物を用いた「漬け」のようなものです。マグロやタコなどの魚貝類を一口大に切り、塩やしょう油などの調味料に漬けこんだり、和えたりします。ハワイでもっともポピュラーな食品のひとつと言えるでしょう。なかでもアヒ(マグロ)のポキはレストランのメニューやスーパーの食材としてもおなじみです。
ポキは「poke」と書き、本来は「ポケ」と発音します。これを英語式に発音したものが、いつの間にか市民権を得てポキとなりました。いずれの発音でも良いのですが、今日のポキをハワイの食文化にまで広げたのは日系人なので(*1)、それほど原語にこだわることはないのかもしれません。もっとも、魚を主食としていたハワイの人々も、魚をぶつ切りにして塩を振って食べたと言われているので、ハワイの「poke」の源流は伝統食文化に源を発していると言うこともできます。(*2) ちなみに「poke」というハワイ語は、「切る」、「スライスする」、「みじん切りにする」という動詞ですが、魚や木材などを小さくカットしたものに対しても用いられました。また、体にできた「おでき」のようなものも「poke」と呼ばれました。
*1 1970年代に一般に広がったと言われています。
*2 先住のハワイアンは「ポケ」と発音します。
ポキは基本的には魚の切り身そのものを指しますが、「調理」されて出されるポキにはさまざまなものがミックスされています。もっともポピュラーなのは、アヒにタマネギ、海藻、ネギなどを、地元の塩で和えたものです。このほかに、ククイ・オイル、ごま油、唐辛子、しょう油、オイスターソースなどで味付けしたものもよくみかけます。ポキは日本の漬けだけでなく、ペルーの代表的料理のひとつであるセビーチェにもよく似ています。
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アヒ・ワサビ・ポキ |
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それ以外にポキに用いられる素材としては、ア・ウ(メカジキ)、アヒ(マグロ)、オパカパカ(ヒメダイ)、オナガ、アク(カツオ)、ヘ・エ(タコ)、ウラ(ロブスター)、パパ・イ(カニ)、オピヒ(カサ貝)などがあります。もっとも多く見られる和え物、あるいは付け合わせはオゴ(マナウエア)と呼ばれる海藻(リム)です。地場産の塩とともに、ハワイ独特の味と香りを引き出す役割を果たします。
できあいのポキは、魚を扱う店であればたいてい置いています。ホノルルなどの都会はもちろん、ハワイ島のヒロやモロカイ島のマウナロアに至るまで、ポキはハワイに暮らす人々にとってなくてはならぬ食べ物となっています。
また、ハワイ島のハプナ・ビーチでは日本でもよく知られているサム・チョイ主催のポキ作りコンテストがあり、合衆国本土やカナダからも参加者を集め、さまざまな創作ポキが競われます。ポキは基本的には海産物という素材があれば、簡単にできる料理ですから、魚と調味料の種類だけポキの数があると言ってもよいでしょう。できあいの種類の多さで言うならハワイ島のヒロにある魚屋の「スイサン」かもしれません。ここにはいつも30種類以上のポキがあり、地元の客でにぎわっています。
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イイダコ・ポキ |
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イイガイ・キムチ・ポキ |
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シーコンボ(海の幸)ポキ |
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辛口カニ・ポキ |
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タコ・ワサビ・ポキ |
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テリヤキ・カラマリ・ポキ |
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トップページの画像は辛口オイスターソース仕立てのアヒ・ポキです。
次回はハワイ島の温泉についてお話しする予定です。 |