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キラウエア・イキ・トレイル
近藤純夫

眼下に広がるクレーター。白い筋はトレイル

 ハワイ火山国立公園は広大なキラウエア・カルデラと噴煙を上げるハレマウマウ・クレーターがよく知られています。いずれもすばらしい景観ですが、実際に歩く場所としては隣接するキラウエア・イキをお勧めします。「イキ」とはハワイ語で「小さい」という意味。キラウエア・カルデラの縮小版といったところでしょうか。キラウエア・イキにはクレーターの底へ降りて歩くトレイルが作られていて、噴出する火山ガスを間近で観察することもできます。ここは火山ウォッチの代表的トレイルと言えるでしょう。地球の内部にあるマグマが地表に噴出してつくり出したダイナミックな景観を自分の目でたしかめてください。

 キラウエア・イキは1823年に最初の噴火を起こしたあと、1868年には小噴火とともにマグニチュード7.5という巨大地震を起こしました。1959年には無数の地震のあとに大噴火を起こし、空中500メートルもの高さに熔岩を吹き上げました。このときもマグニチュード7を超える地震を起こし、周辺の道路を破壊しています。キラウエア・カルデラの北東にあるアースクエイク・トレイルを歩くと、そのときの亀裂を見ることができます。

噴火のときに舞い上がった噴石が堆積してできた丘

 当時の噴火は小さな方のクレーターわきで起き、流れ出した溶岩が手前の大きなクレーターに流れ込んで溶岩湖を出現させました。今日に見られる真っ平らな大地はこのときできあがったものです。キラウエア・イキの傍らにあるプウ・プアイもこのときの噴火活動で出現した噴石丘です。どれほど多量の噴石が噴き上げられ、それが落下して積もったかは、この噴石丘の南に付けられたデバステーション・トレイルを歩けば確認できます。また、クレーターの南に口を開けるサーストン・ラバ・チューブもこのときに上昇した溶岩によって作られたものです。

 トレイルはキラウエア・カルデラの周遊道路脇にあり、展望台にもなっています。歩きはじめる前にクレーターの全貌を見ておきましょう。左手奥にプウ・プアイがあり、眼下には手前と奥にふたつのクレーターが見えます。さらに遠方にはマウナ・ロアの雄大な山並みが広がっていて、昨年まではその手前にあるハレマウマウから白い噴煙が立ちのぼっているのが見えました。


火山を代表するオヒア・レフアの花

 上からクレーターを覗くと、表面にしわのようなものが見えます。これは熱したミルクが冷えるときにできる薄皮のようなものです。下のマグマの動きとともに噴出した溶岩が溜まって池を作りますが、活動が収まるとともにゆっくり冷え固まります。

 トレイルはクレーターを正面に見て右側の森林に続く道を辿ります。左手にクレーターを見ながら歩きはじめます。森にはアマウやハプウ、あるいはクプクプといったシダ類や、カヒリ・ジンジャーなどが点在しています。運がよければ、イオやイイヴィ、アパパネなどの野鳥を観察することもできるでしょう。

 30分ほど歩くとクレーター・リム・トレイルとの分岐が右から現れます。ここは左に進みましょう。その後もいくつか現れる分岐はすべて左を選べばOKです。やがて眼下に鬱蒼としたオヒアの森と、その森を押し倒すように点在する巨大な溶岩ブロックが集まる場所に出ます。ここは野鳥の飛び交うところでもあるので、鳥好きの人は双眼鏡を忘れないように。

いまも地底から火山ガスが上がる

 ここから手すりのついた坂道をジグザグに降りていくと、間もなくゴツゴツとした溶岩(アア溶岩)の広がる場所に出ます。ここは出発時に上から見下ろしたクレーターの一番奥に位置したところです。ここからクレーターの中央を、対岸壁に向かってまっすぐに戻ります。

 狭いクレーターから広いクレーターに出ると、地面はブルドーザーで地均しをしたように滑らかな溶岩(パホエホエ溶岩)となります。やがて前方の左右にある小さな岩山から火山ガスが出ているのが見えてきます。岩山を登り、地底から立ちのぼるエネルギーを感じてみましょう。地表ではとっくに冷え固まった溶岩ですが、クレーターの地下1kmほどのところにはまだマグマが固まらずに残っていて、それが地下水などと接触して水蒸気の多い火山ガスを発生させているのです。クレーター内にはマグマ活動を観察するための装置がいくつか設置されていて、そこからもさかんに白いガスが発生しているのを確認できます。


火の女神ペレの好物だとされるオヘロの甘い実

 対岸に近づくと、周辺には赤い実をつけたオヘロや、オヒアの赤い花(オヒアレフア)を見ることができます。アマウやクプクプなど、日差しを浴びて育つシダの姿も確認できるはずです。対岸に到着したなら、山道をジグザグにたどりながら15分ほどクレーターを登り返します。少し汗をかいたころでサーストン・ラバ・チューブの駐車場に出ます。そこから駐車場の先をクレーターに添って少し北へ戻ると、出発点に戻ります。ここまで所要時間はおおよそ2時間半ほどというところでしょうか。

アプローチ

 ヒロからは11号線を南下し、ケアアウの交差点を右折します。国立公園の大看板を過ぎて間もなくのT字路を左折して国立公園に入ります。カイルアコナからは同じく11号を南下し、サウスポイントを回りこんで北上します。公園直前の左手にマウナロア・ロードの標識が現れると間もなく右手に公園への引き込み道路が現れます。
ゲートで入場料金を支払ったら、ビジターセンターの手前にあるクレーター・リム・ドライブを左折して時計回りに進みます。10分程度で右手にキラウエア・イキの展望台が現れます。

日差しの下で育つアマウという名のシダ

 トップページはキラウエア・イキの底に広がるクレーターです。次回はハワイの人々の敷物であり着衣でもあったカパ(タパ)についてお話しする予定です。

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