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マウイ・ヌイ植物園の入場口 |
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ハワイ州にはどの島にもハワイ固有の植物やポリネシア人が持ちこんだ伝統植物(カヌープラント)を展示する施設が複数あります。マウイ島では今回紹介するマウイ・ヌイ植物園(MNBG)がよく知られています。ここはハワイ州で最初に固有植物中心の展示を行なった植物園でもあります。
MNBGは次の3つの原則の上に成り立っています。それは、オイアイオ(ʻOiaʻiʻo)誠実で事実に基づくこと、マーラマ(mālama)管理と保護、そしてホオナアウアオ(Hoʻonaʻauao)復興、です。ハワイ文化にとってカヌーの材料となったコアなどの固有植物や、主食となったカロ(タロイモ)などの伝統植物は暮らしに大きな役割を果たしてきました。MNBGではこれらの植物を展示するだけでなく、かつての利用方法を学んだり、再現するための活動も行っています。この活動をより強力なものにするため、MNBGでがフラ・スクールや小中高校、一般市民、非営利団体などと組んでさまざまなプログラムを日常的に実施しているほか、講義や講演、フィールド・ガイドなども行なっています。
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植物の解説プレート |
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MNBGの活動はそれだけではありません。マウイ郡役所や州の公園管理部門などとともに、中長期的な視点で水源の管理や確保など、将来の計画についてもしっかりと関わっています。
MNBGは原則的にボランティアが運営する施設です。どこの植物園もそうですが、無料だったり低い入園料で運営しているところは人手が足らず、ボランティアの協力が不可欠となります。ここはボランティアを有効に活用する珍しい植物園と言えるでしょう。
MNBGは島の中心地であるカフルイの街外れにあり、訪れるには便利な場所です。ここでは植物の展示だけでなく、植物の知識を伝える講座や、ラウハラのような植物を使ったクラフトや染色、カパの作成、ココヤシの繊維を使ったロープ作りなど、さまざまな伝統文化講座を開催しています。また、定期的にハワイの固有植物を中心とした即売会も行っています。
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イリアヒアロエ |
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園内には絶滅を危惧されているハワイ固有の植物が数多く展示されています。どれも重要なものですが、そのなかからいくつかをご紹介しましょう。
右の写真は、ハワイに4種だけあるビャクダン(固有種)のひとつで、ハワイ名をイリアヒアロエと言います。ビャクダンはカホオラヴェ島を除くハワイ諸島の海岸から標高540mの間に分布しています。かつてハワイの人々は香りのよいこの木から香料を取り出し、カパと呼ばれる不織布の香りづけにしました。カメハメハ大王の時代に大量に伐採され、中国やインドに輸出されています。ちなみにハワイ諸島は中国語で「栴島」と言いますが、栴とは栴檀のことで、日本語では白檀(ビャクダン)を指します。かつては豊富な資源がありましたが、一時は絶滅の危機に陥るほど激減してしまいました。現在は少しずつ復活しています。
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アーキア |
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左の写真のアーキアもハワイ固有の植物です。アーキアの実には毒があるので、人々はこの実を搾って川に入れて魚を獲りました。樹皮からは繊維を、樹皮や根、葉からは鎮静剤を作るなど、深く暮らしに関わりました。
下左の写真のアルラは、カウアイ島とニイハウ島が原産地です。とても個体数が少なく、絶滅危惧種に指定されています。そのため、ハワイの主要植物園ではアルラの繁殖に力を入れています。キャベツに似た形から「岩に生えたキャベツ」という英名を持つこの植物の葉は、キャベツと同じように生で食べられました。また、塩もみした葉は切り傷の治療に用いられました。
下右の写真はキク科のコオコオラウです。この花も絶滅の危機にありますが、関係者の努力で徐々に分布域を拡大しています。葉を煎じたものは食欲増進の目的で飲まれました。
◆所在地
Maui Nui Botanical Garden
150 Kanaloa Avenue Kahului,HI.96733
電話 808-249-2798
開園時間 8:00-16:00(月曜〜土曜) 日曜休園 入園無料
http://www.mnbg.org/index.html
トップページの写真は実をつけたイリアヒアロエです。次回はモロカイ島のカラウパパの自然と歴史についてお話しする予定です。
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