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標高2000mに近いハワイ島サドル・ロードの峠から見た雲海 |
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空はハワイ語でラニ、雲はアオ(オープア)、虹はアーヌエヌエ(アオアクア)、夕焼けはナポオと呼ばれます。これらのハワイ語はいずれも希望や美しい自然現象、理想世界などを表します。今回はハワイの空をテーマに、虹や雲海、夜空の星についてお話しします。
ハワイの空と言えば虹が思い浮かびます。ハワイ州は虹の州という別称があるほど虹の美しい場所として知られています。多くの虹を観察できても美しくなければそれほど話題にはなりませんし、美しくても滅多に出ないのであれば、州の別称になるほどの存在ではないと言えるでしょう。ハワイの虹がなぜはっきりとした色合いをしていて美しいかについては、「風と雨と虹の話(2)」*をお読みください。ここではなぜハワイに虹が多いかについてをお話しします。
*バックナンバー「風と雨と虹の話(2)」
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カウアイ島ワイルアの海岸から見た入道雲 |
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虹は雨が降らない土地では発生しません。もちろん日本でも雨は日常的なお付き合いですよね。ところがハワイほど虹を見ることはありません。理由のひとつは雨の多さにあります。ハワイ諸島は太平洋の孤島で周囲数千キロメートルに陸地はありません。ハワイ諸島の上空には貿易風の通り道があります。貿易風は1年を通じ、ほぼ北東方面から南西に向けて吹き抜けます。このとき、洋上で拾った湿った空気はハワイ諸島の山々にあたると雨を降らせます。多いところでは年間1万ミリを超えるほどです。その結果、ハワイ諸島は雨の多い地域を生み出しています。
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オアフ島ホノルルの町に架かったダブル・レインボー |
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理由のその2は、天候回復の速度にあります。雨が止んでも厚い雲が低く垂れこめている状態では陽射しは地上に注がれません。一日の天候が目まぐるしく変化することは日本ではまれですが、ハワイでは雨の後にいつまでも雲が垂れこめている方がまれです。降雨のあとすぐに晴れるということは、水分が残っている状態の大気中に陽射しが注ぐことを意味します。この結果、水滴に光が当たり、屈折して虹が発生するのです。ハワイは雨が降ってもすぐに陽が注ぐため、虹が発生しやすいということです。
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ハワイ島ワイメアの町に現れた虹 |
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では雲はできてもすぐ散ってしまうのかというと決してそうではありません。貿易風の風上側にあたる諸島の北東側の山麓にはたいてい厚い雲の海ができています。ハワイ島ではこの雲海は、島の東にある最大の町ヒロの明かりを遮り、夜空を暗くしてマウナ・ケア山頂に建設された天文台群の観測に際して覆いの役割を果たしています。
ハワイの雲は輪郭がはっきりとしていて強いイメージを与えるものが多いようです。その理由は空気が澄んでいて大気中に浮かぶ塵(ちり)の乱反射が少ないため、シャープに見えることが一因です。また、ハワイ諸島の西南部では山で雨を降らせたあとの乾いた風が吹き抜けるため、晴天率が高く、抜けるような青空が出現しやすいという特徴もあります。このように空気の透明性が高いと、空も雲もはっきりとした色合いになります。このことはサンライズやサンセットの美しさにも寄与しています。
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ハワイ島マウナ・ケア山頂から見た雲海とマウイ島ハレアカラ |
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ハワイ諸島は星の観測においても地球上で恵まれたロケーションにあります。北緯20度ほどに位置する島々は北半球の星はもちろん、南半球の星の大半を観察することができます。その割合は星空全体のおよそ80%に及び、北極星と南十字星の両方を観察するこができます。恵まれた気象条件と緯度、光害の少なさ、山頂アクセスの容易さなど、諸条件が揃ったマウナ・ケア山頂は、そのため、世界各国の天文台が林立するきわめて恵まれたスポットなのです。
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マウナ・ケアでの日没直後の風景
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ただし、山頂は先住ハワイ人の聖地でもあります。彼らが自然の目印だけで長距離航海を行うとき、星々は重要なナビゲーターでした。なかでもホークーパア(北極星)やマカリイ(すばる)は長距離航海でのナビゲーションにおける基点ともいうべき重要な存在でしたから、星々にちなむ神話も数多く創られました。
今日、地球全体を覆う温暖化の影響はハワイにも及んでいます。冬場は貿易風の影響力が弱まるため、はっきりとしない天気が続き、ときに長雨となることもあります。その現象が少しずつ長く現れるようになっているのではないかと思えるここ数年のハワイの気候ですが、基本的に美しい空は健在です。ハワイに行かれたならぜひ空にも目を向けてください。
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モロカイ島カウナカカイ近郊の星空 |
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カウナカカイの海岸から見た星空。光跡は旅客機。
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トップページの写真はモロカイ島パポーハク・ビーチのサンセットです。次回はマウイ島のマウイ・ヌイ植物園についてお話しします。
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