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葉の根元に果実をつけたタコノキ |
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幹は持ち上がった気根に支えられている |
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タコノキはハワイの海岸付近の乾燥した土壌でよく見かける植物ですが、ハワイに固有というわけではなく、東は南アジアや小笠原、沖縄、南はオーストラリア北部まで広く分布します。タヒチやサモアではファラ、クック諸島ではアラと言うように名前もよく似ており、島から島へと人の手によって伝達した可能性もあります。ハワイには自生していたという説もありますがはっきりとしたことはわかっていません。
タコノキはタコノキ科(Pandanaceae)の植物で、アフリカやアジアの熱帯地方とポリネシアに約3属700種が分布します。タコノキの学名はPandanus tectorius、ハワイ名をハラ(Hala)、英名をスクリューパイン(Screw Pine)、和名をシマタコノキあるいはアダン、リントウなどと言います。樹高は3mから9m、花は5〜6cmのものがまとまって咲きます。
和名の由来は幹の基部から出た気根(ulehala)がタコの足のように広がっているため。枝や葉(lau)の両端、裏面の主脈(kuakua)、気根にはトゲ(kōkala)があります。らせん状に広げた葉は、中央部付近でふたつに折れた状態になります。パイナップルに似た三色の集合果(āhui hala)が特徴です。ひとつの房に50以上の果実をつけます。タコノキは雌雄異株で、雄の花序(集合花)は甘い香りを漂わせます。タコノキは一般に幹の下部から気根が伸びますが、ときに気根が発達し、根の上端から直接枝を出すこともあります。
多目的な木
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葉は中ほどで折れ曲がる |
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雌の花は枝の先にパイナップルに似た集合果をつくります。果実は熟すと、緑色から黄色、オレンジ色、赤色へと変わりますが、末端から順に変色するので三色や四色の果実を観ることもできます。果実の基部は甘い果汁がありますが、飢饉のとき以外は食用にしませんでした。果実はココナッツのように海水に浮き、長く水に浸かっても発芽するので、海流に乗って太平洋の熱帯・亜熱帯地域に広がったとされます。
葉(ラウ)と果実は多くの用途に用いられました。編んで敷物にしたり、絵を描くときの筆にしたほか、種子の胚乳がデンプン質なので飢饉のときは食用となりました。根と花は薬として用いられました。根には多量のビタミンBが含まれるため、これを粉末にしたものとサトウキビを混ぜ合わせた液体を、出産などで体力を消耗した妊産婦に呑ませたほか、胸の痛み止めとしても用いました。花の果汁には下剤の効果があります。ただし、赤ん坊に飲ませるときは、母親が口移しで飲ませました。雄株の花からは香水がつくられ、材は建材として用いられました。
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赤く熟して落ちた果実 |
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タコノキは今日では色づいた果実を使ったレイとしても人気がありますが、この木には「失敗する」「死ぬ」「不運を呼ぶ」という意味があるため、先住のハワイ人はレイにしたり、身につける道具としては用いませんでした。同じ理由で歌詞としても敬遠されました。
ラウハラ
細長い葉(80〜180cm)は強靱で耐久性と柔軟性に富むため、編み細工に使用しました。ハワイでもフィリピンから持ちこまれたラウハラ(ハラの葉)の編み細工文化が浸透しています。葉は横方向に強靱で、竹細工に匹敵する丈夫さがあります。長さ1mから1.5mほどの葉の両端にはトゲがあるのでこれを剥ぎ、水に1日以上浸けて柔軟性を出してから、陰干しします。これを適度な幅に縦裂きしてから利用します。南アジアでは緑の葉が使われますが、ハワイでは落葉した褐色の葉を使います。ラウハラは弁当箱やバッグ、帽子、コースターなど、さまざまなものに形を変えてハワイ土産として定着しました。
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葉を使って作られる編み細工 |
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タコノキに関するハワイの伝説に次のようなものがあります。火の女神ペレはカヌーに乗ってハワイ諸島にやって来ましたが、上陸しようとしたときカヌーがタコノキの足にひっかかったため、彼女は激怒してタコノキを引き裂いて投げました。タコノキは散り散りになってハワイの島々に飛び去り、落ちた場所で次々と繁殖したということです。
表紙の画像は熟す前のタコノキの実と葉です。
次回はカロ(タロイモ)についてお話しする予定です。 |